表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/194

15-7 招集

 観客全員が、夢から覚めきれずにいたが、


 パチパチパチ………。


 一人、拍手をしている者がいた。いつの間にかミスターが、客席の一番後ろで手を叩いていた。


 ミスターの拍手を皮切りに、観客達がやっと現実に戻ってきて、そこから割れんばかりの拍手が、会場に鳴り響いた。


 「す、すごかった! こんなの、初めて観たよ!」


 裕人が叫ぶ。他の者達も口々に、賞賛の言葉を発していた。


 ライアン達スタッフは、舞台裏から観ていたのだが、


 「…ヤバイよ! コレ! こんなの、4DXでもムリだろ!」


 「こ…、ここまで五感に働きかけてくる舞台なんて…、今まで観たことないぞ!」


 何年も舞台を作り上げてきたはずのスタッフ達が、今までの常識を覆されていた。

 アーサーは身震いしながら、


 「………これは、…まさか、ここまでとは…。さすが、と言うか、………どう思う? 我々でこれを、再現出来るかな」


 全員が息を呑む。ライアンが、


 「…莫大な費用がかかるのは、間違いないでしょう。それでも100%再現するのは無理か………。今回我々は、スポットライトを当てただけですが…。…いや、何とも、驚かされましたね」


 アーサーも頷く。そして、


 「…そうだ、今のを我々の機材で撮れたか?」


 聞いたが、スタッフが確認すると、


 「………ダメです。全部壊れちまってる。…クソッ!」


 どうやら彼等の魔法が、録画機器に何かしらの影響を与えたらしい。今後のステージで使う、電源を切っていた機器は無事だった。


 アーサーは、悔しそうにしていた。すると、


 「…やあ、アーサー」


 舞台裏に、いつの間にかミスターが姿を現した。

 え!? とアーサーが驚くと、ミスターは水晶玉を差し出し、


 「機材を壊してすまないね。魔法の(たぐい)は、これじゃないと収められないんだ」


 アーサーは水晶玉を受け取った。ミスターは、


 「これを持って、二度指先でこう撫でて『atgenhedliad(再生)』と唱えなさい。分かっていると思うが、口外禁止だよ」


 それだけ言うと、ミスターは舞台裏から退出した。

 アーサーが言われた通りにすると、その場の空間が先程の舞台を映し出す。

 おお!! とスタッフ一同が驚いていた。


   ◇   ◇   ◇


 「―――いや、すごかったな。あれが魔法、か」


 ハチも久吾も驚いていた。人間達はもとより、他のナンバーズ達も同様だ。

 初めて観た天使達の舞台に、久吾も少なからず興奮していた。


 そうしていると、みー君達がそれぞれぬいぐるみを抱いて会場に降りてきた。


 「ななさーん!」


 みー君だけが、めぇともっちーの二体を抱えている。ふーちゃんは貝殻ごともつこを運んでいた。


 「皆さん、お疲れ様でした。素晴らしかったですよ」


 久吾がにっこりと子供達を労う。みー君は、


 「エヘヘ、久しぶりだったけど、楽しかったよ!」


 「もつこちゃん達も頑張ったね!」


 ふーちゃんもそう言って、にっこりともつこに頬ずりした。もつこも嬉しそうだ。


 すると、観客達が気づいて、子供達を取り囲み出した。

 そして再び、拍手が起こる。


 「君達、すごかったよ!」


 「今日のこと、一生の思い出になるよ!」


 「一体、どうやって演ってたんだい!?」


 「そのぬいぐるみ達は、生きているのかい!?」


 様々な言語が飛び交い、色々聞かれたが、興味津々の人間達をナンバーズ達が止めていた。


 「………さて、人間諸君」


 ふいに現れたのは、ミスターだ。

 英語で話してはいるが、不思議なことにその場にいる者達の頭の中で、言葉の意味が通じていた。


 「本日の子供達の舞台を観て、興奮覚めやらぬ気持ちも分かるが…、我々のことと同じで他言は無用だ。全員、その胸の内にのみ、留めておいてくれたまえ」


 皆、少々うろたえるが、自分達と家族のようなナンバーズ達にも促され、納得して頷いていた。

 そして、再び子供達に拍手が送られる。

 四人の天使達は、それぞれ観客達に向かって可愛らしく挨拶をした。


 ふいに彩葉が、


 「………素敵だった。私達、つくづくすごい地球(ほし)に生まれてきたのね」


 感慨深げにそう言った。


 ―――演目『誕生』は、人間が誕生するまでの46億年を凝縮した、この地球(ほし)の叙事詩だ。

 彩葉の言葉を聞いて、みー君達はにっこりと笑った。


 「うん! ボク達、コレ大好きなの!」


 「ああ。演ってて楽しいのは、やっぱりこれだな」


 みー君とラファエルが言う。ウリエルとふーちゃんも頷く。

 そしてミスターに向かって、ラファエルとウリエルが「ミスター!」と言って走り寄った。


 ミスターはにっこりと二人を抱きとめ、


 「お疲れ様。ちゃんと水晶玉に記録したからね。《(エフェス)》に観せてあげよう」


 それを聞いて、ハチが驚く。


 「ミスター…、ということは…」


 ミスターはハチに向き直り、


 「…ああ。《(エフェス)》が目覚めた。招集がかかったよ。《一桁(ウーニウス)》は全て宮殿に集まるように、とね」


 そして、久吾と天使達にも、


 「それから、ミカエル、ガブリエル、ラファエルとウリエルも。今回は君達四人と…、久吾。君もだ」


 久吾は驚いて、


 「私も、ですか?」


 ミスターは頷き、


 「期日は三日後、子供達は…、久吾。君が責任持って連れてきなさい。いいね」


 三日後…。

 久吾は神妙な面持ちで頷いた。

次、更新10月になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ