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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

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319話:お披露目

〜ラムス・フォン・バイズ視点〜


結局ダンは、オクリド第3王子に明確な返答はしませんでした。


ただ、今回のオクリド第3王子の提案は、同行していたラシャール侯爵だけでなく、元宰相のダーラ伯爵、そして先王の弟である大公がこれを支持していることが分かりました。また、話にあった妹君というのは、ジャームル王国国王の娘で第2王女のエマ様であることも。そのエマ様もオクリド第3王子側に賛同しているらしく、自身のお役目として我が国に来る覚悟をしているとのことです。先王の弟だという大公は、政治的な力こそないものの、権威としては十分。そもそも、この計画の主導者が第3王子であり、合わせれば申し分なし。加えて、現体制派と距離を取る貴族からの支持が厚い元宰相、そして何より第2の都市ルメンを治めるラシャール侯爵。


「勢力的には拮抗、あるいはオクリド第3王子に傾きつつあるといった感じか」


会談を終えた夕食時、ダンがそのようなことを呟きました。


「ええ。少なくとも、我が国が手を貸すとして、オクリド第3王子側の方が話は早いでしょうしね」

「ああ。ジャームル王国への物資の供給ですら先の一件を理由に反対、難色を示す者は多かった。東側の領主を中心にな。明らかな軍事援助となれば・・・」


それぞれの立場で意見を言うのは楽ですが、それをまとめる方となれば・・・

これも我が家が公爵家となった宿命でしょうか。王家になったハールおじさんやダンたちは・・・


「いずれにせよ、このような大事は陛下にお伝えし、ご裁可いただかなければな」


ダンもこれ以上は面倒らしく、持ち帰って丸投げするようです。

まあ、ダンの言うように私たちが決めてよい問題ではないですからね。


「ひとまず、残りの貴族との交渉を済ませましょう。明後日にはコトハ殿がいらっしゃるわけですし」

「そうだな。とはいえ、今回のコトハ殿の件は、交渉することもないんだがな。基本的にあちらの要求を確認するだけだ」

「ええ。こちらは既に恩恵を受けていますからね」



 ♢ ♢ ♢



昨日も引き続き、難民の受け入れの交換条件に勝手な主張を繰り返す貴族たちに辟易としながら、どうにか最低確保ラインには到達することができました。

そもそも、相手の多くは私とは違い、ラシアール王国時代から数えて長い間貴族として家と領を守ってきた方々。色々な考えはあれど、国には逆らわないことは守りつつ、自らの利益を引き出すのに長けた者ばかり。

私の方が、無理を押していることも合わせれば、及第点でしょう。


何はともあれ、押し寄せている難民への対処の目処が立ちました。

ダンの方も、必要としていた数の戦力は確保できたようです。

昨日の情報を交換しつつ、少し遅めの朝食を済ませた頃、クルセイル大公領からの一行がガッドに入ったとの情報が入りました。

時間を見て、屋敷の正面に向かいます。


「さっきの話だと、また凄い隊列らしいが・・・」


ダンの言うように、報告ではクルセイル大公領の一行は、かなり大きく頑丈そうな馬車が5台にスレイドホースと思われる屈強な馬に乗った騎士が20名ほどの隊列だったそうです。

それ以外にも多数の騎馬が同行していたようですが、ガッドの中に入るのを見届けると帰って行ったそう。道中の護衛でしょうか?


「来たようです」


敷地に入ってくる隊列を見て、言葉を失いました。



先頭で入ってきたのは3体の騎馬。どの馬も軍馬だとしても普通の馬とは思えない見事な体躯。スレイドホースでしょうか?

跨がっているのは3人の騎士。白を基調とした騎士服は、ダンの護衛についている近衛騎士の制服にどこか似ています。真っ黒な刺繍が、見事なものです。


その後ろに続くのは5台の大きな馬車。私たちが普段乗っている馬車の倍以上の大きさで、2頭の・・・、これもまたスレイドホースでしょうか? クルセイル大公領にはどれだけのスレイドホースがいるのでしょうかね・・・

2頭のスレイドホースが引いています。真っ黒に塗装された馬車は、車輪の部分にも何やらカバーが装着してあり、御者台の様子も遠くからは見えません。あれらの囲いは、攻撃を防ぐためのものでしょうか? 確かに馬車を襲撃する際には、車輪や御者が狙われることは多いですし。後は馬ですが・・・、あれは狙ってはダメですね。


他にも複数の騎馬に守られ進む馬車は、私たちが待つ屋敷の正面に近づくと、少し不思議な動きをしました。

先頭の馬車に次いで、2台目の馬車は私たちから見て奥側に、3台目は1台目の後ろに止まったかと思えば、4台目は再び奥に。5台目が3台目の後ろにつくことで、3台目の馬車を囲うような形で停車したのです。


不思議な止め方に驚いていると、1台目と5台目の馬車の扉が開き、複数の騎士が降りてきました。そして、それぞれの馬車の後ろから、真っ黒なゴーレムも降りてきたのです。

真っ黒なゴーレムの放つ威圧感は、王都で見たゴーレムに比べて段違いでした。以前見たゴーレムが持っていたのよりも小さい盾を持ち、腰と背に2本の剣を装備しています。

そんな真っ黒なゴーレムが次々と馬車から降車し、5台の馬車を取り囲むように移動しました。また、4体のゴーレムが、未だ扉の開かない3台目の馬車の扉の左右に2体ずつ陣取っています。


貴人を守る部隊としては申し分ないというか、過剰というか・・・。コトハ殿を守る部隊であると考えると、過剰以外のなにものでもないですね。

あのゴーレムの強さは折り紙付き。以前見たものとは姿形、そして色味が異なりますが、コトハ殿が実際に使用しているゴーレムの強さが以前よりも劣ることはないでしょう。

加えてあの騎士たち。身に付けている装備は魔法武具でしょうし、どの騎士も強そうです。ちらほらと見た顔がいますが、あれほど逞しかったでしょうか?

ゴーレムだけでなく、騎士の強さも一級なのは間違いないでしょう。


ダンに加えて、ダンを守る近衛騎士や私の後ろに控えるオランドも一層緊張した様子です。私とは違い、武人である彼らは、目の前の騎士やゴーレム、そしてスレイドホースの強さをより感じているのでしょう。コトハ殿の配下が我々を襲う理由は思いつきませんが、いざとなったらこの騎士やゴーレム、そしてスレイドホースが襲いかかるわけですからね。


1台目の馬車から他の騎士とは少し違う装備を身に付け、真っ黒のマントを羽織っている騎士が降りてきました。

歩きながら外したヘルムの下から覗いたその顔は、私もよく知るマーカスでした。

騎士団長が領主たるコトハ殿の護衛を指揮していることに驚きはないのですが、マーカスも以前に増して迫力があるように感じます。それに、どこか若々しさを感じます。確か、父と同じくらいの年齢だったと記憶しているのですが・・・



そんなマーカスが3台目の馬車の扉を開けすぐそばで敬礼した後、馬車の中から下りてきたのはコトハ殿ではなく、キアラをエスコートしたカイトでした。



 ♢ ♢ ♢

〜カイト視点〜



クライス砦からガッドまでは僕たちの警護をしているマーカス率いる第1中隊に加えて、ヒロヤさん率いる第3中隊の騎馬隊までも僕たちの警護をしていた。

ただでさえ馬車、それもコトハお姉ちゃんとドランドの悪乗り付きのとんでも馬車に乗っているのに、それが5台。加えて第1中隊と第3中隊の騎馬隊・・・


レーノたちの提案で、せっかくの機会だからうちの新しい騎士団をお披露目しようという案には賛成した。

領の顔でもある騎士団をお披露目することは大事だし、カーラルド王国内で僕たちのことを快くは思っていない貴族たちへの牽制になる。

コトハお姉ちゃんや僕、そしてポーラは襲われてもどうにかなるけど、インディゴや領の仲間たちが襲われる危険はある。特に今後、うちの領は外と交流を深めることになるだろうし。


だから、うちの騎士団を見せつけるのはいいんだけれど・・・

もしかしたら王様よりも厳重な警備かもしれない。

そんな張り切りまくりのマーカス率いる警護隊に守られ、ガッドに入ってからは懐かしい町並みを楽しむこともできないまま、領主の屋敷へたどり着いた。


馬車が停車してからも少しの間は扉が開かなかった。

ここまでくると少し諦めというか、慣れも出てくる。

コトハお姉ちゃんの代理として、領の代表としてここに来たことを心に刻んだ。

そんな僕の覚悟を打ち砕くかのような、ヤリスの後押しに促され、キアラをエスコートしながら馬車を降りると、顔を引きつらせたダン王子殿下とラムスさんの顔が目に入った。


・・・うん。頑張ろう。



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