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21-4 ミスター離脱

 ―――ハチの死亡が確認された、そのすぐ後だった。

 轟音と共に、飛空船に雷のようなものが落ちた。


 ドオォォン! と爆発音が響き、衝撃が船内の人間達を襲う。停泊しているはずの船体が、大きく揺れた。


 「な…! 何だ!?」


 船内の人間達やスタッフ達が驚いている。スミスは外部モニターを確認するが、何も映っていない。


 「…まだ、あの子…、もつこさんが玉座に置かれているうちは、動力と連動して飛空船の耐久度は高いままですが…」


 だが、立て続けに攻撃されては、それも危うくなる。思わずスミスは、ミスターに連絡を入れる。


 ((ミスター! 何者かが飛空船に…! 申し訳ありませんが、こちらに戻ることは出来ませんか!?))


 スミスからの精神感応(テレパシー)を受け、ミスターは《(ヘー)》達に、


 ((済まない、私は一度飛空船に戻る。No.56、こちらの操縦を頼めるか?))


 No.56は頷き、李と操縦を代わり姿を消す。

 ミスターが瞬間移動で姿を消すと同時に、No.56が操縦席に現れた。


 「!? え!? ど、どういうこと!?」


 風月達が驚いていると、No.56が、


 「驚くなよ。今、飛空船が攻撃されてる。《(アレフ)》…、ミスターはあっちを守りに行ったんだ」


 そう聞いて二人共驚くが、月岡は驚きつつも安堵した。


 「そうか…。あの人が行くんなら、飛空船に残った人達はきっと大丈夫だな」


 「で、でも! こっちは、大丈夫なんですか!?」


 風月が言うと、No.56は操縦をしながら、


 「さあな…。俺にもどうなるか分かんねぇけど、やるしかねぇだろ」


 憮然とした態度のNo.56だが、正直に話してくれているのだろう。

 風月も月岡も、黙ってしまった。ぬいぐるみ達は風月達の懐に大人しく収まっている。


 「………お前ら、日本人だよな」


 ふいにNo.56に声をかけられた。既に日本語を話しているのだが、一応確認された。

 月岡が、ああ、と返事をすると、No.56は、


 「…お前らは知らねぇかもしれねぇが、日本にはウチの組織が迷惑かけちまったんだよな。お前らに言うのも変だけど、…何つうか、済まなかったな」


 え? と月岡達が困惑している。No.56は続けて、


 「K(ホシェフ)I(イルグン)って組織は、…まぁ、非合法なことばかりやってるんだが、それでも今飛空船に乗ってる奴らは、それなりに一本筋が通ってる。でもなぁ…」


 少し言いにくい事なのか、No.56が口ごもる。月岡達が、? と思っていると、


 「…組織の系列も色々あるんだが、その中に『カナロア』ってのがあってな。そこは主に、人身売買をやってんだ」


 「!? そ、それって、犯罪じゃ…」


 風月が言うが、No.56は、


 「日本(そっち)の法律は知らねぇがな、世の中にゃ色んな事情があるんだよ。親元から離した方が良い子供だって、大勢いるんだ」


 そう言いながら、No.56は表情を曇らせ、


 「…ただ、日本人の子供を買って喜ぶ客もいてな。俺ら上の者に内緒で斡旋してた馬鹿共もいたんだ」


 そう聞いて、風月は、あれ? と思い、


 「…そういえば一時、石塚さん達が人さらいかどうのって巡回してましたよね? あれがそうなのかな…」


 思い出したようにそう言う。月岡も頷くが、No.56は更に、


 「メンバーは僅かに残ってたみたいだが、確かリーダーのアスマって奴は変死しちまったんだよな」


 「アスマ?」


 月岡が訊くと、No.56は、


 「ああ、確か…、ナカジマアスマ、って言ったかな。かなりブッ飛んだ危ない奴だったらしいが、心臓が破裂したとか何とか…」


 風月と月岡は、どこかで聞いたような気もするが、管轄外なので詳しくは分からなかった。

 ふいに月岡は、No.56に尋ねてみる。


 「非合法、って言いましたね。他に一体、どんなことを…」


 「聞かねぇ方が良いと思うぞ」


 No.56は、話す気はないらしい。

 K(ホシェフ)I(イルグン)という組織は元々、主に『暗殺』を生業としていた。

 ただ、依頼されたからすぐに殺す、ということはしない。

 実行するに当たって、依頼主と暗殺する相手の下調べ等をし、殺すに値する場合に行う。

 そうしていくうちに、諜報活動や潜入捜査等、スパイ活動へと依頼の幅を拡げていった。


 現在は、諜報活動等の情報を扱うことに、人手の大半を割いている。人身売買も、人員確保の意味で必要だった。


 …だが月岡は以前から、久吾に対して疑問に思っていることがある。


 「…教えて欲しいことがあるんです」


 No.56が、何だ? と訊くと、月岡は、


 「………人を、殺したりしてるんですか?」


 「…何でそう思う?」


 この質問に、風月は月岡を見ながら息を呑む。

 月岡は、何となくであるが、久吾達複製(コピー)の面々の一部に共通する、醸し出す雰囲気、というものを感じていた。

 それは、言葉にするのは難しいのだが、自分達が持つ倫理観とは違う、彼等の道義心に則った上での、人間への措置だ。


 「………何ていうか、俺達は法に則って、人の罪に向き合う仕事をしています。…けど、本音を言えば、それじゃ割り切れないことも多々ある…。あなた達はそういう、人が割り切れない部分を陰で埋めているような気がして…。それは、あなた達が《最後の番号(ラストナンバー)》と呼ぶあの人も、もしかすると…」 


 月岡が訊くと、No.56はどこまで話すべきか、と迷いながらも、


 「…俺達は人間と違うからな。人の法じゃ裁けねぇぞ」


 「……………」


 「ただ、言い訳かも知れねぇが、俺達にも助けてやりたい人間ってのはいる。そのために人の法に沿わないこともする。…多分《最後の番号(ラストナンバー)》も、そうなんじゃねぇかな」


 聞いて月岡は考える。

 …が、そうしているうちに、目視出来る場所に黒いキューブボックスが見えた。傍らに人がいる。

 思わず《(ヘー)》が顔をしかめた。


 (………《(テット)》!)

月岡がもっちーを懐に忍ばせる絵面は中々だと思う。

誰もツッコんでないけど。

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