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15-3 プライベートステージ

今回ほぼ英語で会話中の(てい)でご理解下さい。

 「…おや? 大弥さん、電話中でしたか」


 久吾が言うと、大弥は、


 「ああ、今ちょうど向こうのプロデューサーと…」


 そう言いかけると、電話の向こうでライアンが英語で、


 『…ああ、うちの理事長かと思った…。そっくりだったから…』


 なので久吾は、おや? と思い、こちらも英語で、


 『こんにちは。…理事長さんは、私にそっくりなんですか?』


 聞くと、ライアンは、


 『ええ。彼は普段ウィッグをつけていますが、本来はあなたと同じスキンヘッドです。ごく一部の者しか知りませんが…』


 久吾はそう聞いて、ふむ、と考え、


 『理事長さんのお名前は?』


 『アーサーと申します』


 名を聞いて、すぐにハチに精神感応(テレパシー)で聞いてみる。


   ◇   ◇   ◇


 ((―――ああ、No.742だ。人間達と劇団なんかをプロデュースしてる、とか言ってたな。連絡取ってやろうか?))


 久吾は、ほほう、と感心して、お願いします、と頼み、一旦連絡を切る。


 ………しばしの間の後、ライアンのスマホが鳴った。どうやら相手は理事長らしい。

 何やら言葉を交わし、ライアンのスマホの映像がこちらに向けられる。


 『…やあ、はじめまして。《最後の番号(ラストナンバー)》、名奈久吾さん』


 にこやかにそう言った理事長・アーサーの顔は、確かに自分達と同じ顔だ。しかし、明るいブラウンの髪がフサフサとして、ずいぶんと印象が変わる。


 「はじめまして。アーサーさん、ですか。劇団などをおやりになってらっしゃるとか…」


 久吾が尋ねると、アーサーは、ハハ、と笑い、


 『そうなんです。…ああ、耀一さん、申し訳ない。うちの者達からそちらの試演を見せられたのが一昨日だったもので、連絡が遅れてしまった』


 そう言われ、耀一は少し困惑しながら、


 「そうですか…。ですが、今からの配役変更は、本当に難しいので…」


 アーサーは笑いながら、


 『ですよね。ライアンから聞いたが、私も事情は分かるので、歌だけ差し替えで良いですよ。配役もそのままで…、ああ、子役への説得はお願いします』


 「理事長! しかし…、これだけの子を使わないなんて…」


 ライアンがそう言うと、アーサーは、


 『分かるよ。だからね、久吾さん。それから、…ガブリエル様。お願いがあるんですがね』


   ◇   ◇   ◇


 アーサーの『お願い』は、ふーちゃんにプライベートステージを設けて欲しい、というものだった。


 『…お客様は入れない。我々関係者だけで、あなたのステージを観てみたいのだが…』


 そう話をしていると、みー君達が名奈家に戻ってきた。


 「ただいまぁ! …あれ?」


 「あら、お客様?」


 めぇをナップサックに入れ、それを抱えたウリエルが訊いた。


 「ん? どうしたんだ?」


 買い物の荷物を抱えたラファエルも入ってきて、名奈家は途端に賑やかになった。

 テレビ電話の相手達が、何事かと気をそらした様子だったので、久吾は、


 「ああ、今ミスター…、《(アレフ)》のところにいる天使()達もこちらにいるので…」


 するとアーサーが興奮気味で、


 『何と…! 四大天使が揃っているんですか!?』


 おや、と久吾が驚く。アーサーは続けて、


 『素晴らしい…! どうでしょう、皆さんでステージに上がって頂くことは出来ないでしょうか!?』


 人間達を蚊帳の外に置いて、アーサーが一人興奮している。久吾も不思議に思い、尋ねてみた。


 「あの…、どういうことでしょうか?」


 アーサーは、はっ、と気がつき、


 『ああ、…ご存知ないんですか? 四大天使の能力…。彼等は一つのユニットなんです。ガブリエル様は歌声、ウリエル様は舞踏、ラファエル様は演奏(バックミュージック)、そしてミカエル様は、それらを束ねる指揮者(マエストロ)


 そう言われ、久吾は、ほう、と感心し、


 「よくご存知でしたね? 私、詳しく知らなかったのですが…」


 『以前、《(アレフ)》…、ミスターが教えてくれました。私も音楽に(たずさ)わる者ですから』


 アーサーは少し恐縮したように答えてくれた。…が、久吾は少し心配になり、


 「なるほど…。ですが、この天使()達に能力を使わせるつもりですか? お客さんを入れないとはいえ、何が起こるかも分からないのに…」


 アーサーは、うっ、と呻く。が、後ろからラファエルが、


 「いいぞ」


 事も無げにそう言った。

 え!? と久吾は驚いたが、ラファエルは、


 「別に、本来の姿じゃなけりゃ大丈夫だろ。たまには僕達も、互いの呼吸を合わせておきたいしな」


 「そうね。いい機会じゃない?」


 ウリエルも同意する。

 みー君とふーちゃんも、わぁい! と喜んでいる。


 アーサーは嬉しそうに、


 『ありがとうございます! いや、楽しみだな。…あ、ガブリエル様、久吾さん、差し替え用の歌は、お願い出来ますか?』


 ふーちゃんは久吾の顔を見る。久吾は先程の四人の喜ぶ姿を見たので、


 「…あなた方が良ければ、私は構いませんよ」


 にっこりとふーちゃんに笑いかけた。ふーちゃんも笑顔で頷く。

 …蚊帳の外だったライアン達が、どうやらまとまったらしい話を聞きながら、


 「あ………、じゃあ、話はついた、ってこと、ですか?」


 少しオロオロとしながら、アーサーに尋ねる。


 『ああ。忙しくなるな。私も今から日本(そちら)に向かうよ』


 ライアンと耀一は、え!? と驚いていた。

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