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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第7章

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第332話:新領都

領都を移す先として、森の中というのに木々がなく、魔獣・魔物が寄りつかない不気味な土地の調査を始めてあっという間に1か月が経った。といっても、最初の数日で移転先は決まり、後は移転先の調査及び周辺環境の調査だったけど。


魔獣・魔物が住み着かず、木々も生えない理由。それは、父が建造したお屋敷にあった。

お屋敷の地下にある台座の上に設置された巨大な魔石。後に確認したところ、この魔石は父の肉体を制御していた魔石だという。

その魔石から放たれる父のオーラは、この地を魔獣・魔物の脅威から守ってきた。



お屋敷が地上へとせり上がり、騎士団のみんなの度肝を抜いたところで、さっそくお屋敷の全貌が調査された。

私が『龍族の王女』に至ったことは、レーノやアーロンといった幹部のみに伝えてある。

騎士たちに伝えても、そもそも私が理解できていない状況で、余計な混乱を招くことになると判断し、父との邂逅も話してはいない。

『龍族』は既に地上から姿を消しており、今の私はクルセイル大公で、コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイルなのだから。

まあ、次に姿を現した時に考える。依代とやらに憑依すれば、自由に動き回れるのかもしれないし。そうなれば、隠すことはできない。なんか、あの父だと、いろいろ動き回ってはしゃぎそうだし・・・


結果、このお屋敷は国王が住むお城だといっても差し支えのないほどに、大きく広く、そして壮大だった。

『レフコタートル』という魔獣の甲羅を素材にしたという石材は、長い時間を地中で過ごしたというのに、劣化することなく、美しい白色を輝かせていた。

お屋敷の内部は、アーマスさんのお屋敷のように、この世界の貴族のお屋敷の感じ。まあ、部屋の数が多いことに加え、各部屋や廊下が都度広い。『龍族』としての父の基準で作ったわけではないのだろうが、今を生きる人たちにとってみればデカい。特に天井が高いのだ。

まあ、あくまで「広め」の範囲なので問題はないのだけれど。


ベランダや私たちが中に入ったガゼボ改め塔は多数。

他の塔は地上に出ていなかったように思えるけど、どういうカラクリなんだろうか?


もっとも、直ちに利用できるわけではない。

今あるのは、いわば完璧な箱であり、内装の類は皆無。ベッドもなければ、机も椅子もない。

お屋敷の周りを囲う防壁も必要だし、主に騎士団関連の設備も作りたい。



そんなわけで、新都建設に向け、お屋敷の整備が始まった。

同時に、この地を新たなクルセイル大公領の領都ガーンドラバルとすべく、都市計画や周辺の調査も並行して進められている。


完全な更地に都市を造るとあって、レーノを筆頭に文官組はやる気十分。

私やヒロヤたちも、できる限り前世の知識を活かして暮らしやすい都市作りを目指している。建物を建築すること自体は魔法のおかげであっという間なので、今は慎重に都市計画を行っている段階だ。五月雨式に都市が広がれば、機能性と景観を兼ね備えることは難しい。だからこそ、きちんと計画を立て、一気に作り上げる予定だ。


私はキアラとともに外壁班に身を置くことが多かった。都市全体を囲う強靱な防壁は、この魔境の中で都市を造り暮らす上では必須。

ただ、これもまだ防壁作りには着手していない。

お屋敷の中央にある魔石に流し込む魔力の量を調整することで、父のオーラが及ぶ範囲、つまり魔獣・魔物を寄せ付けない範囲をある程度は調整できることが判明したのだ。

現在更地なのはお屋敷を中心に半径1キロメートルほどだが、その範囲を拡張できそうというわけだ。もっとも、いたずらに巨大な都市を造っても持て余すので、レーノたち都市計画班の計画が完成するのを待っている状態になる。

今は、いろんな壁を魔法やら魔獣の素材やらで作り、耐久性のチェックをしている。キアラの作る壁もかなりの強度を持つようになったものだ。


一番過酷なのは騎士団だろう。

この地に住むということで、当然周辺の調査が必要になる。周辺に暮らす魔獣・魔物は、私たちの脅威であり貴重な食料にもなる。

北へ行けばこれまた調査未了の洞窟がある。その調査と並行して、南側へ調査範囲を広げていた。

その結果、大きく2つのことが判明した。

まずはこの地より北側。こちらに、お馴染みのウサギや虎が多く生息していた。一般には危険な彼らも、うちの騎士団にとっては日々行う狩りの獲物に過ぎない。

この地に移住しても、問題なく肉や素材を手に入れることはできそうで一安心だ。


一方で、問題だったのは、あるラインを超えた先の魔獣・魔物の強さだった。

具体的には、領都予定地の南を東西に流れる川を越えた先。この川は、領都よりかなり南西に進んだところにある湖を源として、東の海へと流れ出ている。湖の水源は湧き水らしい。


いくつかの支流がこの地の近くまで流れてきているのだが、本流となる川 —発見者の名前をもじってクメン川と名付けた— を渡り南に下ると、これまで対峙してきた魔獣・魔物を凌駕する強力な相手に遭遇した。

最初に川を越えた部隊は、所属していた騎士ゴーレム10体を犠牲にして、命からがら逃げ出してきた。重傷を負った者もおり、我が領騎士団創設以来の衝撃だった。


これまでクライスの大森林に住む危険な魔獣・魔物の代表例として恐れられていた『ファングラビット』や『フォレストタイガー』は、うちの騎士団にとって最早強敵とはいい難い。もちろん、舐めてかかっていい相手ではないが、必要以上に警戒する相手でもなかった。

そんな敵を多く相手にしてきたから、騎士団に油断が生まれたのだろうか?


だが、これは誤りだった。

一報を聞いて、カイトと一緒に騎士団を襲った敵の調査を行った。

その正体は、『アーマーアント』。鎧に覆われた大きなアリだった。


 ♢ ♢ ♢


『アーマーアント』

硬い外殻と大きな顎が特徴のアリ型魔獣。

女王を中心に、巣の内部で活動する“サーバント”、巣の外で活動する“ソルジャー”からなる群れをなす。

ソルジャーは強力な酸を放ち攻撃する。


 ♢ ♢ ♢


硬い外殻も大きな顎も、そりゃ大きなアリなんだからと思ったが、ちょっとレベルが違った。

魔法武具である騎士たちの剣を簡単に弾き、傷一つつかない外殻。魔法で攻撃してみても結果は同じ。

これまでに発見された有効な攻撃は、とにかく大きな岩を落として圧殺する方法、顎の中央、つまり口の中に矢や『石弾』を撃ち込んだ方法の2つだけ。要するに騎士団は外殻の破壊はできていない。


そして顎。

とにかく力の強いこの顎で、進路上にある岩だろうが木だろうが破壊し、一直線で突進してくる。この森の木ってかなり硬いんだけどね・・・?

その力は、騎士ゴーレムの大盾をひしゃげさせるほどのもので、1体が盾を破壊し、もう1体が脚を噛み千切るといった具合に、騎士ゴーレムが次々と破壊されていった。


そう、アリは女王を中心に、群れをなす生き物。

大きさは私の知っているアリとは比べものにならない、というかソルジャーは全長が2メートルくらいあるのだから、アリと呼ぶのも違う気がするが。

そんな馬鹿デカいアリが、5体ほどで徘徊していたのだ。

最初に遭遇した部隊は、よく死者を出さずに撤退できたものだと思う。


私は一応、外殻を破壊することはできた。とはいえ、周囲への影響無視の馬鹿火力で、巨大な石弾を叩き付けて爆散させたのが1回と、溶けるほどの高火力の火球をぶつけて文字通り跡形もなく溶かしたのが1回。どちらも、騎士団から戦力外を言い渡された。


とはいえ、手痛い敗北を喫した騎士団の動きは速かった。

直ぐさま、『アーマーアント』と遭遇した騎士たちから入念な聞き取りが実施された。

その上で、防御重視で騎士ゴーレムを前に出し、おとりにすることで『アーマーアント』を徹底的に観察した。もちろん、おとりに使った騎士ゴーレムの多くは大破するのだが、そんなものは必要経費なので許可を出した。

騎士団が安定して、安全に『アーマーアント』を狩る日も近いだろう。

ちなみに、『アーマーアント』の硬い外殻は、想像以上に軽く、強固だった。少し加工が難しそうだが、優秀な防具になるとドランドが張り切っていた。その意味でも、騎士団には期待だ。



 ♢ ♢ ♢



新領都の建造や調査はまだまだ途中、というか始まったばかりではあるが、今日は我が領にとって一大イベントが控えている。


「・・・来ました!」


空に舞い上がり北の空を見つめていた『ヤリュシャ族』の戦士、今は騎士の1人が声を上げる。


その声から遅れること少し、1体の『赤竜』が現領都の上空へ飛来し、その背から4人の『ヤリュシャ族』の騎士が飛び降りる。


私の前に来て跪く4人。

私が報告を促すと、


「はっ。後5分ほどで到着いたします。受け入れた数は453名です」


と報告してくれた。

思ってたより数が多い気がするが、カイトにはその辺の判断は任せてある。

そう、ジャームル王国からの難民たちが、我が領へやってくるのだ。



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