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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第2章:異世界の人々との出会い

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閑話:新たな野望

その男、ランダル公爵は苦々しげに報告を受けていた。

報告の内容は、バイズ辺境伯及びその領地バイズ辺境伯領についてだ。


「・・・・・・ではなにか? 先の遠征の最前線に立っておったのにもかかわらず、損害は見当たらず、領地は賑わい潤っておると?」

「・・・左様で、ございます。ラシアール王国とクライスの大森林が接する場所は全てバイズ辺境伯の領地でありますが、森の魔獣はもちろん、それ以外の魔獣の被害も減少しているとのことです。また先の遠征の結果、取り潰しなどにより廃れた各貴族の旧領地から、商人や冒険者などが多くバイズ辺境伯領に移住しているようで、経済も発展しております・・・・・・」

「・・・・・・・・・うーむ」



ランダル公爵は、子飼いの者に、バイズ辺境伯に関する調査を命じていた。

現在、その報告を受けているのだが、その内容は彼にとっては、面白い内容ではなかった。


ランダル公爵は、先のクライスの大森林に向けた遠征には、自身の兵は出していない。

しかし、レンロー侯爵らの魔除けの魔道具開発事業に多く出資していた。

そのため、先の遠征の結果、魔除けの魔道具が失敗作であると確認されたことで、かなりの損失を出したのである。

他にもレンロー侯爵の派閥の貴族に金を貸しており、見事に死亡し取り潰されたことで、それらはいずれも貸し倒れとなったのだ。


その一方で、同じく遠征に関わったバイズ辺境伯の領地が潤っているとの報告は、腹立たしいものだったのだ。



「・・・・・・他に報告は?」

「はっ! 2点ございます」

「・・・うむ」

「1点目は、バイズ辺境伯領の騎士団についてであります。領主の屋敷や領都にある重要な施設を警備している騎士団の装備が、最近更新されております。それ自体は珍しいことではないのですが、新しい装備がどれもかなり高品質であると思われるのです」

「・・・・・・どういうことだ? 騎士団に良い装備を与えるのは当然であろう?」

「はい。ですが、それまでの装備と比べて数ランク上の装備を身に付けているのです。それに、装備の更新が行われる少し前に、領都に店を構える武具の職人が集められ、領主の屋敷にある工房で働いていたとの情報もございます。それらを合わせ考えると、何らかの良き素材を大量に入手し、騎士団の装備に使用したのではないかと思われるのです」

「・・・・・・なるほどな。だが、良き素材とは? それをどうやって入手したのだ?」

「・・・素材が何であるかは不明であり、推測の域をでません。しかし入手経路について、2点目の気になる点が関連致します。バイズ辺境伯の屋敷に、奇妙な来客があるのです」

「奇妙な来客?」

「はい。2、3週間に1回のペースで若い女性であったり、執事のような格好をした男性であったりが訪問しているのです。いずれもスレイドホースと思われる立派な軍馬に乗り、他にも数頭の馬に大きな荷物を載せてくるのです」

「・・・つまり、その訪ねている者らが、良き素材を提供していると? 何者なのだ?」

「・・・それが、特定には至りませんでした。屋敷を出たところから尾行したのですが、男性には撒かれてしまいました。一方で女性の方は気づかれることは無かったのですが、行き先を特定することはできませんでした。というのも、クライスの大森林に入っていったのです」

「・・・・・・なん、だと?」


ランダル公爵は、自分の耳を疑った。

この男は、私を謀っているのか?と怒鳴りたくすら思った。

しかしこの男は、間諜の中でも特に優秀で忠誠心の高い者であり、そのようなふざけた話をするやつではない。


「間違いなく、クライスの大森林へ入っていったのだな?」

「はい。私が2回、部下が1回その女性を目撃し、追跡しましたが、いずれもクライスの大森林へ入っていきました」



 ♢ ♢ ♢



報告後、いろいろと策を考えた。

バイズ辺境伯領の繁栄に、訪ねてきている者どもが関与しているのは間違いない。

そして、定期的にクライスの大森林とバイズ辺境伯領とを行き来していることから推測するに、そやつらは、クライスの大森林に住んでいる可能性が高い。

そして間諜の話していた「良き素材」は、クライスの大森林に生息している魔獣の素材である可能性が高い。


そんな中、魔除けの魔道具の改良に成功したとの報告が上がってきた。

遠征後、ジャームル王国の複数の貴族と協力し、改良を続けてきたのが実ったのだ。

なんでも、クライスの大森林周辺に生息している比較的強い魔獣に加えて、偶然森から出てきたファングラヴィットにも効果があったとのことであった。

この報告を聞いて、ランダル公爵の考えはまとまった。



間諜の男を呼び出し、指示を与える。


「よいか、バイズ辺境伯の屋敷に侵入し、持ち込まれている魔獣の素材が何であるかを特定せよ。可能であれば持ち帰ってこい。それからこの魔除けの魔道具を携帯し、バイズ辺境伯の屋敷に通っている女を尾行せよ。森の中までな。その女が本当に森に住んでいるのかを確かめるのだ!」

「はっ。直ちに!」



これでいい。

上手くいけば、バイズ辺境伯を叩く強力な一手となる。

先の遠征の時点で、クライスの大森林に住む者と通じていたのであれば、それを報告し、遠征に協力させるのが義務であろう。

それを怠り、あまつさえロップス殿下を死亡させたのであるから、その罪は大きい。

それに貴重な素材を、国王陛下に献上することもなく、自己で利用しているのも立派な背信行為である。

これで、バイズ辺境伯を糾弾できる。


それに証拠を得ることができずとも、クライスの大森林に住むような強者を味方に引き込むことができれば、私の計画において強力な駒となり得よう。

味方にできずとも、素材を売ってくれれば万歳だ。


ランダル公爵は自身の計画が着実に進んでいることに満足しながら、間諜の報告を待つのであった。



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