17-6 反旗
「…《0》? ………《0》!?」
「おじいちゃん!?」
子供達が揺り動かす。だが、《0》は動かない。
やがて《0》の身体は、ほろほろ、と崩れ、白と金のもやとなり、オリハルコンに吸い込まれていった。
「………崩御、なされた」
《4》がそう呟いた。
「! 何と………!」
《1》が呻く。
ミカエルを始め、子供達はソファーの上で、消えていく《0》を感慨深げに目で送りながら、
「《0》…、ノア…」
「…今まで、本当にありがとう…」
「ゆっくり休んでね…」
―――やがて、光がすっかりオリハルコンに吸収されると、《1》は皆に向かって、
「………皆、《0》の最後の言葉を、聞いたな?」
そう問いかける。全員が《1》に視線を送る。
「これからは、この宮殿を我々の『家』とし、いつでも戻れる場所としよう。…そして、我々も自由に過ごそう。…人間と、大きく関わること無く、な」
そう笑いかけ、《1》…、ミスターがラファエルとウリエルに、久吾がミカエルとガブリエルに、その手を伸ばそうとした、瞬間―――。
「………《9》」
《2》の発令に呼応し、ソファーの形状が、ガコン、と音を立てて変化した。
「「!?」」
ソファーは大きなボックスを形作り、天使達を捕らえる。
「「ななさん!!」」
「「ミスター!!」」
ミカエル達の叫びも虚しく、天使達は真っ黒なボックスの中に収納されてしまった。
「《2》! これはどういう…」
「ぐぁ…!」
ミスターが《2》に詰問しようと振り返った瞬間、《2》は、《7》の背後に回り、《7》のチップを奪っていた。
《7》が呻き、倒れる。
「「!?」」
そのまま皆の前で、《2》は更新を行う。
特殊変異型は《一桁》の手を借りなければ更新は不可能なのに対し、《一桁》は自分の中で完結出来る。
これは《一桁》だけの特権だ。
「………やっと、くたばったか。《0》…、老いぼれが」
更新を終えた《2》の言葉に、ミスターが憤る。
「…《2》! 貴様、何ということを…!」
瞬間、カッ! と一閃が走り抜ける。《2》がミスターに向かって雷を落としていた。
衝撃音が響く。
…が、ミスターは無傷。
そばにいた久吾が、自分とミスターを透明の球体に包んでいた。
「………《最後の番号》」
ギリッ、と歯噛みしながら《2》が呟く。久吾は《2》に向かい、
「子供達を…、ミカエル達をここから出して下さい」
「…出す訳無いじゃない。天使の能力を解放されたら困るわ」
そう答えたのは《9》だ。聞いてハチが思わず、
「おい、《9》! お前、どうしちまったんだよ! お前はこんなことするような奴じゃないだろ!?」
すると《9》は微笑みながら、
「《8》兄さんが私をどう思ってたのか知らないけど…、………私はね、最初から兄さんの能力が欲しかったのよ」
にっこりと笑って、《9》は瞬間移動でハチの背後に回り、チップを奪っていった。
「! お前…、そん、な………」
ハチが呻き、倒れた、その瞬間。
「「!?」」
《2》と《9》の動きが止まった。
気付くと《4》が、必死の表情で能力を発動している。
「《4》…!」
ミスターが叫ぶと、《4》が、
「《1》…、《最後の番号》も、今のうちにここから脱出して下さい!」
「!? 《4》、君は…!」
「…今、彼等の意識を封じています。…が、長くは持たない。《8》も連れて、彼の研究所へ…!」
「しかし、子供達が!」
久吾が叫ぶが、ミスターが、
「…久吾! 今は引くぞ!」
そう叫んで、ハチにバリアボールを施し、自分と久吾もボールに包んで、そのまま二つの球体を伴ってハチの研究所へと瞬間移動していった―――。
◇ ◇ ◇
「…ぅあぁっ!」
《4》の能力から解放された瞬間、《2》は《4》を床に伏し、その頭を足で踏みつける。
「………貴様、《最後の番号》を逃がしたのか」
苦々しくそう言う《2》を尻目に、《9》は嬉しそうにハチから奪ったチップで更新を試みる。
「…ウフフ、これで念願の『鑑定眼』が………、………?」
解析して《9》は気付く。そして、含みを帯びた笑顔を浮かべ、
「………フフ、流石ね、《8》兄さん。これ、予備じゃない」
そう言いながら、その予備を使用して一応の更新を完結させた。
―――《5》は、一連の顛末を黙って見ていた。…が、
「………《2》、《4》を放してあげて」
言われて《2》は《4》から足を外す。《5》は《4》に近寄り、
「…大丈夫?」
そう心配するが、《2》が、
「…《5》、貴様、《4》を使って更新をしておけ」
「!?」
驚く《5》と《4》を無視し、《2》は天使達を捕らえたボックスに手をかけた。
そして、不敵な笑みを浮かべながら、呟く。
「………後は、《1》、それから《最後の番号》を吸収する。…その後は、………これからは、私が『ノア』だ」
年末年始忙しくなっちゃうので、
『天使救出編』(←勝手にそう呼んでる)は年明けからになります。