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18-1 名奈家へ

 「―――いやぁ、参ったぜ」


 ここはハチの研究所(ラボ)だ。

 ミスターの手を借り、無事に復帰したハチの開口一番だった。


 「…しかし、予備(バックアップ)とは…」


 久吾が感心しているとハチは、


 「《(ヴァヴ)》の一件で対策を練ってたんだよ。万が一の場合、ミスターに復活も頼んでてな」


 ハチは自分の中にある元々の情報チップを体内に作った別スペースに配置し、予備を本来の位置にカモフラージュして置いていたらしい。


 「私も《一桁(ウーニウス)》同士でこのような事態になるとは思わなかったがな。…それにしても、まさか《(テット)》があのような者だったとは…」


 ミスターの言葉にハチも意気消沈していた。ハチは元々《(テット)》を妹のように可愛がっていたのだ。

 ミスターはハチを慰めるように、


 「…我々《一桁(ウーニウス)》同士は、《(ギメル)》と《(ダレット)》以外は互いの考えていることを読めぬからな。とはいえ《(ダレット)》達も、はっきりと我々の思考を読める訳ではない。《(エフェス)》も特に気にしていなかったようだ」


 ハチは頷きながら、


 「………いや、本当は俺もアイツに違和感みたいなのは感じてたんです。《(テット)》は俺や《(ヴァヴ)》と同じ(タイプ)のはずなのに、どこか違う…。ただ、俺が認めたくなかった、ってだけなんでしょうね」


 ミスターとハチが落ち込む表情を見せる中、久吾は少し焦れたように、


 「とにかく、です。ミカエル達を宮殿(あそこ)から救い出さねば! …いっそ、あの箱ごと瞬間移動すれば良かったのでは…」


 「それは無理だ」


 ミスターが一蹴した。そして、


 「あの箱は《(テット)》が作ったのだろう? …《(ヘット)》、君ならあれを解析出来ただろうが、どうだった? 君の能力(ちから)で子供達の安全を確保しながら解除出来たか?」


 問われてハチは首を横に振る。


 「…あれは多分、《(テット)》にしか分からねえ『鍵』がある。下手に動かしても、中にいる子供達にどんな影響が出るか分からねぇ。だから《(ダレット)》は俺達に『引け』と言ったんだろ」


 聞いて久吾は歯噛みする。子供達を置いてきてしまったことに、後悔の念を隠しきれずにいた。

 ミスターは久吾を見ながら、


 「…久吾。気持ちは分かるが、一旦落ち着いて作戦を練ろうではないか。向こうにはまだ《(ダレット)》がいる。何かあれば連絡が入るだろう」


 そして、久吾の肩を叩きながらミスターは、


 「今、守護者(ガーディアン)達は君の家にいるのだろう? 報告をせねば…。《(ヘット)》、守護者(ガーディアン)達も含めて作戦を立てよう。行くぞ」


 ハチは頷き、三人は転移門(ゲート)を通って久吾の家に向かった。


   ◇   ◇   ◇


 「お! おかえり! ご主人!」


 三人で名奈家に戻ると、もっちーが元気良く迎えてくれた。だが、すぐに「あれ?」と言いながら、


 「………なぁ、ご主人。みー君達は?」


 めぇやもつこ、ハイドとシークもドヤドヤと集まり、久吾達に声をかける。


 「ミスター、ラファエルは?」


 「うーちゃんもいねーぞ!」


 テディ達に続き、もつこも貝殻ベッドに乗ったまま、


 「ねぇねぇ、ふーちゃんは?」


 「メ? 何で旦那様達だけなんですメか?」


 めぇにも問われ、仕方なくミスターが事情を話す。


   ◇   ◇   ◇


 「―――んで、置いてきちゃったのか?」


 もっちーが怒っている。テディ達もだ。ミスターが、


 「…面目ない。しかし、下手に強引に連れてきても、ボックスの中の天使達にどのような影響が出るか分からなかったのだ…」


 そう言ってうなだれている。するともっちーが、


 「ふーん…。じゃあとりあえず、助けに行こーぜ!」


 え!? と三人が驚くが、もっちーはやる気マンマンだ。めぇも、


 「はいメ! ワタクシ達には皆様手出し出来ないですメから、旦那様達の代わりに頑張りますメよ!」


 対《(ギメル)》戦で手応えを感じていためぇともっちーだったが、ミスターが首を振りながら、


 「…残念だが、今の《(ベート)》に『神』の概念は通じないだろう。《一桁(ウーニウス)》同士を食い合うなど、完全に《(エフェス)》の意に反する行為…、そのような者が『神』に手を出すな、という規律を守るとは思えん。彼は恐らく、禁忌の(たが)を何らかの方法で既に外している」


 めぇともっちーは驚いたが、


 「で、でも! でも…、………みー君」


 もっちーが泣き出した。めぇも泣き出しそうな顔でもっちーを慰めている。

 その様子を見ながら久吾はミスターに問う。


 「…では、どうするんです? 《(ダレット)》さんの連絡を待つと仰いましたが、下手をすると《(ダレット)》さんも吸収されているかも…」


 そう聞いてミスターも息を呑む。


 「確かに、その可能性も…、………!?」


 言いかけて、ミスターは何者かの精神感応(テレパシー)を受け取る。

 少しの間の後、ハチがミスターに、


 「…《(ダレット)》、ですか?」


 するとミスターは首を振り、


 「いや…、《(ヘー)》からだ」


 「「!?」」


 全員が驚く。ミスターは、ひとまず、と言いながら、


 「《(ヘー)》が宮殿から外に出た。迎えが欲しいと言っているので、行ってくる」


 それだけ言うと、瞬間移動で行ってしまった。

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