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幕間 目覚めの茶の間

さすがにアレで終わるのは忍びないので。

一挙二話投稿。

 「―――あーあ、もつこの貝がらベッド、置いてきちゃったぁ…」


 一瞬、桃子の姿で上がってきた魂は、賽の河原に到着すると、今までのぬいぐるみの姿に変わってしまった。

 すると、すぐに、ひょいっ、と女性の鬼が抱っこする。椿鬼(つばき)だ。


 もつこは椿鬼に抱っこされながら、ちょっぴりしょげて賽の河原にいた。


 「ウフフ、しょうがないわよぉ。それにしても、頑張ったわねぇ」


 椿鬼が、いい子いい子、ともつこを撫でながら歩いている。


 ―――しばらく進むと、河原にこたつとテレビが見えた。


 「…うぇ!? ココに来たのか!?」


 「当たり前だろ。何を今さら…」


 拓斗とシンが、もつこを見てそう言った。

 秋恵がこたつから出て来て、「あらあら」と言いながら、椿鬼からもつこを受け取る。


 「あ! 秋恵ママだ! ………あ! 桃子もいるー!」


 もつこがびっくりしている。秋恵は「そうよ」と言いながら、もつこを桃子のそばに寝かせてこたつ布団を掛ける。


 「わーい! 桃子だぁ!」


 もつこは桃子に、ぺたん、とくっつくと、そのまま寝てしまった。


 …すると、今までずっと眠っていた桃子が、


 「……………、? あれぇ?」


 目を覚まし、起き上がった。


 「! …も、桃ちゃん!?」


 「…? 秋恵ママ?」


 寝ぼけている様子の桃子を、感極まった秋恵がもつこごと抱きしめる。


 「桃ちゃん…、桃ちゃん! 良かった!」


 泣きながら自分を抱きしめる秋恵に、桃子は不思議そうに、


 「…あ、秋恵ママ! …桃子、今、桃子なの? もつこじゃなくて?」


 秋恵は桃子をゆっくりと離しながら、涙をぬぐって、


 「…そうよ、元に戻ったのね。…お帰り、って言うのも変だけど」


 そう言われ、桃子は自分ともつこを不思議そうに見ながら、


 「…あのね、桃子、ずーっと夢見てたのかなぁ? もっちーが、もつこになって…、貝がらのベッドもあって、めぇにぃにと、もっちーにぃにと、みー君と、ふーちゃんと…、あと、久吾おじさんもいて…」


 うんうん、と桃子の話を聞く茶の間の面々だったが、ふいにシンが、


 「夢じゃねぇぞ。お前達の様子はずっと、ここのテレビで見ていたんだ」


 桃子はびっくりしてテレビを見る。


 「…あ! めぇにぃにと、もっちーにぃにがいる! 彩葉ねぇねと、羽亜人にぃにも…。…どーしよう、みんな泣いてる…」


 すると、みかんをつまんでいた拓斗が、


 「お前がこっちに来ちまったからな。しょうがねぇよ」


 そう言われ、桃子は目の前にいる少年と赤ん坊を不思議そうに見ながら、


 「………赤ちゃんが、しゃべってる」


 「! そこ!?」


 シンにツッコまれた。ひゃあ! と驚く桃子と不服そうなシンを見ながら、拓斗が笑っている。


 「アハハハ! やっぱ驚くよな! アハハ!」


 「………お兄さん、だれ?」


 今度は拓斗が不審がられた。拓斗が、ブッ! とみかんを吹き出すと、シンが顔をしかめて、


 「きたねぇなぁ…、おい、桃子。コイツはあそこにいる、もっちーの半分だ」


 「おいコラ! あっちが主体みたいに()ーな!」


 拓斗が文句を言うが、桃子は首をかしげて、


 「? 半分?」


 そう言っていると、椿鬼とは別の女性の鬼がこちらにやって来る。

 日に焼けた健康そうな肌に、キリッとした表情のその鬼を見て、椿鬼が、


 「あらぁ、皐月鬼(さつき)ちゃん、どぉしたのぉ?」


 「ああ、そこの川野桃子…、魂が揃ったんで成仏の条件が達成された。門をくぐる許可は降りているが、どうするか聞きに来たんだ」


 あらそう、という椿鬼だったが、秋恵が驚いて、


 「ええ? もう?」


 オロオロとしているが、桃子は、


 「…じょうぶつ?」


 そう皐月鬼に尋ねる。皐月鬼は、ああ、と言いながら、


 「まぁ、そんなに急ぐ必要もないがな。閻魔様とヤフェテ様からは、この茶の間にいる者達には特別な配慮をするよう通達が為されている。成仏のタイミングも、生まれ変わりの場所や親族も選べるそうだ」


 そう聞いて、茶の間の面々が、おお、と驚く。桃子はもつこを抱きしめながら、


 「…あ、あの、…あのテレビで、みんなの様子、見れるのよね?」


 すると椿鬼が、


 「ええ、そうよぉ。気になるの?」


 聞いて桃子は、キッ、と表情をひきしめ、


 「…桃子、ふーちゃん達が助かるまで、ちゃんとここで見ていたい! 秋恵ママ達と一緒に、見てていい?」


 桃子のお願いに、皐月鬼も椿鬼もにっこりと笑って、


 「もちろんだ。閻魔様達には、そのように伝えておくよ」


 皐月鬼がそう言って、閻魔達のいる庁舎に戻って行った。椿鬼は、ウフフ、と笑って、


 「それじゃ、桃子ちゃん用の座椅子、持ってくるわね。子供用の方が良いかしら? 大人用でも大丈夫?」


 秋恵とも相談し、大人用の座椅子に高さのある座布団を乗せてもらう。


 「…こたつ、あったかい」


 もつこを抱っこしながら、桃子が嬉しそうにこたつで温まる。


 秋恵は、そんな様子の桃子を笑顔で見守っていた。

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