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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

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第327話:調査隊

『ワーロフ族』たち4種族の里より更に森の奥に広がるという広大な土地。

なぜか木々がなく、魔獣・魔物も近寄らない。


4種族・・・、4種族って呼ぶのもなんだかなぁ・・・

前世の物語とかを参考にすれば、まとめて『獣人族』と呼称することになるのだと思うけど。ひょっとしてこの呼び方は、彼らに不快な思いをさせるのではないだろうか?

とか少し考えたが、私は『魔龍族』だしカイトとポーラは『人龍族』。インディゴは『半竜人』だし、そこまで大差ないか。

念のためオプスに確認したところ、オプス自身も自らが人とオオカミ系統の魔獣の特徴を合わせ持った存在であると認識し、むしろ誇りに思っていた。


てなわけで、懸念は解消されて『獣人族』。

彼ら『獣人族』がその開けた地に寄り付かなかったのは、底知れぬ不気味さと、森の方が安全だったから。

いかんせん、倒せない魔獣に遭遇してしまっても、どうにかその土地に逃げ込めば助かるというのだから。これだけ聞くと、安住の地にも思えるが、森の中でポツンと異色の場所があれば警戒するのも無理はない。

それに、魔獣・魔物が近寄らない理由も分からない中、突如押し寄せる可能性だってある。

総合的には森の中が安全・安心だったとのこと。



「調査隊は、騎士団第1中隊の選抜メンバーに加え、『獣人族』のそれぞれ戦士が参加します。推定される距離から、少なくとも一晩は野営が必要だと思われますし、魔獣・魔物との遭遇もあるはずです。せっかくですので、彼らの能力を把握する機会としたいと思います」


アーロンの説明を受け、頷いて了承する。

この土地、これまた呼称がややこしいので「候補地」。候補地をクルセイル大公領の新たな街、というか領都にする案への反応は大きく分かれた。賛成と反対。

賛成派は、候補地の規模や木の伐採が必要ないこと、何より魔獣・魔物が近寄らないということを評価している。

対する反対派は、やはりその不気味さだ。強力な魔獣・魔物が跋扈するクライスの大森林の中で、その場所だけ魔獣・魔物が近寄らないなど、得体の知れない強力な存在が住み着いているか、あるいは呪われているか。


どちらの意見ももっともな面がある。

いずれにしろ、実際に見てみないことには始まらない。

というわけで、調査隊だ。

今回は私やカイト、ポーラとインディゴ、そしてキアラに加えて、レーノも参加する。

レーノが参加するのは、今回の目的が新たな街の建設予定地になるから。文官のトップであるレーノ自身が、場所や広さなどを確認するのが簡便であろういうことで参加が決まった。

レーノがうちに来てからは完全に文官になっているが、元は騎士だ。こっちに来てからも定期的に訓練はしているようで、現役の騎士に比べれば劣るだろうが、十分に森の中でもやっていける。


むしろ、ポーラやインディゴの方が心配だ。

2人が参加するのは私が断れなかったから。主にポーラを。

カイトは次期領主だし、今後のことを考えると自らの目で場所を見ておくに越したことはない。カイトが行くとなればキアラも行く。

キアラは、カイトがガッドから戻って以降、何か変わった気がする。これまでの一歩引いた感じから、カイトの横にあるような、そんな感じ。カイト自身もキアラの変化に気づきつつも、戸惑ってる様子だ。

カイトにしろキアラにしろ他の子たちにしろ、十代半ばで成人と見なされるこの世界のことを考えると、何人かとはじっくり今後のことを話すべきかもしれない。


それはさておき、そんなこんなでカイトとキアラが参加するのはある種いつも通り。

そこにポーラが参加を希望した。曰く、「いつも留守番はつまらない」とのこと。

まあ、気持ちは分かる。王都から帰って以来、領都周辺での狩りを除きポーラはずっと領都にいたわけで・・・

ポーラ自身、日に日に成長していると思う。戦闘面はもちろん、勉強面やマナー面でも、大貴族の令嬢にふさわしいものを身につけている、らしい。私にその辺は分からないが、レーベルたち悪魔族が太鼓判を押し、マーカスやレーノといった外の世界を知る者が頷いているのだから、そうなのだろう。


そして、ポーラが参加することでインディゴが一人残されることになった。

助けた当時に比べてインディゴは私たちから離れることがあっても問題なくなりつつはあるが、おそらく2日以上会わずに過ごすことは難しいと思う。

というわけでやむを得ずインディゴも参加。


その結果・・・


「多い・・・」


領都の南門を出て森を進む隊列。

馬車5台に騎馬や騎狼?がたくさん。そして徒歩組も大勢。

この調査隊には獣人族の能力を見るという目的もあるわけで、『ランサー族』は木を飛び移って移動し、『ヤリュシャ族』は空中から警戒、『ライ族』は隊の四方に配置され魔獣・魔物を警戒している。『ワーロフ族』は相棒の白いオオカミ型の魔獣『ユーテ』に跨がり騎馬隊の一部として配置されている。

加えて、当然元の騎士たちも多い。まあ、一応大公家全員いるし、レーノ含め非戦闘員扱いの文官も何人かいるからね。第1中隊の第1小隊はもちろん、騎士は大勢いる。

騎士ゴーレムは最後尾のビークルに詰め込んでいるので今は見えないが、もちろん連れてきている。


「このまま攻め入るって言っても違和感ない布陣だよね」


思わず出た呟きに、


「ダーバルド帝国を攻撃するときの練習も兼ねてるって話だよ」


カイトが応じた。

そういえば、そんなことも言ってたか。


「それよりも、先頭の2人が心配なんだけど・・・」


カイトの言葉は続く。

まあ、私も同じ心配はしている。

隊列の先頭には、1匹の『ベスラージュ』と2人の子どもが陣取っている。もちろん、シャロンと、シャロンの背に乗るポーラとインディゴだ。

ポーラが日に日にお姉ちゃんになっていくことに若干涙ぐんでしまったのはさておき、久しぶりの遠出とあってやる気十分の2人を止めることはできなかった。


「まあ、大丈夫でしょ。マーカスも近くにいるし。そもそもシャロンがいるし」


もっとも、カイトの心配が別の意味であることは理解している。

やる気十分のポーラとインディゴ。この2人が後れを取るような魔獣・魔物が襲ってくる可能性は低い。まだ幼い2人とはいえ、領内でもトップクラスの戦闘能力を誇るのだ。

心配しているのは、むしろやり過ぎないか。たまに『魔力感知』に魔獣らしき気配を感じたかと思えば、それを遥かに上回る魔力の反応が2人から生じる。大方、過剰な魔法をぶっ放しているのだろう・・・



 ♢ ♢ ♢



魔獣・魔物の襲撃により足止めされることはなかったが、『ワーロフ族』の里を助けに向かった際よりも人数が多く、またあのときほど急いではいないため、当日に到着することはない。当然、野営前提だ。


住んでいた里に近い獣人族の案内で、少し開けたポイントを見つけ、いくらか木を切り倒して野営地とした。

騎士たちが慣れた手つきでテントを展開し、野営の準備をしていく。移動中に狩った魔獣を解体し、夕食の用意をしていく。


「コトハ様。お食事のご用意が整いました」


レーベルの案内で、野営地内に設けられたテーブルにつく。

若干眠そうなポーラと、ほとんど寝ているインディゴを起こし、最低限食事を済ませるように言う。


一般的にはこういった野営中の食事の際にも、騎士団内の序列やら何やらで、出てくる食事の内容や順番に差があるそうだが、うちでは関係ない。

いや、私たちは夜の見張りや周囲の捜索はしないので、その意味では騎士たちに任せている面はあるが、食べているものは同じ。順番も、手が空いた者からだ。


種族関係なく、今日の戦闘を振り返る騎士や獣人族の様子に暖かさを感じていると、ふとカイトとキアラが目に入った。

2人で談笑しながら食べているのだが、なんというか、うん。周りを寄せ付けない感じ?

実際には直ぐ近くに騎士たちの一団があるのだが、まるでその間に分厚い壁でもあるかのような・・・

それでいて、2人の様子もどこか・・・。やはりキアラは少し変わった気がするなぁ・・・


残念ながら私にはこの手の話は分からない。私の過去を考えれば、関わらないほうがいい。むしろ疫病神ですらあるかも・・・?

若いお二人にお任せして、というやつか。



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