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18-4 複製狩り

 『…人間共と言葉を交わすつもりはない。手短に言う』


 映像から流れる《(ベート)》の言葉は、恐らくヘブライ語…。だが映像を通して、それぞれの放送圏の言葉に自動翻訳されているようだ。これは《(テット)》の仕事だろうか。

 《(ベート)》が続ける。


 『貴様等の中に、我等と同じ顔の者がいるはずだ。その者達を我等の前に差し出せ。それが出来た者を『方舟』に引き入れてやる』


 ―――!?

 名奈家にいる複製達全員が驚く。画面の中で《(ベート)》は表情を変えず、


 『場所は、…そうだな』


 瞬間、画面が乱れ、次に映ったのは何処か遥か上空―――、恐らく《(テット)》が機材を操っているようで、真下に向けられたレンズが映し出したのは、


 「…ありゃあ、ホワイトハウスか!?」


 ハチが叫ぶ。すると《(ベート)》が、《(ザイン)》を取り込んで得た能力(ちから)を込め、目標に向けて放つ。


 ―――一瞬だった。

 画面が白く光ったと思ったら、ホワイトハウスがあった場所が、跡形も無くなっていた。


 『…ふむ。場所は作ったぞ。三日待ってやろう。日没までに連れてこい』


 それだけ言うと、画面が消えた。


   ◇   ◇   ◇


 「まさか…」


 画面が切り替わる。時間にして1分弱。その間、この世の全ての映像受信媒体が乗っ取られるという、前代未聞の出来事が起こった。


 ―――にわかに画面の向こう側がざわついた。

 緊急放送が流れる。


 『た、たった今入ったニュースです! 米国の大統領官邸・ホワイトハウスが、実際に消滅していると―――』


 キャスター達が騒いでいる。情報の拡散は一瞬だった。


 「…あーあ、もう世界中が大騒ぎだな。どうやら《(ベート)》は、お前らが南極に到着するまでに、俺達のあぶり出しをしたいらしい」


 No.56が言う。ハチが、


 「あぶり出し、って…、あの野郎、完全に俺達を人間の敵に仕立て上げるつもりかよ…。…いや、そんなこと言ってる場合じゃねーな!」


 そう言いながら、慌てて何やらスマホを操作している。それから久吾に、


 「おい、久吾! 今すぐお前が確認出来る仲間を瞬間移動でここに連れて来い! 一緒にいる人間達もだ!」


 え? と驚いている久吾に、ミスターが、


 「久吾。アーサーとシモンズ家の人々…、それからフランスのピエール達を頼む。私は別の仲間達を迎えに行く」


 そう言うと、フッ、と消えてしまった。ハチは誰かと精神感応(テレパシー)で話しながら転移門(ゲート)に足をかけ、久吾の方を向いて、


 「久吾、急げ! 俺は準備してくるからよ!」


 そのまま転移門(ゲート)で何処かへ行ってしまった。

 言われて久吾も慌てて瞬間移動する。


   ◇   ◇   ◇


 ―――その名奈家の一角で長閑(のどか)な空気を醸し出す、三人と五体のぬいぐるみ。


 ハイドとシークに通訳をしてもらいながら、キーラとオリヴィアのそれぞれの腕の中にすっぽりと収まった、もっちーともつこ。

 そしてお茶受けのお菓子を、冷凍庫の大福アイスと庭の果物を使いアレンジして作るルネと一緒に、お茶の支度をするめぇ。

 主人達の慌ただしい様子を見ながら、


 「…何だか大変そうですメねぇ」


 そう言っていると、《(ヘー)》がやって来て、


 「ずいぶん呑気にしてるわね」


 するとお茶受けの準備を終えたルネが、


 『あ、へー様もどうです? ご一緒に…』


 「………」


 《(ヘー)》は呆れているが、キーラとオリヴィアも楽しそうにしているのを見て、ため息をつく。


 『あなた達、あまりのんびりとしてられないわよ』


 そう言う《(ヘー)》に、もっちーが小首をかしげながら、


 「? 何て言ったの? 丸刈リー…」


 「いい加減、その呼び方をやめないと怒るわよ」


 もっちーは《(ヘー)》に睨まれた。ヒッ! と縮み上がるもっちーを、抱っこしていたキーラが、


 『へー様、この子、いじめないであげて下さい』


 お願いされてしまった。ドヤ顔をするもっちーと《(ヘー)》が睨みあっていると、名奈家の黒電話が鳴った。

 お茶を乗せたお盆を運ぶめぇが、


 「おや、困りましたメ。手がふさがって…」


 すると《(ヘー)》の能力(ちから)でお盆が浮き上がる。めぇは《(ヘー)》に「ありがとですメ!」とお礼を言い、電話に出た。


 「はい、もしもし…、? あ、はい、メ?」


 電話の向こう側が何やら慌ただしい。困惑するめぇに《(ヘー)》が、


 「《最後の番号(ラストナンバー)》が懇意にしている人間でしょう? 皆こちらに来てもらった方が良いわ」


 そう言うので、めぇは「お待ちしてますメ」と相手に答え、玄関の座標を固定して客を迎え入れる準備をし、一旦電話を切る。すると、すぐにまた電話が鳴る。


 「メ!?」


 めぇはしばらく、電話応対と来客の応対に明け暮れた。


   ◇   ◇   ◇


 「―――おや、これは…」


 久吾がピエールとリュシーを連れて戻って来ると、


 「あぁ! 名奈さん!」


 「「久吾さん!」」


 名奈家がすごい人数で、ごった返していた。

 蔵人達は転移門(ゲート)で来たのだろうが、倉橋達警察組や、伊川親子には彩葉までくっついて来ている。


 ふと見ると、先に連れて来たはずのシモンズ家一行の姿が消えている。ぬいぐるみ達もいない。


 「? めぇさん? 皆さん…。アーサーさん達も…」


 「こっちよ」


 ふと声の方を見ると、《(ヘー)》が転移門(ゲート)から顔を出していた。


 「《(ヘット)》達が用意してくれた『船』に移動するわ。全員転移門(ゲート)を通りなさい」

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