表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/194

17-6 反旗

 「…《(エフェス)》? ………《(エフェス)》!?」


 「おじいちゃん!?」


 子供達が揺り動かす。だが、《(エフェス)》は動かない。

 やがて《(エフェス)》の身体は、ほろほろ、と崩れ、白と金のもやとなり、オリハルコンに吸い込まれていった。


 「………崩御、なされた」


 《(ダレット)》がそう呟いた。


 「! 何と………!」


 《(アレフ)》が呻く。

 ミカエルを始め、子供達はソファーの上で、消えていく《(エフェス)》を感慨深げに目で送りながら、


 「《(エフェス)》…、ノア…」


 「…今まで、本当にありがとう…」


 「ゆっくり休んでね…」


 ―――やがて、光がすっかりオリハルコンに吸収されると、《(アレフ)》は皆に向かって、


 「………皆、《(エフェス)》の最後の言葉を、聞いたな?」


 そう問いかける。全員が《(アレフ)》に視線を送る。


 「これからは、この宮殿を我々の『家』とし、いつでも戻れる場所としよう。…そして、我々も自由に過ごそう。…人間と、大きく関わること無く、な」


 そう笑いかけ、《(アレフ)》…、ミスターがラファエルとウリエルに、久吾がミカエルとガブリエルに、その手を伸ばそうとした、瞬間―――。


 「………《(テット)》」


 《(ベート)》の発令に呼応し、ソファーの形状が、ガコン、と音を立てて変化した。


 「「!?」」


 ソファーは大きなボックスを形作り、天使達を捕らえる。


 「「ななさん!!」」


 「「ミスター!!」」


 ミカエル達の叫びも虚しく、天使達は真っ黒なボックスの中に収納されてしまった。


 「《(ベート)》! これはどういう…」


 「ぐぁ…!」


 ミスターが《(ベート)》に詰問しようと振り返った瞬間、《(ベート)》は、《(ザイン)》の背後に回り、《(ザイン)》のチップを奪っていた。

 《(ザイン)》が呻き、倒れる。


 「「!?」」


 そのまま皆の前で、《(ベート)》は更新(アップデート)を行う。

 特殊変異型(バリアント)は《一桁(ウーニウス)》の手を借りなければ更新(アップデート)は不可能なのに対し、《一桁(ウーニウス)》は自分の中で完結出来る。

 これは《一桁(ウーニウス)》だけの特権だ。


 「………やっと、くたばったか。《(エフェス)》…、老いぼれが」


 更新(アップデート)を終えた《(ベート)》の言葉に、ミスターが憤る。


 「…《(ベート)》! 貴様、何ということを…!」


 瞬間、カッ! と一閃が走り抜ける。《(ベート)》がミスターに向かって雷を落としていた。

 衝撃音が響く。


 …が、ミスターは無傷。

 そばにいた久吾が、自分とミスターを透明の球体に包んでいた。


 「………《最後の番号(ラストナンバー)》」


 ギリッ、と歯噛みしながら《(ベート)》が呟く。久吾は《(ベート)》に向かい、


 「子供達を…、ミカエル達をここから出して下さい」


 「…出す訳無いじゃない。天使の能力(ちから)を解放されたら困るわ」


 そう答えたのは《(テット)》だ。聞いてハチが思わず、


 「おい、《(テット)》! お前、どうしちまったんだよ! お前はこんなことするような奴じゃないだろ!?」


 すると《(テット)》は微笑みながら、


 「《(ヘット)》兄さんが私をどう思ってたのか知らないけど…、………私はね、最初から兄さんの能力が欲しかったのよ」


 にっこりと笑って、《(テット)》は瞬間移動でハチの背後に回り、チップを奪っていった。


 「! お前…、そん、な………」


 ハチが呻き、倒れた、その瞬間。


 「「!?」」


 《(ベート)》と《(テット)》の動きが止まった。

 気付くと《(ダレット)》が、必死の表情で能力を発動している。


 「《(ダレット)》…!」


 ミスターが叫ぶと、《(ダレット)》が、


 「《(アレフ)》…、《最後の番号(ラストナンバー)》も、今のうちにここから脱出して下さい!」


 「!? 《(ダレット)》、君は…!」


 「…今、彼等の意識を封じています。…が、長くは持たない。《(ヘット)》も連れて、彼の研究所(ラボ)へ…!」


 「しかし、子供達が!」


 久吾が叫ぶが、ミスターが、


 「…久吾! 今は引くぞ!」


 そう叫んで、ハチにバリアボールを施し、自分と久吾もボールに包んで、そのまま二つの球体を伴ってハチの研究所(ラボ)へと瞬間移動していった―――。


   ◇   ◇   ◇


 「…ぅあぁっ!」


 《(ダレット)》の能力から解放された瞬間、《(ベート)》は《(ダレット)》を床に伏し、その頭を足で踏みつける。


 「………貴様、《最後の番号(ラストナンバー)》を逃がしたのか」


 苦々しくそう言う《(ベート)》を尻目に、《(テット)》は嬉しそうにハチから奪ったチップで更新(アップデート)を試みる。


 「…ウフフ、これで念願の『鑑定眼』が………、………?」


 解析して《(テット)》は気付く。そして、含みを帯びた笑顔を浮かべ、


 「………フフ、流石ね、《(ヘット)》兄さん。これ、予備(バックアップ)じゃない」


 そう言いながら、その予備を使用して一応の更新(アップデート)を完結させた。


 ―――《(ヘー)》は、一連の顛末を黙って見ていた。…が、


 「………《(ベート)》、《(ダレット)》を放してあげて」


 言われて《(ベート)》は《(ダレット)》から足を外す。《(ヘー)》は《(ダレット)》に近寄り、


 「…大丈夫?」


 そう心配するが、《(ベート)》が、


 「…《(ヘー)》、貴様、《(ダレット)》を使って更新(アップデート)をしておけ」


 「!?」


 驚く《(ヘー)》と《(ダレット)》を無視し、《(ベート)》は天使達を捕らえたボックスに手をかけた。

 そして、不敵な笑みを浮かべながら、呟く。


 「………後は、《(アレフ)》、それから《最後の番号(ラストナンバー)》を吸収する。…その後は、………これからは、私が『ノア』だ」

年末年始忙しくなっちゃうので、

『天使救出編』(←勝手にそう呼んでる)は年明けからになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ