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シリーズ 【パラレル・フラクタル・オムニバス】

読み切り短編集 『星屑に坐す(3)』~魔王遊戯~

作者: nanasino
掲載日:2023/10/13

※2025/10/13全体加筆修正






 巨人の館かと思えるほどに巨大な柱が立ち並ぶ。


 巨人の館かと思えるほどに巨大な階段が続いている。


 尺度のめちゃくちゃな建物──その吹き抜けに作られた空間の一角に瀟洒しょうしゃな小部屋があり、小窓に面したロッキングチェアーに腰掛けてゆらゆらしている人影がある。頭の左右に小さな巻き角のある長髪の男だ。


 男は薄化粧の顔に顎肘ついて窓の外の光景を見ていた。禍々しいアイシャドーに縁取られた、死んだ魚のように感情の見えない目に睥睨されているのは戦場である。殺し合いの舞台は血煙と泥に塗れて凄惨な様相を呈していた。

 それなのに男は言う。




「────実に生産的だよね」


「にゃ、せいさんてき? 」


「うん」


「? 」




 巻角の男の所感に相槌をうった猫人の少年は居心地が悪そうである。あちこちキョロキョロ見ていて落ち着きがない。

 巻角の男は全裸だったが、猫人の少年が居心地悪そうにしているのとは多分関係がないだろう。この猫人はまだ子供で、部屋をウロウロしたりあちこち触ったり調度品をあれこれ手に取ったりするのは子供の無遠慮のそれなのだ。今は高い天井から下がる豪奢な幔幕まんまくに自ら巻かれて一人隠れんぼをしている。

 戦争を見下ろす巻角の男も猫人の少年も緊張感がまるでなく、外で殺し合う人々の残した死屍累々の死臭が上階に登ってくるのも気にする風でなかった。

 自らが戦地にあって、ましてその居城が攻められているというのに逃げるでもなく戦うでもないというのはどういうわけか。彼らは自分たちに戦禍が及ぶことなんて全く考えていないかのようにくつろいでいる。


 突然、巻角の男は窓の外から目を離すと幔幕の膨らみを足裏で突き飛ばした。幕裾から転げ出た猫人の少年はネコミミを伏せて鋭く息を吐いたが、転がりながら威嚇する様は滑稽でしかなくて巻角の男は歯を見せて笑った。




「ッハハ! ……あー、……ふふ。メメンくんさー、よくきたね。まあゆっくりしてってよ、うん。ところでさあ、皆んな界界の外へ散った? 」


「そうですねぇ。もうお城には部下の方はいませんよぉ。皆さん外へ出て人草さん達と交戦中ですねぇ」


「あ〜じゃあ見たまんまか。でもまだ遠くへ行けてそうにないな皆。……人草さん達──人類種の連合軍、包囲陣形9層もあるでしょあれ? あんなに遠くまで陣を敷かれちゃうとなぁ…」




 巻き角の男が顎を突き出して見下ろす城下の景色は遠くまで山野の広がりが見える高さだが、しかし今その森林は広範に渡る火災により莫大な煙を上げている。視界を埋める煙と炎の明かりを見下ろして、それも森林の景観の中に、魔族と人類種の布陣がどこに見えるのだろうか。巻き角の男の嘆きは猫人のメメンには分からなかった。ただ、この城の内部がほとんど魔物も魔族も出払って空っぽであり、今この場にいるメメンと巻き角の男くらいしか居ないことは、メメンは解っている。そんな状態が異常事態であることも。




「魔王様は、ここに一人になっちゃっていいんですかぁ?」


「うん。巻き添えになっちゃうからな、皆……。あ、メメンくん、これ食べて。フフッ! 魔石を使って取り寄せた物でさぁ、まぁ憲法違反なんだけど……フフ……”幸せ回帰”ってお菓子なんだって」


「わぁー! 粉がおいしい! 」


「ッファーッ! ……ッ……ッ!! 」




 引き笑いである。この巻角の男は魔王だが品のいい顔立ちを保てず一瞬で笑みに崩れてしまった。

 というのも、魔王は皿に盛った楕円形の平べったい菓子を猫人のメメンに勧めたが、メメンは菓子を差し出された時点でもう手にとって口に入れたのである。魔王が「食べて」と言ったときにはメメンはもう咀嚼していた。それはなんだか巻角の男にとっては嬉しかったのだ。

 猫人の少年メメンは粉がおいしいと言って未だに口の周りや指についた菓子の粉を舌でペロペロしていて、お菓子はまだ山盛りあるのだから食べればいいのにペロペロに夢中になっている。魔王にとってはそれら全部が見ていて愛おしく思えるらしい。


 人類種連合軍に城を攻め込まれた魔王軍の戦況が芳しくないのは魔王にとって”約束”どおりの流れなのだが、今までの魔王活動もこれで終幕かと思うと一抹の寂しさは拭えない。まだ魔王にはいろいろな仕事が残っているとはいえ、魔王の顛末というのは伝統で決まっているのだから。

 



「あーあ、……ハハッ、メメンくん呼んでマジでよかったわ。もう開票会場設営できたし、この戦況が落ち着いて冥界から投票結果が届いたら、あとは他の魔王の入城を待つだけなんだよね。英雄アファンヌが来てからが大変になるんだけど、それはまだまだ最後のことだし、外の皆んなが避難するまではほんと暇だから」




 この世界の表向き、人間やエルフや獣人達に対しては”魔王戦”という人類対魔族の戦乱による社会現象が起きている事になっている。それは実際にそうなのだが、それには人類の知らない事情があって、この現象の裏では魔族界隈──魔界界隈の仁義なきシノギを削る戦いが繰り広げられている。それが『魔王選挙』である。


 魔王選挙は、魔族達の中から魔王を決める、魔族の魔族による魔族のための決選投票。選出には投票権を有する魔族の一般魔族や魔貴族といった上位魔族を含む全ての魔族達からの汚き一票、唾棄すべき侮蔑を込めた一票の多くを勝ち得た魔族が当選して魔王の座に着く。なお、魔族の手にかかり殺された人類種の魂は魔族の所有であるとして、その魂からも一票を徴収することができるのだが、これはなかなか捗らない。──そのことは今はいい。

 今この魔王は自らが取り仕切るこの魔王選挙から魔王選出を決定する開票時間が迫っているのでソワソワしていて、自身の命がそれまで持つかどうかという事も考えると気が気でないのだ。

 なにしろ魔王というものは最後、勇者に討たれるものであり、今この城の内部の異次元的な迷宮を突破する勇者があれば戦って破れて死なねばならない。もっともそれは自己の裁量により「この勇者に敗れるのでは華がない」と思えば撃退して生き残ることもできる。この現世でまだまだ魔王の一柱として君臨し続けることができる。


 だが、──そうはいかない場合もあるのだ。


 人類種を追い詰めすぎると、最後の最後にはとんでもない”ヤツ”が現れる。いかな魔王でも太刀打ち適わぬ強者──”英雄”アファンヌ・リベリオンが現れてしまう。

 この英雄というのは人類種達が俗に言う「大衆を煽動し、領土を膨大に拡張した英雄」「巨大な政権を倒し、新世界の礎を築いた英雄」「諸侯の仲を取り持ち、千年の平和をなしえた英雄」──などという英雄とは、趣を異にしている。そいつは英雄という語感にはそぐわないかもしれない存在なのだ。


 人類が魔界に屈し、全てを滅ぼされかけたとき────或いは全く滅ぼされてしまったときであっても、その英雄は魔王の前に”すぐに”現れる。


 それ故か英雄アファンヌという存在は決して現世の人類に知られることがない。

 だが、この現世世界の成立以来、魔界が膨大な魔力を注ぎ込み実力で捩じ伏せようと試みてきたが勝てた試しが一度もない、魔界と魔族の仇敵なのである。。

 だから、もしその英雄アファンヌが魔王を倒しに来るとしたら、この魔王の命もそこまでに違いなかった。

 それはこの巻き角の魔王にとっては困るのだ。魔王選挙の主催者である彼が選挙結果を見届けられぬまま現世を去ることになってしまう。魔界と魔王にとって一大事業である魔王選挙は魔界界隈にとって大変な人気のある催しであるから、中止になるなんてことは許されない。こんな大きな事業を失敗したら魔界界隈でどれだけ干されるか分からない。魔族は人気が全てだからだ。いかに人類を怯えさせ、魔神や魔族を楽しませるかが腕の奮いどころ──その結果として世間から最大の罵倒と称賛を浴びた魔族を新たな魔王の座に据えて脚光を浴びさせるのは、魔界と魔族達にとって自分たちの魔性を肯定される大切な瞬間を提供する栄誉があるのである。


 魔王は死んでも事業は成功させなければ魔王とは言えない。邪智暴虐の誉を冠する魔族の長とは言えない。

 だから魔王にとって、今が人類をいじめる匙加減の難しい瞬間というわけなのだった。




「……にゃ、そうですけど、結局たくさん殺しますよね魔王様。勇者さんのことも、お仲間も……」


「うん。オチはそうなんだよ。それが大団円っていうか、お決まりの定番──鉄板だからね。まあ、皆んな弱いからさ、余が動くと勝手に死んじゃうし……それに、”パーティー”だから。パーティーを舐めてはいけない。必ず盛り上げないといけないんよ」


「あ、ゲゲリエさんお亡くなりになりましたよ」


「────え?──え?……えちょ、……早すぎ……嘘……?………一緒に頑張ろうって言ったのに……ゲゲリエ先輩──」




 魔王が大切な矜持を胸に改めているところの耳へ急に投げ込まれた訃報は堀の深い顔立ちをキョトンとさせてしまったが、やがて魔王は、落ち着き払ったようにゆっくりと席を立つと、ただ窓の向こうを眺めた。

 巻き角の魔王の先輩魔王である魔王ゲゲリエは、共に魔王戦を盛り上げる仲間として協力してくれた数少ない魔王仲間。そして、ウダツの上がらない魔貴族達から因果を吸い上げる目的で作り上げた”魔王になる会”の立ち上げにも尽力してくれた尊敬すべき先達である。この魔王戦を捧げる大魔王ポッ・ポロに目をかけてもらい、やがて出し抜くために手を組んだ仲間──。


 立ち尽くす巻き角の魔王の脳裏に、魔王ゲゲリエとの楽い思い出が鮮やかに蘇る。

 一緒に人間達の街に遊びに降りて安宿に寝泊まりし、廃墟巡りをしては廃れた祭壇に左遷した魔貴族を配置するなどして遊び歩き、人間達こだわりの風習とその歴史の変遷に納得がゆかず激論を交わした日々。

 魔石肥料の品種改良結果の観測に各地の露店で味付けの濃いファストフードを食い歩き、その二度と再現できない味と機会の一期一会に別れを告げる辛い日々。

 地形に剥き出した断層から採集した魔石を研究しり、新たな魔石の植石による魔界因子頒布研究の結果から魔族の将来を危惧して肩を落としたやり切れない日々。

 山奥にある野盗の根城を巡って魔道具を強奪したり、犯罪組織の賭場を荒らし回って所場代を徴収したり、風俗街でサキュバスをいじり壊して出禁になったり、魔薬を買収して売人組織ごと魔族にしたり、──そんなこんなで道中で出会う幼気な健康優良不良少年少女に快楽と魔力を与え魔族勧誘に勤しんだ日々。古代の人草達が残した遺跡を盗掘して呪物や神宝をパクったりした。気に入らない眷族の干渉する人草の政治家達の黒歴史を巷に流しまくって政権交代させた。弱小な眷属神の干渉する人類組織を折伏しゃくぶくして魔神に帰依させた。やりすぎて裏宇宙界界裁判にかけられた鉄火場も共に生き抜いた。


 だけどそうして”あがり”の大きな魔領に喧嘩をふっかけては奪うのを繰り返し、魔王に昇格する手順マニュアルを一緒に作ってきたのだ。

 志を同じくする所のある巻き角の魔王と魔王ゲゲリエは、共にこの世界に濁悪じょくあくなる革命を起こそうと抗い続けることに青春を燃やしていたのである。

 地表人類社会の滑稽かつ表面的分離性を有する性格性を作った天眷達の考えに違和感を感じるあまり「一方的に支配するこんな世の中じゃ──」って毒づいて、神々への謀反もいとわず共同で聖神界へ質問状を送ったりした。

 そしてなによりゲゲリエは巻き角の魔王の価値観を変えた、この世界の禁忌の紹介制会報誌『異世界☆通信』の存在を教えてくれた。その先輩が────




「────……」




 やがて歩き出した魔王は椅子に掛けてあるマントを羽織ると戸棚へ向かい、あちこち引き戸を開けたり閉めたりして何やらゴソゴソしている。そして額縁に入った一枚の絵画を取り出してきた。先輩であり同僚の親しき友、魔王ゲゲリエを描いた肖像画である。




「なんで先に逝っちゃうかなぁ……」


「にゃ、もう飾るんですかぁ? 」


「うん。魔王軍大本営の伝統やもん」


「うわぁ! そっくり! 」


「うん。これはね、アルティレイズ大合衆国で有名な人草の画家を呼んで描かせたんだ。オルスチャン・ナッスンて奴。知らん? 」


「わからないです」


「アハハッ! 」




 猫人のメメンは即答だったが、オルスチャン・ナッスンはこの星で現在最も有名な画家である。優秀な画家に格式ある魔王軍の伝統的な遺影となる肖像画を描かせるのは大切なことで、無論この絵はゲゲリエ存命中にオルスチャン・ナッスンを対面させて描かせた油彩画だ。画材の絵具には高価な魔石顔料がふんだんに使われており「え」も言われぬ肉感が肖像から醸し出ている。


 実際、オルスチャン・ナッスンの評価は社会的に高い。世界各地で個展と称する絵画販売会を開いては何気なく会場へ訪れた客に高額な絵画を購入してもらって莫大な富を築いたにもかかわらず、オルスチャン・ナッスン自身は寡黙な画家として日々の画業に黙々と勤しんでいる。蓄えた富はというと作画に使う以外は人にくれてしまうらしく、衣食住は後援者が勝手に世話を焼いている。その腕は確かなもので、美麗かつ夢のある印象的画風の評判は芸術家連盟の画壇から永世殿堂入りの太鼓判を押されているくらいだ。

 ただし、巻き角の魔王がオルスチャン・ナッスンに魔王ゲゲリエの肖像画を描かせた時のナッスンは無名であった。




「懐かしいなあ」




 巻き角の魔王の脳裏には、昔日せきじつのことが目の前のことのように浮かんでいる。

 それはある日のこと──オルスチャン・ナッスンが一人黙々と山裾の原野にキャンバスを立てて絵を描いていると、近くの空を飛んでいた巻き角の魔王はその画業を遠目に見て目を見張った。

 いや驚いて激怒していたのだ魔王は。オルスチャン・ナッスンは真昼間の野山の原風景を前にして筆をとっているくせに、キャンバスに描かれているのはイルカとかお星様とかがキラキラ飛んでいる絵なのである。それで「怪しからん」と因縁をつけた巻き角の魔王がナッスンを魔王城へ拉致して急遽ゲゲリエ先輩を招き対面させて描かせたのがゲゲリエの肖像画なのだ。

 一見これは巻き角の魔王による理不尽な振る舞いに思えるが、しかし魔王の中ではそれは歴とした客人の招致であり、魔王を一瞬でも怒らせたオルスチャン・ナッスンへの称賛なのである。


 巻角の魔王はゲゲリエの肖像画を壁に飾った。ゲゲリエも面長で鼻筋の通ったイケメンだが、肖像画の中の彼は微妙な表情である。ニヒルな笑顔が今は悲しげに見えた。そもそもこの肖像画は死後に飾られることを前提に描かれているからかもしれない。先代の魔王達の遺影を飾られるのは魔王の伝統に則る栄誉だが、楽しい現世を去るのに魔王だって未練が残らないかというと嘘になるだろう。

 壁には他の魔王の肖像画が大小270点も掛けられており、それらは現世の不在を意味している。巻角の魔王は腰に手を当てて絵画を見渡し、ゆっくりと歩き、どういう感情からか、無言で頷いた。


 猫人のメメンはというと、そういう巻角の魔王の表情や仕草を見ていても気持ちが分からないでいるが、なんだか写真を飾るのが楽しそうに見えているらしくて魔王のあとをチョロチョロついてきている。




「……へ〜……わ〜……。あれ? でも、生き返りますよねぇ、皆さん」


「あーでもゲゲリエさんの場合は〜、ん〜たぶん30000年は後かな、復活は。せっかく仲良くなったのに。バンド組もうって練習してさ……ベース担当だったんよゲゲリエさん。ライブの予定も……まあギター担当の魔王が急に抜けたから足りなくなっちゃって無理だったんだけど。……あ〜なんで皆もっと協力してくれないかなぁ……魔王仲悪すぎ……こんなに大きな渦が出来そうなのに──」


「渦ですか? 」


「うん。戦場は今、死の渦だろ? ああやって渦を作るとね……たくさん収穫できるからね、魂ってやつが。因果の巡りも良くなるから、魔石とかももっとたくさん採れるようになる。魔界企画の決済も通りやすくなるし、魔界因子を添加した魂を現世に生まれ出る人草共の魂に割り当てる比率が増えるから、魔界的には──これは予定された因果投機で────」


「……」



 

 巻角の魔王は存外、ゲゲリエの死を悼んでいる。魔王とはいえ仲間と会えなくなるのは寂しいものなのかもしれない。ということが、淡々と仕事の話を語り出した巻き角の魔王を見ているメメンには察する事ができた。

 魔族は魂剥き出しの命ともいえない命を有する存在であるが故に現世で死ねば消滅してしまうのだが、膨大な魔界因子を有して魔神からの分魂を得ている魔王ともなると、ただ死ぬという現象すら世界の”ことわり”の通りにはならない。魔王という、魔神の眷属の立場であるからには、自分が自由に死んで消える権利すらないのである。

 魔族の長である魔王たちは表宇宙であるこの現世で死ぬと裏宇宙の”あの世”の魔界に控えている自分の分身『魔霊』が拘束されてしまい、当分は現世の魔界企画に関与できなくなる長い長い魔界勾留生活を過ごさねばならなくなる。その間、存命中に働いた魔業の数々について詳細な事実関係の確認や出来高から評価される階位の上下など諸々の清算と因果業務をこなさねばならないのだが、新規的な現象の変化の乏しい裏宇宙での孤独な勾留生活が魔王にとってどれだけ暇で苦痛かは存命中には想像もしたくないほどのものである。

 巻き角の魔王もしばらくしたら死んでそうなる可能性が高いのだが、そんな死後のことを不安がっても仕方がないというものだろう。まして他人であるゲゲリエ先輩を哀れんでもどうなるものでもなかった。それは無論、猫人のメメンになど測るべくもない。




「にゃ、僕もう行きますね」


「おお? うん。バイチャ」


「は〜いばいば〜い」




 猫人の少年がさっさと場を辞して去るのを笑顔で見送った巻き角の魔王は、大きな背中をうんと背伸びさせてから部屋の隅を振り返った。

 この魔王軍大本営最上階の片隅に位置する窓辺の客間には、猫人の少年の他に、いま一人の客人がいたのである。部屋の床の中央から隅へと飛び散る血液の先に寝転がっている人物がそれである。寝転がるというより倒れ伏して気絶しているのだが、それが目を覚ましたらしくて身じろぎしている。猫人の少年が急に去ったのはこれを察したためだろう。これから起こる惨劇を目にしたくなかったのかもしれない。もっとも、この客人を魔王のもとへ案内したのも猫人の少年なのだが。

 客人は未だ床に伏したまま、巻き角の魔王を目端で見上げている。




「……」


「さて、……あーめっちゃ楽しみ……英雄アファンヌが来るかもしれない。その前になんとかしないと──って、えっと〜、君、名前なんて言ったっけ? … …勇者──……? ……」


「……フッ……」


「……?  お?  なになに?  何笑ってんの?? 」




 伏したまま気丈にも魔王を睨む勇者が鼻白むように笑ったのが意外で、巻き角の魔王はついおどけて見せた。名前をド忘れしてしまった魔王を嘲る笑いか、さっきくらった張り手一撃で死にかけた自分を蔑む笑いか、意識が回復するまで放置されていた状況が滑稽で笑っているのか、なんだろう。

 人草達の時折見せる”意外性”を尊ぶ魔王としては回答が気になるところだ。ぜひともおもろい種明かしであってほしい。




「貴様……魔王にしては小物だな。」


「──」


「俺の知る魔王はもっと──」


「あーーはいはいはい。言いたいことはわかるよ?  でも魔王にもいろいろあるんだよ。お前らにもあるだろ? 家業とかそういう事情……ッウェーイ!!! 」


「ぅッぐ! ゲッホ!! クソが…………ッ」




 魔王と魔王を比べるなんて最低。そういうのは人間の最も醜悪な性癖だ。まさかこんな差別を人間の勇者からかまされるなんて思ってもみなかった巻き角の魔王はつい歩み寄ると、立ち上がろうとする勇者の腹へ足先をぶち込んでいた。歩きつつ(蹴っちゃダメ)って自分に言い聞かせたけど無理だったのだ。発作のようなものである。だがまた気絶されては困るし死なれてもあれなのでしっかり加減はできている。




「うん。じゃあ余のプランを聞いてもらっていいですか」


「……? 」




 唐突である。直前の魔王の苛立った様子も魔王の事情とかいう言葉も何の脈絡も無い台詞せりふに勇者は呻きを堪えていぶかしんだ。

 魔王の態度の急変はどういうことであろう。

 これは、勇者が困惑するのも無理はないのだ。魔族とか魔王とかいうのは突拍子もない事をして人類に急な選択を煩わせるのが常であり、それに翻弄されるのが人類なのである。

 勇者は根性でなんとか膝をついて立ち上がったものの、魔王が何を言い出すかは見当がつかない。魔王征伐にきた勇者を殺さずに捕らえて生かしておく理由が。




「あのねーー。まずさーウチさー、これから人草共にテコ入れするんだよ。いやまあずっとテコ入れしてるけども。」


「…………」


「人草共は気づいてない奴多いと思うけどさー、もうすぐ星が飛んでくるんだよね。この星のすぐ側を流星が。」


「………………」


「毎日降ってる星とは全然違う星なんだよそれ。で、まあその星は受け入れるらしいんだけど……でもあれ星っていうか……?  ……あーいいわ。これ一旦そういうことにしといて。うん。」


「……………………」


「でー、そうすると新しい要因がこの星の色んな事に少しづつ組み込まれて更新されていくから。それがさ、人草共の間で流行ってた病気? とか薬とか動植物……生物のウンタラカンタラがいろいろアレして、最終的に人草共がこう、グア〜っと変化していくのね。時間ってやつを使って。で、星も変わると。極端に言えばね。人草の君には思いもよらないだろうけど」


「…………………………」


「なんだけどー、それ余がもらっちゃおうかなーって思うんだよね。すごくない? 」


「……………………………………」


「あ、思い出した。勇者ソニー・ツィゴネル・ポローだ! じゃあソニーくんで。」


「……………………………………………………」




 勇者ソニーには巻角の魔王の言いたいことがわからない。わからないが、魔族の、魔貴族達の、その上の魔公爵達を束ねる魔王というのは人類達には解らない知識があり、世の中の影でなんやかんやと悪巧みしている存在であることを勇者は承知している。それが魔族にとっては悪巧みではなく、魔族が生きるために必要な生産活動であるという、決して人類とは相入れない価値観の違いも。


 魔族と人類とは価値観が多分に真逆である。人間が隠避することを魔族は尊び、人間が感謝することを魔族は唾棄して忌み嫌う。

 人が人を殺すことは法律で禁止されなくても「やってはならない」事として通常なら避けるところを魔族は「神聖な行為」として奨励する。

 人が人を生かし助け合うことから抱く「ありがたい」という感謝を魔族は「哀れ」「あほ」「ありえない」の3Aとして非常にがっかりする。


 この二例だけでも人と魔族が分かり合えないのは明白な上に、魔族は基本的に人類の人体を常食として食すから絶対に仲良くなれないのだ。

 だから、人類の勇者の一人であるソニーには、魔王の言うことがなんであれ、その価値観を理解できないに違いなかった。

 そんな勇者をよそに魔王はやや俯きつつ淡々と”プラン”を語り続けている。




「でさ、そうするとさー、たぶんさー、余の眷属めちゃくちゃ増えると思うんだよね。そしたら魔石とか因果の収穫もヤバイ事になるし、魔界での階位がスゴイ事になるからさー。もしかしたら権限とかも……聞いてる? ソニーくん。」


「……………………………………………………………………俺をどうするつもりだ。魔王ベニベニ!! 」


「うん。あ、そうそう、まだ自己紹介してなかったか。魔王ベニベニです。以後よろしく。でね? あのねー、君も魔王にならない?  魔界の籍に入ってしばらくは使徒として走り回ってもらう事になるけど。魔石の生産ライン確保とかさ。インフラとか重要なポジションにいきなりはあれだけど。でも君の場合は勇者からの魔界入りなんでー、いきなり魔貴族だね。そーだな〜魔侯爵の一段目からかな。で、功績に応じて階位がトントン上がっていくから。ゆくゆくは魔王だね。あ、持ち込みの因果があればそれなりのポストの用意もできるよ?  そうすれば魔王の地位に就くのもグッと早まるから。うん。」


「こ」


「まずは簡単な仕事から廻すから。とりあえずさー、まず樹海に集まった帝国の人草共を煽って欲しいんだよね。皇帝の顔に泥塗って犯罪者に仕立ててよ。企画部がもうプラン立ててるからそれに沿って動いてくれればいいから。でさ、仕事終わったら一旦あの〜〜とりあえず東の大陸にでも渡って隠れててくれる? この大陸は北の極点を移乗するから、もう人類は避難しないとね。凍結しちゃうんで。あっ!この後ちょっと選挙結果とかゲホゲホッじゃなくてそろそろお客さん揃うし余そっち行かなきゃなんで予定押してて悪いんだけど、ソニー君は手続き済んだらすぐ動いて欲しいのね。」


「こと」


「ぶっちゃけさ、君が死んで後の世にまた勇者として転生してもさ、あ、分かる? 転生とか。いや死んだらわかる事なんだけど、人類が魔界発の魔法企画に頼ってる限り、この星の地表人類たちの因果の巡りはどうやっても大して変わらないんだよね。勇者がなんか魔王征伐とかって頑張っても掌の上だから。正神界との共同企画だから神々の眷属神達も俺たちの取引先なんだよ本当は。虚しくない? 本当の意味で世界に変化を起こしたいよね? わかってもらえると思うんだけど。だったら一度、魔族になって魔王を目指した方が建設的だよね」


「ことわ──」


「あ、あのね、魔籍に入るっていってもそんなに構える事ないよ……うちの派閥はあの〜魔王の余がこんな接客みたいな事してるくらいだから部下たちもそんなに忙しくないし、皆んなけっこう休みも多くて。寿命長くなるからね、魔族になると。フフッ!  あ、これ、僕んとこの魔神様との契約書です。ここに血判と、その横に血でいみなを……それから悪魔三唱と意気込みの宣誓を──」


「──断る! 」




 一方的に捲し立てる魔王ベニベニへ勇者ソニーはきっぱりと断りを入れた。

 すると魔王は意外そうな顔をしている。まるで断られるとは全く思っていなかったかのようなキョトンとした顔で目を丸くして口をすぼめている。彫りの深く目鼻立ちの整った彫刻のような顔立ちがこうも変形するのは相当な心の動揺を表しているかに見えるのだが、どうなのか。


 勇者ソニーは魔王ベニベニから勧誘されるなんて思いもよらなかったし、魔王が今言ったような世界の様式を知らない。転生とか神々の企画とか因果の巡りとか魔族のあれこれとか、ほとんど初めて聞く話ばかりだ。

 勇者の知るこの世界の様式は、魔王と勇者は殺しあうものという事である。世界は古より常に、魔族と魔物に生命を脅かされる人類が奮い立って魔王を討ち倒そうと団結する事を繰り返してきた。

 そんな間柄の天敵に語りかける言葉など不要だろう。

 いつ抜き放ったのか片手青眼に構える勇者の手には軽やかに宝剣が握られている。細身の剣だが神々の祝福を受けた曇り無き刃の威圧はただ事ではない。

 切っ先を向けられた魔王にその剣の煌めきが見えていないはずはないのだが、しかし魔王は手に持つ契約書が既に断ち斬られて床に舞い落ちている方へ視線を泳がせている。




「……え?……え?…………あのー……じゃあ君はさー、何のためにここ来たの? 」




 魔王の困惑が虚しく零れる間、踏み込んで得物を振るう勇者ソニーの撃剣は魔王を深々と突き刺して横薙ぎに抜き払い幾度も斬りつけてどす黒い黒血で床を闇のように染め上げてゆく。

 これが勇者ソニーの答えなのだ。大軍が激突する魔王戦の渦中に加わらず魔王城に突入した勇者選抜隊『幻示録十二士決死隊』の目的は言わずもがな魔王征伐に他ならない。魔王さえ倒せば、魔王旗下の魔族達は消滅する。その干渉する魔物達もまた姿を消す。魔王1柱を討伐するだけで世界から魔界の魔の手を大きく削ぎとることだができるのだ。世界に魔王が何柱いようとも人類は必ず何某かの魔王を討ち倒して束の間の平和に文明を発展させてきた。そのための討手に人類の中から頭角を表す勇者が魔王を倒せないなどということはない。まして勇者選抜隊の中からただ一人、魔王ベニベニの元へ辿り着くに至った勇者の中の勇者がその運命の局面にあることは揺るぎないはずだ。


 勇者は魔王を追い詰めて戦い、魔王は勇者の手によって討ち果たされる。

 それが古来より繰り返される歴史の型なのだから。

 その主役が今回は勇者ソニー・ツィゴネル・ポローだったというだけのこと──


 「えッ!?」──と、唐突な声を上げたのは血塗れの魔王の方である。それが斬られたことに驚いた声なのかなんなのか、飛び退いた勇者は油断なく魔王の挙動を伺うがよくわからない。

 ほとんど頭から石油をかぶったみたいに黒血で真っ黒のドロドロになっている魔王ベニベニに、宝剣で斬り付けられたことによる生命力の減衰が無さそうなことは勇者には分かっている。

 魔王ベニベニの巨体から噴き出す黒いものは血液と見紛うがそうでは無いだろう。

 そもそも魔族に人類のような”命”というのは、おそらく無い、ということがこの世界の魔族との抗争の研究史からわかっている。魔族は魂剥き出しの生命体なのだ。因果の凝り固まった魂そのものが肉身として顕れているのが魔族ではないか。魔界に喰われた人類の魂の──


 であればその内部から噴き出すこの液状の漆黒をいくら吐き出させてもキリが無いに違いなかった。魔王ほど魔界因子を孕んだ存在から疲弊するほど魔力を失わせるのにこのような方法では程度がしれている。

 魔族討伐のコツは魔族の心臓を砕くことである。

 それは左胸には無い。

 右胸にあるのだ。


 柔らかな細胞の塊などではない、魂の因果の結晶たる魔石──”魔石結晶”、その魔王の”魔王石”が。

 だがそれは最初の刺突で在所が無かった。

 体内を移動しているのならばと全身を斬りつけたが手応えは無かった。

 ただただ黒いものが溢れるばかりで、それが床を埋めて、今は足の踏み場もなくて────




「────!! …………」




 気がつけば勇者は闇の中に立っている。

 そこにただ白く浮かぶように立つ魔王ベニベニの巨体だけがある。


 魔王の結界──死の間合いに入った。


 そう悟ったソニーが剣を必勝の作法に七度ゆらゆらと振り動かして右目横の八双に構えたとき、魔王が異なことを言ったので固まった。「じゃあ”さっかー”しますか。知ってる? ”さっかー”」──”さっかあ”とは、何か? その疑問に脳裏が一白の空白を白んだ瞬間、ソニーは血反吐を撒いて吹き飛ばされている。

「お前ボールな」とも言われた気がする。魔王の言葉が遅れて聞こえてきたものだが、さっかあとはつまりボールを蹴る行為を指すことか。




「ぐっぅ!!! ゴぶッ!!!!!! 」


「ッゴール!!! ッッッゴーーールルルッッ!!!!! ああ゛っ!? どうすんだ!!! 断ってどうすんだよッッ!!! ぁあ"ーッ!!?? 余がこんッなに頼んでんだろぉがッ!!!! 謝れよ!!!!! ああ”ッ!!!?? テメ勇者だろうがッッ!!! 誠意見せろやッッッ!!!!! 」




 見下ろしつつ勇者の腹を執拗に蹴たぐる魔王の「ゴール」という言葉の語彙を察すれば、それが点数を競う競技かとも勇者ソニーには辛うじて理解が及んだかもしれないが、ソニーはもう白目を向いていて聞いている風ではなかった。

 サッカーがこの世界とは違う別の異世界の競技であるということをソニーが知っていれば、魔王の戯言に動じることはなかっただろう。

 このように人類の知らない知識をちらつかせて動揺を誘う魔王ベニベニは確かに小賢しい魔王なのかもしれない。

 だが、魔王ベニベニにとっては、勇者との対峙は所詮ほんのお遊びという事なのである。

 魔王選挙投票結果の開票、その当選者を、現在は空位である13の魔王の座へ新たに新人魔王達を加えるという一大事業の締めくくりの前には、些末な格闘に過ぎないという事なのかもしれない。

 そうして新規の魔王を輩出し続ける事で何が起きるのかを彼は期待しているのだ。現世を魔界が支配し続ける事で神々が止むを得ず施す最後の一手を。

 

 闇の結界の消えた窓辺の客間で魔王は幾つもの薄い冊子を広げて覗き込んでいる。

 『異世界☆通信』

 そこに書かれた様々な事象の記述は決して嘘ではないのだと、魔王は信じている。

 だから彼は世界を脅かし続ける。

 人類が滅ぶか滅ばないかの具合でずっとずっと苛め続ければきっと何かが起こると。

 世界の停滞を打ち破る異分子──異世界召喚されたまれびとがやってくるんだと。









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 というわけでだな、人草のまれびと達よ。ブブゼラスである儂は地球と呼ばれている星に住む人草達にわかるように、こうして日本語訳で物語ってみたわけだが、うまく伝わっただろうか。

 先に言っておくが、この短編の主体となる本編小説を読んでいない者には儂のことが分かるまいからこの項を読まずに無視してかまわん。


 さて、これはこのバベルステルニャの星に保管されているレコードの一部でな。先日こちらに遷移してきた人草の個体、あれがウロウロしていた廃城に籠城していた、かの魔王ベニベニの気まぐれをちょっとだけ覗いてみたところを紹介してみたのだ。


 勇者ソニーは寿命の短い人草の身の上で地表各地の大陸を渡り歩き、各所の魔王戦を三度戦ったほどに強豪なのだが、魔王ベニベニの前では為す術もなかったのだ。”サッカー”なる魔王の遊戯で”ゴール”らしき腹ばかりを散々に蹴られたソニーはその勇ましい撃剣も虚しく気を失ってしまった。

 無理もない。他の魔王ならばいざ知らず、魔王ベニベニは出生からして毛色が違うのだ。ベニベニは元は魔神と神聖魔女の密会でできた子でな。それで生まれつきの魔神にも関わらず冥界から三界の八潮路にあるサンズ河へと星流しにされたのだが、それを舟遊びしていた女神アルテモーエが拾い上げて養育してしまったことで神々から特殊な扱いをされる我が儘な魔族王子として育ってしまった。その縁組故に彼は正神界へのパイプがあり、営業力、企画力があり、仕事も早く、気さくで人気がある。その上、裏宇宙からの入力である流星を奪おうとする野心まで持っている。すでに大魔王候補に名の上がっている逸材だ。


 実際に彼の牽引する企画は因果の収穫量で群を抜いていて、魔界では新進気鋭の若者でな。今回の魔王戦でも魔石と生贄と契約の三奉さんぽうを駆使して多くの因果を巻き込む”渦”を拵えた。魔王ベニベニの指揮により直参の魔公爵達は難なく魔界のノルマを達成しただろう。他の魔王共が足を引っ張る画策をも引き離してな。


 ベニベニが自ら開示した通り、魔王達にとってこの魔王戦は実のところ魔王の選挙戦でな、新規の魔王を輩出するための魔界の企画なのだ。数多いる魔族の中で「一番ひどい魔族を決めようぜ」という企画なわけだな。その当選枠が十三もあることは奇妙に思われることかもしれないが、まあ今は気にしなくてよろしい。ともかくこの事は地表人類は預かり知らぬ秘密のイベントで、魔族界隈だけが盛り上がっておる。


 さて、猫人の少年メメンのようなフラフラしている野良猫が魔王と懇意であるらしいのは意外に思えるが、それがそうでもない。メメンは眷属業をほぼ放逐されており、誰の派閥でもなく働きもしない人畜無害な穀潰しだが、それが故に可愛がられる一面もあるのだ。

 魔王ベニベニがメメンの無遠慮なところを単純に気に入っているように、似たような理由で気を置かない歓談を求める者達に招かれて、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと、ちょっとした小間使いをしては菓子だのジュースだのと頂戴するのだ。それで腹と気分を満たしておる。これらは裏宇宙では貴重な──まあそれはいい。

 長くなるのもアレなのでこの辺にしておこう。




挿絵(By みてみん)


この短編は本編幕間の挿話です


<--異世界観測媒体☆日本人☆ミューテーション-->(仮題)(旧題:魔王を倒してサヨウナラ)

https://ncode.syosetu.com/n9595hc/


よろしかったらこちらの本編もどうぞ〜

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