表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

354/358

第328話:謎の建物

特に問題も起きずに野営を終え、翌日、目的地に到着した。


「これは・・・」


鬱蒼とした森の中、突如、視界が開ける。

全くの別世界かと感じるほど、全く木が生えていない。地面の様子は、それまでの森と変わった様子はないし、私の目にはただの土に見える。


「コトハ姉ちゃん!」


目の前の様子に驚いていると焦った様子のポーラとインディゴが走ってきた。


「どうしたの?」

「シャロンが! シャロンが変なの!」


そういって心配そうに視線をやった先では、どこか落ち着きがなくキョロキョロした様子で、目の前に広がる空き地へ近づき、飛び退いて離れてを繰り返している。

だが、より様子がおかしかったのは他の従魔たちだった。


「おい、どうした!?」


いつもは雄々しい馬たちの様子がおかしい。マーラたち私の従魔のスレイドホースはそうでもなさそうだが、スレイドホースと軍馬との子が中心となっている馬たちが酷く怯えた様子で、森へ引き返そうと身体を動かしている。馬車に繋がれている子たちでさえ、無理にでも馬車を動かして方向転換しようと動いている。


そして、『ワーロフ族』が駆るオオカミ型の魔獣『ユーテ』。彼らもまた、もの凄く警戒した様子で、森へ戻ろうとしたり、背に乗る戦士に何かを訴えかけたりしている。



明らかに様子がおかしい従魔たち。とはいえ、何か敵がいるわけでもない。

『魔力感知』で念入りに探ってみたが、結果は同じ。強いて言えば、この場所は森の中に比べて魔素濃度が濃いくらいだろうか?

私よりも魔力の扱いに長けたホムラに確認してみても答えは同じ。


「魔獣のみが嫌がる何かがある?」


そうなるとホムラが反応していないのも気になるが、ホムラは厳密には魔獣ではなかったと思うし、そういうことか?

うーん・・・

それに、反応している魔獣、従魔の中でも反応に差があるわけで・・・。その差はおそらく、私との関係にあると思う。私の従魔であるマーラたちはあまり反応せず、ホムラも反応しない。

シャロンが反応しているのは、ポーラの従魔だから? けれど『ユーテ』たちとは違い、私との関係は深い・・・



 ♢ ♢ ♢



しばらくの間、外縁から中の様子を窺っていたが、やはり何か魔獣・魔物がいるわけではなさそうだ。

この場で留まっていても話は進まない。従魔たちの反応から移住地としてはかなりのマイナスだが、その原因が分からないのも気持ちが悪い。

というわけで、最初は反応を示していた従魔たちも次第に落ち着いてきたこともあり、中に入ることにした。


「騎士ゴーレムを円形に配置しろ!」

「別働隊の準備だ!」


騎士団長アーロンたちの指示が飛ぶ。

土地が広いため、中心を目指して進む私たちの他に、外周を調査する別働隊を2つ出すことになる。


ビークルから次々と降車し、騎士の指示で配置についていく騎士ゴーレムたち。

獣人族の戦士たちも、当然騎士ゴーレムは見たことがあるし、何なら日々訓練の相手として戦っているわけだが、実戦に投入される様子には驚いているようだ。



「コトハ様。準備、整いました」


アーロンが準備完了を伝えてきた。


「よし、それじゃあ出発。・・・あ、そうだ。別働隊の隊長は・・・、オックスとウィークだっけ?」

「はっ」

「は、はいっ!」


別働隊を率いる2人の曹長に声をかけると、オックスはキリッとした感じで、ウィークはめちゃめちゃ緊張した様子で返事をしてくれた。


「2人とも、安全最優先で。少しでも危険を感じたら直ぐに合流して」


この場所に何かあるのは間違いない。

調査は必要だし、広さから隊を分けることも理解できるが、無理をすることはない。


「はっ」

「はいっ!」


やはりそれぞれ雰囲気の異なる返事を受け2人を送り出す。

曹長1人に4人の騎士と5体の騎士ゴーレムからなる分隊2つが、それぞれ左右に分かれてこの広大な土地の外周を進んでいく。


2人を見送り、


「それじゃあ、私たちも行こっか」

「進軍する!」


本隊も出発する。



私たち本隊は、ひとまず中央へ向けて進んでいる。

騎士ゴーレムが大きな円を描くように展開し、その内側に騎士、更に内側に私たちがいる。

落ち着いた馬や『ユーテ』を駆る騎士や戦士たちが、遊撃隊として、円を出入りしながら周辺を警戒している。

騎士と騎士ゴーレム、そして戦士を合わせた数は100を超えており、かなりの大所帯になっている。


私たちはかなり警戒した上で進んでいるが、幸運なのか残念なのか、会敵する気配はない。

いや、そもそも何もいない。

実のところ、私たちが恐れているのは魔獣・魔物ではない。いや、警戒はしているが、本当に警戒しているのは、この場所の得体の知れなさ。

人により生活した長さに違いはあれど、みんなこの森で暮らしている。特に騎士たちは、日々森で魔獣・魔物との戦闘を繰り広げている。そんな私たちにとって、木が生えていないだけでなく、魔獣・魔物の気配すら感じられないこの場所は、もはや恐怖の対象ですらあった。


とはいえ、ここを調査することを決めた。

まあ、獣人族からここの話を聞いたときには、ここまで不気味な場所だとは思わなかったが・・・

もっとも、なぜか私の中には「大丈夫」との確信に近いものがあった。これまた全く説明のできない、不思議な感覚。けれど、この場所自体が私たちに害をなすものではないことが感じ取れるのだ。



進むこと1時間ほど。進んだ距離は1キロ少しくらいだろうか? 地面の変化がないか、何か生えている植物はないか調べながら進んできた。それにしても、かなり広い土地だ。

前後左右を見る限り、この場所の中央に近づいたと思う。ここから見える周囲の森の様子は等距離に見えるし。


「騎士団長!」


先頭を進む隊から声が上がった。


「全隊、止まれぇー! 周囲を警戒しろ」


アーロンの声が響くと同時、部隊が停止する。

アーロンと2人の騎士が声を上げた先頭の隊へと向かう。何か見つけたのだろうか?


少ししてアーロンたちが戻ってくる。


「コトハ様。建物を発見しました」

「は?」


建物?

こんななんもなさそうなところに?


「はい。一応、柱があり屋根があるようです」

「・・・とりあえず、案内して」


アーロンについてその建物に向かう。

先頭の隊の場所に着くと、確かに建物というか建造物が目に入ってきた。

白い石か何かで作られているのであろう。6本の柱が円形に並び、上にドーム状の屋根がある。ガゼボのような、オシャレな庭園にある休憩場所のようなものだろうか?


「・・・なに、あれ」


答えを期待したわけではない。そもそも、誰も知らないであろうし。


何はともあれ、この場所で最初に見つけたものだ。

この場所の調査に来た以上、無視はできない。


にしても謎すぎる。理由はともかく何にもない方がよほど分かりやすい。

明らかに意思を持って建てられたそれは、この場所を訪れた何者かの存在を示している。それも、ある程度高度な知能と技術を持った、何者かの。



 ♢ ♢ ♢



「何も分からない、か・・・」


ガゼボ(仮)自体やその周辺を騎士たちが捜索したが、特に情報はなし。

石で作られているのだろうということ、この場所がほぼ中心に近い場所であるということくらいしか分からなかった。


一応、安全が確認できたため、私たちもガゼボに近づく。

綺麗なものだ。ただ、違和感しかないのは変わらない。


変化は突然だった。

ゴゴゴゴォという音を立て、ガゼボの地面が割れた。いや、床がスライドした?


「コトハ様、お下がりください!」


私たちの護衛につくボイル少尉が叫び、騎士ゴーレムたちが前に出る。

騎士たちが剣を抜く。


緊張が走ったが、床が動いた以外には何も起こらない。ここからではよく見えないが、どうやら地下に続く空洞があるように見える。

そんな空洞の奥から、足音のような音が響いてきた。


「全員、警戒しろ」


アーロンの声で、騎士たちの緊張が増す。


出てきたのは、人型の何か。2足歩行で歩く、4体の『半竜人』?

いや、


「ゴーレム?」


これまで何体も作ってきた私には、ゴーレムだとすぐに分かった。

騎士ゴーレムと姿形は似ているが、翼と尾がある。右手にはごつい武器、槍と斧が一体となったような、確かハルバードという武器を持っている。


「防御態勢。早まるなよ」


アーロンの指示で、騎士ゴーレムが盾を構え前に出る。

その後ろに騎士たちが続き、相手の動きを警戒する。



だが、特に動きはなかった。

出てきた4体のゴーレムは、2体が開いた床の前に立ち、もう2体がガゼボから出てきた。

ただ、出てきたところで、立ち止まった。

盾を構える騎士ゴーレムとの距離は10メートルほど。こちらを見ているが、動かない。


膠着状態になるのかと思いきや、突如、前に出ている片方のゴーレムの胸部が開いた。

中には宝石のような綺麗な丸いものがある。ゴーレムであるのなら魔力電池か頭脳となる魔石だろうか?


何が起こっているのか分からず、相手の動きを待つしかない状況。

そして、胸部の宝石が明滅し、複数の光を放った。


「コトハ様!」


そのうちの1つが私に向けられ、ボイルが射線上に入り、私を庇おうとする。

待って、と声を出す前には、射線を切っていたが、幸いにも攻撃ではなかった。


一瞬騒然とした騎士たちだったが、次第に、放たれたのがただの光だと気づく。

あの光には魔力をほとんど感じなかった。だからこそ、私には攻撃でないと分かっていた。速度も遅かったし。

騎士たちの行動は、本当にありがたいものだけど・・・、やめてほしい。いや、彼らからすると当然なのか・・・。カイトやポーラ、キアラ、インディゴの近くにいた騎士たちも、それぞれ身を挺して光から庇おうとしていた。


落ち着いて確認すると、ゴーレムの胸部から放たれたただの光が、私、カイト、ポーラ、キアラ、インディゴ、ホムラ、そしてレーベルの胸を指していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ