18-2 《5》
『おお…、これが日本家屋…』
ミスターが《5》達を連れて名奈家に瞬間移動してきた。
バリアボールに包んでいた人数は、五人。
『………、か…』
『…カワイイ』
ぬいぐるみ達を見ながら目をキラキラさせ、そう呟くのはキーラとオリヴィア。
名奈家の縁側を興味深そうに見ているのは、南極宮殿の料理番・ルネ。
「ミスター、彼等は?」
久吾が聞くと、代わりに《5》が、
「宮殿に住まわせていた人間達よ。この子達は一応、私に仕えているの。…元は《3》が所有していた少女達だったのだけど」
そして、普通のぬいぐるみの振りをしているもっちー達に、
「あなた達、動いて構わないわよ。しばらく一緒にいるのだから」
『? へー様?』
『何て言ったんですか?』
キーラとオリヴィアが《5》に問うが、ぬいぐるみ達は途端に、ふにゃり、とだらけた。もっちーが、
「…ふぇー、キンチョーしたぁ。…てか何で丸刈リータ姉ちゃんがいるんだ?」
「全くですメ。いつの間にか仲良しさんですメか?」
すると二人の少女が、ますます目を輝かせ、
『! しゃべった!』
『! 動いた!』
そして《5》に向かって、
『『へー様! この子達、触っても良いですか!?』』
《5》は久吾の顔を見る。久吾が『どうぞ』と言うので、二人は、わぁ! と喜び、ぬいぐるみ達と握手したり撫でたりしていた。
『その子達が話しているのは日本語よ。後で少し勉強する?』
《5》に言われ、二人は元気良く『ハイ!』と答えた。ルネは一人、庭や台所などを回って、しきりに感心していた。
ふいにミスターが《5》に向き直り、
「…さて、《5》よ。説明してもらえるか」
「………」
《5》は少し考えているようだが、ハチが、
「おい、《5》。…お前、もしかして《4》を…」
《5》は少し俯きながら、
「………ええ、吸収したわ」
「「!?」」
ミスター達が驚く。《5》は三人に向き合いながら、
「《2》に言われたときは、ためらったのだけど…。…これは《4》の願いでもあったから…」
そう言って、その後の宮殿の様子を話し始めた。
◇ ◇ ◇
「………《5》よ、頼む。…私を使って、更新を…」
《5》の腕の中で《4》はそう言った。
「…何故? あなた、それで良いの?」
すると《4》は精神感応で《5》にだけ伝わるように、
((…《0》が崩御なされて、私にはもう、この世に残る理由が無い。頼む…、私も《0》と共に…))
《4》の想いを尊重し、《5》は更新を受け入れた。
満足そうにしている《2》を横目に《5》は更新を済ませ、その場を去ろうとする。
「…何処へ行く」
《2》に問われ、《5》は、
「宮殿の人間達を外に出すわ。もう必要ないでしょう?」
「………」
そのまま去ろうとすると、《5》は《9》に声をかけられた。
「《5》姉さん、…ちゃんと戻って来てねぇ」
《9》は笑顔でそう言った。
《5》は《9》を一瞥して、そのまま去っていった。
◇ ◇ ◇
「―――悪いけど、私はもう宮殿に戻るつもりはないわ。彼等がしようとしていることは、私には受け入れ難いもの」
《5》はそう言ってうなだれている。ミスターが、
「《2》は、何をしようとしているのかね…」
すると《5》は、
「《1》。あなたも分かっているのでしょう? 彼…、《2》は『ノア』に成り代わろうとしている」
「「!」」
ミスターとハチが、やはり、という顔をした。《5》は続けて、
「あなた達や私と違って《2》は宮殿の外に滅多に出なかった…、ある意味《2》は二千年前から、人間の世界が変化していく様をほとんど見ていない…、いえ、見ようとしていなかった。彼が人間を嫌っていたのも知っていたけど、まさか《0》の死と同時にあんな行動を取るなんて…」
そう言ってため息をつく。ミスターが、
「『ノア』に成り代わる…、ということは、この後彼は…」
《5》は頷き、
「…恐らく、『方舟』を再建して、世界を洪水で飲み込むつもりじゃないかしら。《7》を吸収した《2》なら不可能じゃないわ。天使達を封じたのも、そのためよ」
「…封じた、と。つまりミカエル達はまだ無事、ということですか?」
久吾の問いに、《5》は、
「ええ。事が済むまで天使達に介入させたくないのでしょうけど、人間達を排除した後は、天使達に本来の姿を顕現させ、『神』として祀り上げたいのじゃないかしら…」
ミスターもハチも唸る。《5》は続けて、
「…それから、《8》。あなたNo.93にNo.666を吸収させたわよね?」
え? とハチが驚く。
「な、何だよ。今更文句を言われても…」
すると《5》は首を横に振り、
「旧約聖書になぞらえるのなら、方舟には全ての生物を番で乗せた、とあるでしょう? つまり…」
「それは、マイシャの能力が《2》に狙われる、と言うことか?」
ミスターがそう言うと、《5》は頷きながら、
「マイシャ、と言うのね。…恐らく吸収されることはないと思うけど、《2》はそのマイシャに、自分の意に沿うように命令は下すでしょうね」
久吾はミスターと頷きあい、千里眼でマイシャの様子を見ることにした。…が、
「…!? マイシャさん!?」
風邪ひきましたorz
病院言ってきます。
インフルだったら更新遅れるかも。