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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

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第315話:『魔人』との戦い

ダーバルド帝国の兵士とうちの騎士団が戦闘に突入し、双方が入り乱れる。

そのまま乱戦・・・、とはならない。それもそのはず。ダーバルド帝国の一般兵では、うちの騎士ゴーレムの防御を突破できない。たいそうな大振りで剣を振り回すが、騎士ゴーレムが盾で難なく防ぐ。そして、そのまま騎士ゴーレムに盾で殴られ、また左右から飛び出した騎士に切り捨てられ・・・


まあ、これは予想通り。うちの騎士団がダーバルド帝国の兵士に負けるとは思ってないし、予定していない。

問題はこれから。味方のはずの兵士がどんどんやられているというのに気にする素振りもなく、私たちの方を見て何やら気持ちの悪い笑みを浮かべる3人の男。『魔人』だ。


「・・・・・・」


私の方を見つめる3人の『魔人』。えも言われぬ気持ち悪さがあるその視線。前に会ったミリアさんは、苦しそうな声を出していたが、目の前にいる3人の『魔人』には、しゃべる様子がない。


不気味な様子の『魔人』。

そんな『魔人』が一瞬、不気味な笑みを深めた気がした。

次の瞬間、ぞわっと感じたことのない恐怖が全身を駆け巡る。


咄嗟に、『龍人化』して距離を取る。


「キンッ!」


と、甲高い音が鳴り響いた。

私が後ろに飛び退いたのと同時、1人の『魔人』が私のいた場所にかかと落としを決めていた。

そして、同じく私のいた場所にはホムラがいた。両腕を元のドラゴンの姿に戻し、かかと落としを決めてきた『魔人』の攻撃を防いでいる。


ホムラに攻撃を防がれた『魔人』は、「チッ」と舌打ちすると、後ろに飛び退く。

『魔人』の動きを目で追ってみると、3人の『魔人』の姿が変化していることに気がついた。

1人は、足がもの凄く太く、1人は腕がもの凄く太く、1人は何本もの腕が生えている。びっくり人間大集合といった感じだ。

だが、3人の『魔人』が醸し出すオーラは、そんな楽しげなものではない。感じる魔力はひどく淀んでいて、その魔力を探るだけで気分が悪くなる。



再び動いたのは、『魔人』だった。

3人の『魔人』が同時に私たちに向かって動き出す。

全くうれしくないことに、3人の『魔人』の狙いは私だった。


「汚らわしいっ!」


そう叫びながら、ホムラが多数の腕を持つ『魔人』の攻撃を受け止める。今更だけど、ホムラって強いよね・・・


残りの2人の『魔人』は私に迫って来るが、特に焦ることもない。

少し後ろに飛んで、腕の太い方の『魔人』の攻撃を躱す。『魔人』の攻撃は、地面にめり込んで地形を変えているが、ひとまずはスルー。

最後に足の太い『魔人』の攻撃が来るが、これは変化させた自身の腕で防ぐ。


「ホムラはその腕いっぱいのやつを! ボイル! こいつは任せていい?」


距離が離れたのを見計らって、役割を分ける。

ホムラはそのまま、手の多いやつ。腕の太いやつの攻撃は重そうだが、騎士ゴーレムならどうにかできる気がする。私の横にいたボイルたちが、『魔人』と私の間に入って防ごうとしていたので、そのまま任せる。

私は、この足の太い、無駄に動きの素早いやつを片付ける。


私の指示を理解したのか、ホムラや騎士たちは、2人の『魔人』を私から引き離すように牽制していく。

対する『魔人』たちは、それに従っている感じ。うーん・・・、もしかしなくても、舐められてるよね・・・

まあ、いいか。ホムラはもちろん、うちの騎士団を舐めない方がいいと思うけどね。



こっちの思惑通りに分かれてくれたのなら、利用するまで。

私は、この動きの速いやつの相手をする。


直ぐに私に向かって跳躍し、様々な足技を繰り出してくる『魔人』。

その動きに、私は完璧には対応できない。

ここ最近は、カイトやキアラに混じって、主に武器を使わないタイプの戦闘訓練を積んできた。もちろん、元の出力差に物を言わせない戦いでは、カイトやキアラに勝つことはできない。真剣に訓練を積んできた2人に、技術面で勝つことはかなわない。


けれど、私にはこの身体がある。

頑丈で、魔力の操作や感知に優れている身体が。

目を中心に、感覚器官に魔力を集中させると、敵の動きを肌で感じることができる。頭で理解するのは追いつかないが、感覚的に敵の動きを察知して、必要な動きができる。

必死に努力を重ねて、相手の動きを読む騎士や冒険者には申し訳ないが、知らず知らずのうちに、私は敵の動きを読む能力を身につけていた。それが今、遺憾なく発揮される。


「ふっ」


「はっ」


「はぁっ!」


無意識に声が出てしまうが、仕方がない。

絶え間なく繰り出される『魔人』の足技を、間一髪のところで躱し続ける。

実のところ、「タイムッ!」と叫びたいくらいには、攻撃は苛烈だ。私がよけた結果、地面や家屋に命中した足技の威力は、えげつない。こんなの喰らったらひとたまりもない、と思う。いや、実際には『自動防御』や鱗で覆われた身体が難なく弾くのかもしれないが、間違って受けてみたいとは思えない。


『魔人』の攻撃を躱し続けていると、気がついたことがあった。

それは『魔人』が動く際、特に私へ攻撃を繰り出すために、脚に力を込めているとき。『魔人』の身体を巡る不快な魔力の動きが、一瞬、激しくなる。そして次の瞬間、私に迫るのだ。


私が『魔人』の攻撃に対して、咄嗟に危険を感じ、避けれていたカラクリが分かった。

『魔人』の魔力の動きに反応していたのだ。

そして、私が攻撃を躱し、または軽く防ぎ続けることで、『魔人』にも焦りというか苛立ちが現れていた。

最初の直線的な攻撃からかわって、少しフェイントを混ぜた攻撃をしていたのだが、それに私は完璧に対応した。結果的に、だが。

そのことに怒ったのか、今度は唯々、力任せな攻撃へと転じた。ただひたすらに、『魔人』の力をぶつけてくる。その動きは単調で、わかりやすく、むしろ怖さもない。

いつまでも相手をしているわけにもいかないし、オプスの仲間を助ける必要がある。


私はここ一番、『魔人』の魔力に向けて感覚を研ぎ澄ませる。

集中すればするほど、不快な魔力。例えるならそう、黒板を爪でひっかいた感じ。『魔人』の魔力に集中していると、絶えず耳のあたりで、爪の音が鳴り響いているように錯覚する。


「今!」


魔力を感じ、動きを予測し、『魔人』の狙いを把握する。

そして、『魔人』が飛び込んで来るであろう位置を特定し、『魔人』が到達するタイミングから一瞬遅れて、地面から無数の岩の槍が、『魔人』の身体に突き刺さった。


「うぐぎゅっ・・・」


うめき声を上げて、『魔人』の動きが止まる。いや、岩の槍で串刺しになったのだから、動くに動けなくなっているのか。


身体に空いた無数の穴から、大量の血が流れ出る。

血の色はドス黒い赤色。種族に関係なく、人型種の血液は赤色だったはずだから、ここにも『魔人』になった影響が出ているのだろう。


太くなっていた脚はみるみる細くなっていき、もはや骨と皮だけ。そういえば、ダーバルド帝国の町で襲ってきた敵も、対処したら直ぐに弱っていたっけ?


身体の力が抜け、突き刺さる槍に身体を支えられている始末。

血が止まる様子もなく、身体から魔力が抜けていくのが分かる。

最初はあげていたうめき声も、だんだんと消えていく。


そして、最後の力を振り絞った様子で、『魔人』は私の方を見た。


「ありがとう」


口の動きが、そう言ったように思えた。

『魔人』の顔はよく見ていなかったが、脚が細くなっていくのと同時に、怒りに満ちた顔から、柔らかな表情に変わったように思えた。


身体から魔力が抜けきり、そこにはボロボロになった1人の男性がいた。


彼の身体を突き刺していた魔法を解除し、彼に近寄る。

槍が消え、彼は地面に倒れ込む。

既に意識はなく、気づけば血も止まっている。いや、流れきったのかも・・・

だがその表情は、ボロボロで穴だらけな身体とは対照的に、とても穏やかなものだった。



「ぐふっ」


そんな声とともに、複数の腕でホムラに攻撃を加えていた『魔人』は崩れ落ちる。

『魔人』の複数の腕による連続攻撃を華麗に躱したホムラが、その鋭い爪で、『魔人』の身体の一部を抉り取ったのだ。


数本の腕が落ち、身体の至る所から血が噴き出すのと同時に、『魔人』は倒れ伏した。

どう見ても即死。ホムラの強烈な一撃で、身体の前半分が失われ、腕が落ち、そのまま死亡した。

・・・うーん、最も考えたくない死に方かもしれない。



残る1人の『魔人』と騎士団の戦いも佳境を迎えていた。

私が戦っている最中も、はじけ飛ぶ騎士ゴーレムの姿が見えていたが、改めてみると多くの騎士ゴーレム・・・だった残骸が転がっている。


それでも、ぶっとい腕から繰り出される強烈な一撃を、騎士ゴーレムがどうにか防ぎ、隙を作る。

それに合わせて、騎士が攻撃を繰り出す。


『魔人』は迫り来る騎士たちを退け、再び攻撃を繰り出すが、それはまたも騎士ゴーレムに阻まれる。

今度は、反対の腕で騎士たちを狙う『魔人』だが、


「はぁぁ!」


アーロンによって、その攻撃は防がれる。

『魔人』の攻撃に合わせて剣を振り抜いたアーロン。彼のカウンターによって、『魔人』はバランスを崩す。


「殺れぇぇぇ!」


アーロンの叫びとともに、1人の騎士が飛び上がる。

そのまま『魔人』に肉薄し、『魔人』の首を切り落とした。



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