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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第2章:異世界の人々との出会い
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第82話:ポーラの成長

ベスラージュの子どもはどうやら、ポーラに対しては心を開いてくれたようで、一安心だ。

私たちを警戒して、『アマジュの実』を食べてくれなかった場合は、急いで拠点に戻って、『アマジュの実』のジュースを飲ませたり、レーベルに塗り薬のようなものを作ってもらう必要があった。

それがポーラのおかげで、『アマジュの実』を囓ってくれたので、怪我が治っており、もう心配は無いだろう。



ベスラージュの子どもは、拠点に連れ帰るのだが、親の亡骸をどうするか迷う。

ポーラがベスラージュの子どもに『アマジュの実』を食べさせている間に確認したが、親は既に息をしておらず、身体も冷たくなっていた。

・・・・・・それにしても、腹部に槍で貫かれたかのような、大きな穴が空けられていて、肉も裂かれ中が見えていた。


おそらくだが、別の魔獣に襲われたんだろう。

そして、倒れている木にも大量の血が付着しているし、親の身体の下には、新しい枝や葉が多く下敷きになっていたことから、空中で攻撃を受け、墜落したのだと思われる。

・・・となると、空を飛んでいたこの母親 —フォレストタイガーと同じく、普通自動車くらいの大きさがある— に、攻撃を仕掛けて致命傷を負わせたヤツがいることになる。

それも拠点の近くに。



また拠点の周りを調べないとな、と思っていると、私たちの上空を飛んでいる存在に気がついた。

上を見上げると、以前私に求婚してきた亜竜、ツイバルドが旋回していた。

もしかして、襲ったのって・・・・・・



そう思い、ベスラージュの子どもを見ると、この子もツイバルドの存在に気がついたようで、上空を見上げて、再び戦闘姿勢を取っている。

・・・確定だな。

腹の穴は、ツイバルドのくちばしによるものだろう。



「・・・・・・お前かよ」


そう呟きながら、片付けようとすると、


「コトハ姉ちゃん。私がやる。この子の敵討ち」


そう、ポーラが私の腕を引っ張り、言ってきた。

その目は、これまでに見たことが無いくらい真剣で、ツイバルドを睨みつけていた。



「任せるのはいいんだけど、ポーラは上空のツイバルドに攻撃できるの?」


そう、ヤツは現在、上空を旋回している。

多分、自分が撃墜したベスラージュの親子を食べに来たら、見知らぬ存在を見つけて、どうするか迷っているのだろう。



「大丈夫。最近、『ストーンバレット』と『風魔法』の合わせ技の精度も威力も上がったから。あの高さなら、当てられるよ!」

「・・・分かった。無理そうなら、私がやるからね?」

「・・・大丈夫!」


ポーラはそう言うと、ベスラージュの子どもに向かって、「私が敵を取ってあげるからね」と優しく頭を撫でながら伝え、ツイバルドに向き直った。



ポーラは、自分の前に2つの石弾を生み出した。

石弾は縦長の八面体で、それを高速で横回転させ始めた。

回転させるときにも魔法を発動していたので、『土魔法』で操っているのではなく、『風魔法』で風を当てて回転させているようだ。


そして旋回するツイバルドを睨みつけ、ゆっくりとタイミングを計りながら、狙いを定めている。

ツイバルドは、私たちが亡くなったベスラージュを食べているとでも思っているのか、待っている感じだ。

ヤツは結構大きいが、その大部分が2本の首と、大きな翼が占めていて、身体の部分はそれほど大きくはない。

ベスラージュは大物だし、墜落場所は狭い場所なので、ヤツが戦うのは難しい。

無理に争わずに、私たちが去るのを待っているのだろう。



その判断が命取りとなった。

ポーラが、2つの石弾を同時に発射した。

発射された石弾はそれぞれ、正確に2つの首の先、顔部分に命中した。

私が以前仕留めたときのように、身体の半分を爆散させることもなく、2つの顔を的確に破壊し、ツイバルドは地面に落下した。

カイトが確認してくれたが、2つの首の先が無くなり、死んでいた。





「お見事」


そうポーラを褒めると、嬉しそうにしながら、


「私はコトハ姉ちゃんみたいなバカ火力は無いから、正確性と一度に複数の弾を当てる練習をしてるの!」


そう教えてくれた。

・・・バカ火力って。否定できないけど、なんか心にくる・・・





ベスラージュの子どもを、ツイバルドの死骸の場所へ連れて行くと、子どもは複数回吠えた後、噛み付いた。

そして、少しして、ポーラの元へ戻っていった。

子どもは、まるで感謝を表しているかのように、ポーラに頭を擦り付けていた。





考えた結果、ベスラージュの親の亡骸は、焼いた上で埋めることになった。

そのまま埋めると、寄生虫が住み着いたり、アンデッド化したりするおそれがあるらしく、焼いた方がいいとカイトが主張したからだ。



カイトに穴を掘るのを任せて、ポーラがベスラージュの子どもに、説明するのを見る。

ベスラージュの子どもは、親が死んでいることは知っているようだが、まだ受け入れられていないのか、ポーラの側にいながらも、時折悲しそうに、亡骸を見ているのだ。



「・・・これから、お母さんを埋葬するからね」


そうベスラージュの子どもに伝えると、なんとなく意味が分かったのか、悲しそうに「クゥゥ」と鳴いて、亡骸に駆け寄った。

そして顔を数回舐め、頭をこすりつけると、再びポーラの側へと戻った。

そして、私を見ると「クゥン」と、今度は少し力強く、鳴いた。

どうやら、受け入れてくれたみたいだ。



『土魔法』で、スロープを作り、親の亡骸をカイトの掘った穴へと引っ張っていく。

スロープはかなりツルツルに作ったが、親の亡骸は重く、結構大変だった。

結局、マーラたちにも手伝ってもらって、穴に入れることができた。

それから穴に入った亡骸に、『火魔法』でできるだけ高温の炎を作りだし、火をつける。


亡骸に火がつき、焼かれていく。

私はその前で、膝をつき、両手を合わせて目を閉じた。



少しして火が消えると、その上に土をかぶせて、埋めていく。

穴を埋めると、墜落時に折れたり落ちたりしたであろう、葉や枝を穴のある場所にかぶせて、目立たないようにしておく。

これで、掘り返される心配も無いだろう。



これで、埋葬も終了だ。

サクッとツイバルドの死骸から、魔石を回収して、こちらも燃やしておく。





そうして、ここでやるべきことが終わると、ポーラが、


「私と一緒に行かない?」


と、ベスラージュの子どもに話しかけた。


ベスラージュの子どもは、ポーラをジッと見つめ、「クゥン!」と元気よく吠えた。

その瞬間、ベスラージュの子どもの足下に、あの魔法陣と黒い光が出現した。

『適合化の魔法陣』だ。


驚いたが、レーベルの説明で意味を知っているからか、慌てることもなく、魔法陣の光が消えるのを待つ。

ベスラージュの子どもも落ち着いて、ポーラを見つめている。


少しして光が消えると、ベスラージュの子どもがポーラに飛びついた。

ベスラージュの子どもは大型犬サイズ。まだ子どもだが、ポーラでは抱き上げることができないサイズだ。

ポーラは尻餅をついているが、嬉しそうに頭を撫でている。


そして、


「あなたの名前は、シャロンね!」


そうポーラが伝えると、シャロンが了承の意を示し、再び黒い光が現れ、ポーラに目がけて収束していった。

無事、シャロンはポーラの従魔になったようだ。




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