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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第1章:異世界の森で生活開始
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第35話:ジュースを作ろう

拠点に帰ると、空いているスペースで、カイトがレーベルと特訓している真っ最中だった。

せっかくなので、声を掛けずに、特訓を見学する。


カイトは『身体強化』を使っているようで、ジャンプして跳び上がり、レーベルの背後をとろうと、動き回っている。

レーベルは、カイトの動きに合わせて、向きを変え、常にカイトの正面を向こうとしている。


カイトは、このままでは埒が明かないと思ったのか、今度はレーベルに向かって踏み込んだ。

レーベルが身体の向きを合わせる前に、懐に入り、レーベルの左脇腹に、右ストレートを撃ち込もうとした・・・

が、レーベルはそれを読んでいたのか、カイトのパンチを左手でいなして、そのままカイトの右手首を掴み、自分の方に引き寄せ、カイトの鳩尾に右手でアッパーカットをお見舞いした。


カイトは後方へ弾き飛ばされ、転がって、「参りました」と、降参した。

『身体強化』が切れているようだ・・・


「カイト! 大丈夫!?」


思わず、そう叫んでしまったが、カイトは大丈夫そうだ。

むしろ、悔しそうにレーベルを見つめている。


「お姉ちゃん。お帰りなさい。見てたんだね・・・」

「ええ。帰ってきたら、ちょうど2人が戦ってたから」

「・・・そっか」

「お帰りなさいませ、コトハ様」

「ただいま、レーベル」


レーベルは私に挨拶をすると、カイトの元へ行き、先程の戦いについて、アドバイスを始めた。

ここで、それを聞いているのもアレなので、私は先に家に入ることにする。

・・・・・・それに男の子が特訓してるのって、あんまり見ちゃダメな気がするのよね。

なんか、カイトも見られたくなさそうだったし・・・・・・





家に入ると、ポーラが氷塊を複数浮かべて、いろいろな方向に動かしたり、回転させたりしていた。


「ただいま、ポーラ」

「コトハ姉ちゃん! お帰りなさい!」

「ポーラは、魔法の練習?」

「うん! 魔法で作った氷の塊を自由に動かせるようにする練習!」


やっぱりポーラの魔法はすごい。

なにがすごいって、その精密さだ。複数の氷塊を、それぞれ異なる動きをさせたり、かと思えば、全く同じ動きをさせたりと、自由自在に操っている。

・・・・・・私は、あんな繊細に動かすことはできない。スピードつけてぶつけることしかできない。


「ポーラはすごいね。そんな繊細に魔法を操れて」

「えへへ。でもね、もっとなの!」

「・・・なにが?」

「もっともっと、魔法の練習して、コトハ姉ちゃんのお手伝いできるようになりたいの!」


・・・・・・泣きそう。本当にこの子はいい子だな。

いや、カイトもだ。さっきの訓練は、ポーラと同じ動機なのだろう。


「ありがとう、ポーラ。そしたら、一緒に練習しよっか」

「うん!」


おそらくポーラにさっきの練習を指示したのはレーベルだろう。

レーベルも繊細な動きとか得意そうだし。

私に教えられるのは、派手な方法と、・・・・・・イメージか。

前世の知識から、攻撃手段や防御手段として、使いやすいものをイメージして、ポーラに見せてあげる。

ただの氷塊より、尖らせた槍や矢のような形状にすることで、与えるダメージは増すだろう。

それに回転を加えることで、真っ直ぐに飛ばすことができ、命中率が上がる。

ポーラは、私ほど高威力の魔法を放てるわけではないが、形状や動きを変えるだけで、攻撃性能は上がるのだ。


それに、防御手段。

私はよく、壁を作り出し、防御に使う。

これは、ポーラも使えることは使えるらしいが、まだ脆い。

私にとってポーラの身の安全は最優先事項だし、まずは、身を守る方法を身につけてもらいたい。

ポーラは、『身体装甲』で身を包んではいるが、鱗に覆われる私とは違い、その下はただの『人間』だ。例えばさっきのツイバルドの刃のような攻撃を食らったらひとたまりもない。




ポーラといろいろ魔法の練習をしていると、カイトとレーベルが帰ってきた。

カイトは、疲労困憊といった感じだ。


「お疲れさま、カイト。レーベルもありがとうね」

「・・・・・・うん」

「いえ。カイト様が強くなりたいと思われるのであれば、お手伝いさせていただくのは当然でございます」


カイトはそのまま、椅子にヘナヘナと座り込んだ。

レーベルは軽くお辞儀をして、食料庫へ向かった。夕食の用意をしてくれるのだろう。


・・・私も試したいことを思いついて、食料庫へ向かった。

食料庫に入ると、レーベルが今日使うのであろう食材を準備していた。


「コトハ様? お食事の用意でしたら私が・・・」

「うん、わかってる。それはお願いね。私は私で試してみたいことがあってさ、『アマジュの実』をいくつかとってくれる?」


そういって、レーベルから『アマジュの実』を受け取った。

私が作ろうとしているもの、それは『アマジュの実』の果汁を搾ったジュースだ。

レーベルの食事の用意には、まだ時間がかかるし、特訓で疲れているカイトやポーラに、冷たくて甘いジュースを飲ませてあげたいと思ったのだ。


とはいえ、ジューサーなんて、便利なものはない。

そこで、『アマジュの実』を細かく切り分けて、圧力を掛けて潰し、果汁を搾ることにした。

『アマジュの実』を、『水魔法』で洗い、フォレストタイガーの牙で作った包丁で刻んでいく。

・・・できたら金属の包丁が欲しい。

刻んだ『アマジュの実』を『土魔法』で作った樽のような形状の入れ物に入れる。

この入れ物には、下部の1カ所に穴が空いている。その穴には網のようなものを付けてある。これで、入れ物の中に刻んだ『アマジュの実』を入れて、上から押しつぶすことで、『アマジュの実』の果汁を搾ることができるはずだ。

まあ、効率は悪いだろうし、絞り残しは出るだろうが、素人の作った間に合わせだし、しょうがない。


入れ物に空けた穴の先には、似た形の別の入れ物を設置しておく。こちらは、少し小さめで、穴は空いていない。

穴の空いた入れ物に『アマジュの実』を入れ、その上に『土魔法』で板を作って、置く。

そして、板を上から押してみたが、力がなさ過ぎて、あまり果汁が絞れていない。


そこで、両腕と両脚を『竜人化』させ、押し込むことにした。

入れ物が壊れないように注意しながら、板を上から押していくと、果汁がどんどんと出てきた。

少し飲んでみたが、甘くて美味しい。成功だ。


溜まった果汁をコップに入れ、『水魔法』で氷をいくつか浮かべて、カイト達のもとへ持って行く。


「2人とも。『アマジュの実』でジュース作ってみたんだけど、飲んでみない?」

「ジュース?」

「果物を搾った飲み物だよ」


そう言って、2人に差し出すと、2人は嬉しそうに飲んでくれた。


「おいしいよ、コトハ姉ちゃん!」

「・・・うん。すごく美味しい。それに、なんか疲れがとれた気がする」

「大袈裟だよ・・・。でも、喜んでもらえて良かったよ」


そう、喜んでくれたことに内心ほっとしながら答えると、


「大袈裟ではないかと。『アマジュの実』には、怪我を治す効果や、病気を治す効果、疲労を回復させる効果がございます。それに『アマジュの実』には魔素が多く含まれます。カイト様やポーラ様が、『人間』にしては、魔力量がかなり多く、魔素に対する親和性も高かったのは、『アマジュの実』を日常的に摂取していたからなのですね・・・」


レーベルにそう言われた。

『アマジュの実』ってそんな効果もあるのか・・・


よく考えたら、『アマジュの実』についてちゃんと調べたことはない。

2人の怪我が治ったのを見て、薬みたいと思った程度だ。

一度、きちんと調べてみる必要があるかもな・・・




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