16-11 《0》の夢・その10
10月中に終わらなかった…orz
「《1》…、話は《4》から聞いた」
《0》にそう言われ、《1》は神妙な面持ちで頷く。《0》は、
「今後のことだが、…《2》の言うことも分からぬでもない。ただ…、無闇に更新を行うのも問題だな」
《1》と《4》は少し驚き、《1》が尋ねる。
「…あなたは、分身同士が吸収し合うことに、何も思わないのですか?」
《0》は、ああ、と思い、
「そうだな…。何も思わぬ訳では無いが、実際に複製を造り続けても、全てを方舟に留め置くことは出来ぬ。………そもそも私は、とある者の誕生を待っているのだ」
《1》は気付き、
「………それは、あの『光』を認識出来る者、ということでしょうか?」
そう言って、オリハルコンのそばを見る。
《0》は、そうだ、と言いながら、オリハルコンの方に向かって手を振る。どうやら《0》には、ミカエル達が手を振っているのが見えたらしい。
「…可愛らしい」
思わずそう呟いたのは、《4》だった。《0》は驚き、
「! 《4》! 君は…」
そう言うと、《4》は首を振り、
「視えている訳ではありません。あなたの意識から漏れ出た映像を感じ取ったまでです。…四人の子供、なのですね」
これには《1》も驚く。《0》は嬉しそうに、
「…ああ、そうだ。あの子達を復活させる為に、『視える』者が必要なのだ。…《1》、《4》、このことは君達の胸にのみ留めて置いてくれ」
二人は頷く。ふいに《1》は《0》に、
「その事とも関連するのですが、私も今、『視える』ようになる為に、とある人間達に教えを乞うているのです」
それを聞き、《0》が驚く。
「!? 何と…! どういうことだ!?」
《1》は、頭の中に地形を描き、《0》に伝える。
「…ここから北東の方角に、ゲルマン人という者達と、もう一つ、ケルト人という者達がおります。ケルトの民の中に、『魔法』という技を継承している魔法使いと呼ばれている者達がいるのです」
「ほぉ…」
《0》は驚嘆した。唯一神と共にいた頃には、聞いたことのない話だ。《1》は続けて、
「私は彼等の下で『魔法』を教授しながら、精霊達との交信方法も探求しています。ゲルマンの民からは、『ルーン』と呼ばれる文字体系も教わっております」
《0》は驚いた。
「君達を作成した時、全ての言語を設定したものと思ったが…」
「そうですね、ルーンは正確には『言語』ではなく『音素』…、言うなれば秘匿性の高い暗号に近いものですから…」
《1》の説明に、《0》は感心しながら嬉しそうに、
「《1》、…君はすごいな」
《1》は恐縮しながらも笑顔で、
「言ったでしょう。あなたに視えているものを、私も見たい、と…。私の『強化』は、『魔法』の知識を得ることで行うつもりです」
《0》は、なるほど、と思い、《1》に礼を言う。
「…ありがとう。君が最初の分身で、本当に良かった。…そして《4》、君にもずいぶんと助けられているな」
《4》にも礼を言った。聞いて《4》も頷く。
《0》は思い立って、
「…そうだな。次なる複製を造る前に、《2》達に通達をせねばなるまい」
そう言って、皆を集めた。
◇ ◇ ◇
「聞いてくれ、皆の者」
オリハルコンを背に、《0》が集めた《一桁》の者達に言う。
「私が眠っている間に、新たな複製達を吸収した件は不問とする」
それを聞き、皆安堵の表情を浮かべる。《0》は続けて、
「…だが、君達が互いを吸収し合うことは禁ずる。良いな。…君達《一桁》は『特別』だ。それから…」
《0》は皆を見ながら、
「《1》と《4》…、彼等には、君達とは別の使命を与えている。今後、私が眠っている間の統括は、《1》に任せる。《1》不在時は…、《2》。君が方舟の責任者だ」
「! …は、はい」
《2》は少し驚いて、返事をした。
「…だが、強化に関しては、今後は必ず《1》の許しを得給え。彼の許可なく更新することを禁ずる」
すると皆が僅かにどよめく。更に《0》は、
「《4》には私が眠っている間、私の保護を任せる。…万一、眠る私に危害が加わった場合、君達の中の『核』は全て母体のオリハルコンに還元されると思え」
全員が驚く。
《4》の話から《0》も改めて知った事だったが、皆を牽制するには丁度良かった。
《0》は最後に、
「私が眠る間、外に出ても構わないが、人間達に危害を加えることを禁ずる。良いな」
そう言われ、全員が恭しく《0》に跪いた。
…話は以上となり、《0》は複製の増産に取り掛かった。
―――今回の増産は20体。
試験管の数を追加し、素材の配合と『核』の仕込・調整を行い、《0》は再び眠りについた。