表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

355/358

第329話:父親

私、カイト、ポーラ、キアラ、インディゴ、ホムラ、そしてレーベルに向けられたゴーレムの光。その意味は分からない。

とはいえ、何かしらの意味はある。

加えて、光を放っているゴーレム以外の3体が、揃って軽く腰を曲げ礼をするかのように、右手をガゼボに開いた穴、このゴーレムたちが出てきた場所を指し示している。


「・・・とりあえず、行ってみる?」


どうせ反対される。そんなことは百も承知で、ひとまず提案してみる。

もちろん、


「駄目です」


アーロンに却下される。すぐ横ではボイルが首を振り、第1中隊の連中を中心に、同調する者多数。

まあ、分かってた。光で指された私たち以外が近づこうとすれば、丁寧な姿勢から一転、剛健なハルバードの槍先を突き付けられる。つまり、騎士たちが同行するのは不可能。

もちろん、倒してしまうという選択肢はあるが、まあ悪手も悪手。

とはいえ、この場所の調査に来たというのに、明らかに調査すべきこの先を無視して帰るわけにもいかない。第一、私たちが指された理由が知りたい。


「・・・いや、ごめん。行く」


アーロンを真っ直ぐ見つめ、伝える。


「・・・・・・コトハ様。いえ、承知しました。我々は中に入れないようですので・・・」

「騎士ゴーレムは?」


そう思い、近くにいた1体に近づくよう指示を出す。


「ガチャン」という音を立て、再び槍先が向けられた。


「難しいようです。・・・本当に行かれるのですか?」

「うん。ここまできて、スルーはない。どう考えても何かあるでしょ、ここ」

「・・・だからこそ、コトハ様が行くことには反対なのですが・・・。ですが、選択肢がないことも承知しております。お恥ずかしながら、本来、コトハ様には護衛は必要ないともいえます。それに、先ほどの光を見るかぎり、ホムラ殿もご一緒されるのでしょう?」

「うん。ホムラ、来てくれるよね? それにレーベルも」


光が指したメンバーだと、強いのはホムラとレーベルか。


「もちろんですわ。それにここは・・・」

「御意に・・・」


ただ引っかかるのが、先ほどからこの2人。どうも変な感じ。

この建物やゴーレムを見て、なにかを考えているような・・・


「では、コトハ様とお二方で?」


そうしようかと思ったところ、


「姉上、僕も行きたいです」


カイトが言い出す。現在は作戦行動中と言うことで呼び方もこっち。うん、寂しいねぇー・・・


「姉様! ポーラも!」


そうなると続くのはもちろんポーラ。

最近はカイトを真似してか、私のことを「姉様」と呼んだりする。同じく寂しさはある一方で、「姉様」はちょっとかっこよく感じたりもする。


「おか・・・、母上、僕も!」


ポーラが立候補すれば続くのはインディゴ。

「お母さん」呼びから「母上」呼びへ。これについては寂しいとかではなく、慣れない。責任を持って育てるつもりではいるが、母になった実感はまだ無い。



結局、光が指した全員で中に入ることになった。ちなみに、カイトが入る以上、キアラは当然一緒にいる様子だった。

カイトとキアラはともかく、ポーラとインディゴについては、やはりアーロンとボイルが難色を示した。

2人がある程度戦えることはさておき、まだ幼い。インディゴは、うちに来て十分な食事や剣術などの運動、しっかりと睡眠をとることで、すくすくと成長しているとはいえ、まだ5歳。そりゃあ、心配にもなる。


とはいえ、光が差した理由も分からない中で、あえてこのメンバーが指された。

いろいろ考えた結果、全員で入ることになったのだ。



 ♢ ♢ ♢



私が最終的に決めたことに異は唱えないまでも、やはり不安そうなアーロンやボイルたち騎士を背に、ガゼボに開いた穴の中へと歩を進める。

私たちが近づくと、光を指したゴーレムが先導するように前に出た。最後尾にもう1体が続き、残りは階段の入り口を守る様子。


後に続いていけば、どうやら階段が続いている。

真っ暗な先に若干の恐怖を感じつつも、先導するゴーレムの後を続く。


階段は螺旋階段になっているようで、下を覗いてみてもどれだけ深いのかは正直分からない。

ただ、階段を降りていくのに合わせて、壁に設置されていたランプのようなものが点灯し、足下を照らしてくれた。

誰も触れていないのだから、手動で火をともしたわけではないだろうし、魔法だろうか。



進むこと少し、螺旋階段の終わりが見えた。

階段が終わり、扉のようなものが見える。開け放たれてはいるが、扉自体もかなり豪華な装飾が施されている。


「姉上。ここは一体・・・」


同じく気になったのであろうカイトが声をかけてくる。


「分からない。けど、お屋敷に見えるよね」

「・・・はい」


レーベルがいろいろやってできたクルセイル大公家の屋敷。

前世では見たこともないような規模の屋敷だが、どこか雰囲気が似ている。そういえば、以前訪れたアーマスさんのお屋敷や、王城も同じ雰囲気。


実物を見たことはないが、大理石のような白く綺麗な石で作られた床や壁、天井。扉は金属のように見えたが、鉄のような乱雑な感じではなく、どこか圧倒される美しさがあった。



お屋敷の中を進んでいる。これは、進むにつれて確信に変わった。

螺旋階段を降りた後は、扉をくぐり廊下のような場所を進んだ。同じような扉が左右に複数あり、そのうちの1つの中に入る。

その先には、今度は普通の階段があり、同じく降りていく。

既に、6階層くらいは降りたのではなかろうか? さっきのガゼボから進んできたのだから、ここは相当深い場所になるはず。


やがて、一対の、これまた異常に豪華な門が見えてきた。


「カイト」

「どうしたの?」

「ここってさ、お屋敷、だよね?」

「・・・そうだと思う。

「お屋敷の中に、門があるの?」

「・・・・・・みたい、だね」


どうやらカイトにも分からないらしい。そして、前にあるのが門であることは共感を得られた。私の目がおかしいわけではないようで安心した。


門の前に到着したことで、これまで私たちを挟むように先導していた2体のゴーレムの動きが変わった。

門の両サイドへ移動し、ハルバードの下の先、石突を地面に突き立てる。白い石と強くぶつかり、「ガキンッ」と鋭い音を立てた。


次の瞬間、大きな門扉が、ゆっくりと開き出す。

見えてきたのは、


「魔石?」


門の先には半径10メートルほどの空間が広がり、中にあるのは1つだけ。

中央に台座のようなものが置かれ、その上に大きな、いや巨大な魔石が置かれている。


よく見ると台座から若干浮いた状態で、時計回りに回転しているようだ。

それ以外は何もない空間。周囲はここまでと同様に真っ白の石で覆われ、それなりに高い天井で覆われた、円形の空間。


ゴーレムたちが中へと促すので、ゆっくりと中へ入る。

おそらく、ここが目的地。

この部屋で目指す場所といえば、目の前の魔石付きの台座しかない。


そして、魔石に近づくと、


「っ! みんな、警戒して!」


魔石が目映い光を放ち、そして明滅する。

咄嗟にホムラが私たちの前に出たが、結局魔石は光っただけ。

そして、


「・・・あれは」


魔石の光が一点に収束する。

放射状に放たれた光が集まり、やがて1つの形を作り出す。

それは、人型。だんだんと形作られ、そして、


「娘よ!」


そう、叫んだ。



 ♢ ♢ ♢



魔石から放たれた光が収束し、形取られた人型。

その人型は、どうやらいい年のおじさんを見せていた。

全身が白光りしているので、髪の色や髭の色は不明。身長は190くらいはあるか?


・・・・・・いやいやいや。そこじゃない。問題は、そこじゃない。

思わず無視しているが、どう誤魔化そうにも、この男、私のことを「娘」って呼んだよね!?


「・・・ええっと、初めまして?」


とりあえず、返してみる。

カイトたちは状況がつかめず混乱した様子だし。いや、私もだけど。


「そうであるな、娘よ!」


うん、私が「娘」で確定だ。

いやいやいや。はい?


「私が、あなたの娘、ですか?」

「うむ。そなたは、儂の娘であるぞ。のお、レーベルバルド」


そういって、目の前の男はレーベルへ問いかけた。


「は?」


思わずそう発した私に対し、レーベルが、


「まさか、再びそのお姿を拝することができようとは・・・」


レーベルは感激した様子で呟き、そして跪いた。


「レーベル、この人って・・・」


レーベルが再会を喜び、跪く相手。そして、私を娘と呼ぶ。

レーベルは、私の魂と融合した卵を守護することを、ガーンドラバル・クルセイルという『龍族』最後の王から命じられていて・・・


「はい。コトハ様のお父上であらせられます、ガーンドラバル・クルセイル様でございます」


間違いなく、父親だった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ