16-14 《0》の夢・その13
((《0》! 《0》ってば! ねえ! 起きて!))
ミカエルの必死の精神感応に、やっと反応した《0》は、
((………む、私が眠ってからどのくらい…))
((いいから! 来て! 生まれたよ!))
《0》は驚いた。急ごうとするが、衰えた《0》に迅速な行動は無理だった。
動きの鈍い《0》の周りを、ミカエルがくるくると飛び回る。
そんな《0》を見た《4》が驚き、
「エ、《0》!? まだ一年も経っていないのに…」
慌てて駆け寄ると《0》が、
「………ついに、…ついに生まれた。子供達が『視える』者が…」
聞いて《4》も驚き、《0》に付き添って支えながら試験管に向かう。
◇ ◇ ◇
((…ごめんね、あなた達。この核もらっちゃうね))
ガブリエルがNo.796〜800に何か言っている。
試験管のそばにいた子供達が、珍しく能力を使ってNo.795に何かを与えていた。
((すごいな、これだけオリハルコンを追加しても平気なのか。コイツには充分強くなってもらわないとな))
ラファエルが楽しそうに言うと、ウリエルが、
((ちょっとぉ! そんなに追加して、何かあったらどーするの!? これくらいにしときましょ!))
…どうやらNo.795の核を増やして強化したらしい。《0》のようにオリハルコンの母体から操作出来ない子供達は、No.795より後の複製から核を頂いたようだ。
驚いたことに、No.795は追加された核にも耐えうる許容枠を備えていたらしい。試験管の中で自分の身体を不思議そうに見ている。
((大丈夫かな?))
ガブリエルが心配そうにしているが、No.795は平気な顔をしている。
そうしているとミカエルが、《0》達を連れて戻ってきた。
《0》は子供達に囲まれたNo.795の前まで来ると、
「………き、君は、この子達が視えている、のか?」
そうNo.795に問いかける。No.795は不思議そうに《0》を見ながら、
((………見えるも何も、そこにいるではないですか))
おお………。
精神感応でそう聞いた瞬間、《0》は感極まり、思わず涙を流した。
「………やっと、やっと生まれた。子供達が視える者が…。…《4》、彼をここから出せるか?」
しかし《4》は、
「…申し訳ありません、私では…。すぐに《1》を呼びましょう」
急いで《1》に精神感応で連絡を入れた。
◇ ◇ ◇
《1》は急いで戻って来てくれた。
No.795を試験管から解放し、ローブを羽織らせると《0》は、
「すまない。こちらに来てくれるか?」
そう言って、今まで誰も入れたことのない小部屋へと、No.795達を促す。《1》と《4》も一緒だ。
…その部屋には試験管があり、中に子供達の姿があった。
「これは………」
《1》達が驚いていると、《0》は、
「…ああ、子供達の依代だ。時々私が手を入れながら、ずっと保存していたんだ」
《0》は愛おしそうに子供達の依代を見ながら、試験管をなでていた。
子供達の精神体も、くるくると飛び回りながら自分達の依代を見ていた。
((…もうこの中に入れるのか?))
((私達が入って動くのかな?))
何だか心配そうだが、《0》は、
「…そうだな。私とNo.795で子供達の精神体を注入すれば動くだろうが、『天使』の能力を発動させるには、やはり『因子』が必要だろう…」
((地球の因子だね?))
ミカエルが言うと《0》は頷き、《1》に、
「…《1》、頼んでいた件はどうなった?」
「ええ。大体の見当はついています。あなたが仰っていた『女神』は恐らく…」
《1》がそう言いかけたとき、部屋の外が何やら騒がしくなった。複製の試験管の辺りだ。
「?」
何事かと《1》が表を窺う。
◇ ◇ ◇
「! あぁ、《1》! No.795が消えた! …せっかく私が更新に使おうと…」
《1》の姿を見た《2》が、憤慨しながら《1》に走り寄って来た。だが《1》は、
「悪いが、No.795は君に吸収させる訳にはいかない。彼はやっと生まれた、《0》が待ち望んでいた者だ」
「!?」
《1》に言われ、《2》は衝撃を受けた。進捗データを見た時から、自分に吸収出来れば相当量強化出来ると思っていたのに…。
「………で、では、そちらの用件が済んだら、私に…」
「だめだ」
食い下がった《2》を、今度は《0》が一蹴した。《0》は、
「…これから、私とNo.795とでやる事がある。…《1》よ、しばらく誰も部屋に入れぬように」
そう言い捨て、小部屋に戻っていった。
………《2》は戻って行く《0》の背を、忌々しそうに見ていた。