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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章

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第310話:式典の意味

騎士団の再編、『騎士団階級基準』の策定は、領民に広く公表された。中身の細かい基準は公表していないが、騎士の階級が10級騎士から大将となり、現時点では少佐のアーロンが最高階級であり、騎士団長に就任することが伝えられた。


そして、第1回の受勲式及び任命式が執り行われることになった。

騎士たちにとっては、勲章を与えられることや、将官に任命されることは名誉なことであり、それを私が直接するのであれば、より喜びも強く、また光栄なことだと。

そこまで言われてしまうと、やるしかない。


そんなわけで、騎士団の訓練場の広いスペースに、大きなステージが作られた。

あっという間に作り出されたステージは、キアラが『土魔法』で大枠を作り、騎士たちが木材などで補強しつつ、豪華に装飾したものだ。キアラ、成長著しい。

その中央にはこれまた豪華な椅子が置かれており、私はそこに腰掛けている。ステージの下に綺麗に整列する騎士や騎士ゴーレム、その後ろに集まる多くの領民の姿が目に入る

現在この場には、ケール砦やクライス砦、また領都の警備のために離れられない騎士を除いたほとんどの騎士と、ほぼ全ての領民が集まっているらしい。


「これより、クルセイル大公領、叙勲式及び騎士団の任命式を執り行う」


私の右手の司会台において、レーベルが大きな声で読み上げる。マイクなどはないので、声を張らないといけないのが大変そう。いや、なんか魔法使ってるな。

私の座る椅子の後ろには、カイトやポーラに加え、インディゴやキアラ、フェイとレビンが並んでおり、また真っ黒な騎士ゴーレムがステージを囲む様に並んでいる。


レーベルの開始の言葉に、後ろの領民が沸く。・・・なんか、思ってたより沸いている。


レーベルからの視線を感じ、私は腰を上げ、ステージの中央へと移動する。

それと同時に、カイトが両手でトレーのようなものを持ち、近づいてきた。その上には、私やドランドが作ったメダルが置いてある。


「マーカス。前に」


騎士団の正装に身を包んだマーカスが、ステージに上がる。

うちの騎士団の正装は、白基調のよくある、というかこの前の式典で近衛騎士が着用していたものに似ている。スーツとは違うが襟のあり肩が立ったジャケットにパンツスタイルで、ブーツを履いている。ジャケットの中央にはうちの紋章が刺繍され、また上下にラインが引かれている。その上から、マントを羽織っている形だ。

マントの色と刺繍やラインの色が、中隊ごとに別々で、マーカスは第1中隊で私たちの護衛になるので、黒色になっている。

騎士団長だけは少しデザインが異なり、といっても刺繍とかが増えて豪華になってる感じ。そして色は、領とうちのシンボルカラーになっている青色だ。



私の前に跪くマーカス。


「マーカス。クルセイル大公領初期から、騎士団長として、1人の騎士として、領と領民のために尽くしたこと、誠に大儀であった。これまでの功績を称え、『龍青水章』を授与するものである」

「はっ!」


返事と共に深く下がった頭を上げさせ、マーカスの左胸にメダルを付ける。

『龍青水章』。名前の由来は、私の種族から「龍」、私たちの鱗の色から「青」、私の前世の名字から「水」だ。いや、頑張って私色の無い名前を提案はしたんだけどね・・・

最終的に、前世の名字を知っているヒロヤ君の押しもあり、クルセイル大公領での功労者に対する勲章として、『龍青水章』が作られた。武官、文官問わず、クルセイル大公領の最高勲章になる。


マーカスが下がり、


「レーノ。前に」


次はレーノだ。

レーノは、元々は旧バイズ辺境伯領の騎士団に所属していたが、うちに来てからは専ら文官として働いてくれている。

そのため前世のスーツに似た、文官用の正装だ。私や日本出身組の適当な記憶とアオイさんが召喚された時に着ていたリクルートスーツを参考に、レビンがそれはもう、素晴らしき腕前で生み出した逸品。


「レーノ。クルセイル大公領初期から、文官として、また私の補佐役として、領の制度設計や交渉に従事し、領の民の生活を支えたこと、誠に大儀であった。これまでの功績を称え、『龍青水章』を授与するものである」

「はっ」


マーカスとレーノ。この親子がいなければ、クルセイル大公領は貴族領としての形を整えることなど叶わなかっただろう。


「ドランド。前に」


最後はドランド。


「ドランド。騎士団の武具から領民の使う農具や調理器具の製作に従事し、卓越した技術を発揮して彼らの役目を支えたこと、誠に大儀であった。これまでの功績を称え、『龍青水章』を授与するものである」

「は、はい!」


マーカスとレーノと違い、堅苦しい場が苦手そうなドランドは、少し緊張した様子。

いや、最初はマーカスも苦手そうだったっけ? まあ、元々騎士団にいたんだし、うちに来てからはレーベルに礼儀作法を学んでいるのを見たこともある。


ドランドがいなければ、魔法武具を含めた騎士団の武具はもちろん、騎士ゴーレムもここまで研究し、作り出すことはできなかっただろう。ドランドにとっては、ダーバルド帝国の奴隷商人に捕らえられ、無理矢理連れ出されていた最中ではあったが、あの時出会うことが出来て本当に幸運だった。


私による叙勲はここまで。

他にも領のために働いてくれている人は大勢いるが、勲章はたくさん出せばいいというものでもない。特に今回は最初の受勲だ。現在、クルセイル大公領の勲章は『龍青水章』のほかにも作られたが、現時点では『龍青水章』のみこうして私が授与することになっている。

他は、直属の上司や組織のトップなどから受勲されることになる。主に最初期から働いている人を中心に、後日受勲される予定だ。



「受勲は以上である。続いて、任命式を執り行う。アーロン。前に」


今度はアーロンが呼ばれ、前に出る。


「アーロン。貴殿をクルセイル大公領騎士団、少佐に任ずる。また、クルセイル大公領騎士団、騎士団長に任ずる」

「謹んで、お受けいたします。クルセイル大公家及びクルセイル大公領のため、粉骨砕身、働くことをお誓いいたします」


そう宣言し、左腰に差した剣を抜き、高々と掲げる。

剣を身体の前に移動させ、手の向きを変えると、剣先を地面につきながら、右膝をついて跪き、頭を垂れた。

これもまた、改めて定められた騎士団の礼だ。こういった儀式の場面用と、通常の場合用など、いろいろあるらしい。私はする機会はないのだが、最低限のパターンだけは反応できる様にと必死に覚えた。大変だった・・・


その後、副団長となる中尉4人、つまりクルセイル大公家の警護にあたる騎士団第1中隊のマーカス、領都の警備を担当する第2中隊のバッシュ、クライス砦を担当する第3中隊のヒロヤ君、ケール砦を担当する第4中隊のジョナスをそれぞれ任命した。

マーカスではなくアーロンが騎士団長になることは、既に領民には知られた話であり、特にざわめきもなかった。


その後、少尉8人の任命も終え、式典は終了した。

最後に、


「クルセイル大公、コトハ・フォン・マーシャグ・クルセイル殿下に敬礼」


とアーロンが叫び、並んだ騎士たちが一斉に敬礼する。先ほどの剣を抜くタイプではなく、右手を眉上に当てるタイプの敬礼だ。

同時に騎士ゴーレムが、盾を地面につきたてる。これが騎士ゴーレム版の敬礼だ。


レーベルから何か一言、という視線を感じたので。


「これからも、領のため、領民のために働くことを期待する」


と、できるだけ偉そうに言ってみた。

どうやら正解だったらしく、


「「「はっ」」」


という揃った声が響き、次いで後ろの領民たちが歓声に沸いた。うん、頑張った。



 ♢ ♢ ♢



式典から数日、またまた私の想定よりも、式典は好評だった。

そもそも、領民たちの半数は騎士の身内。身内の晴れ姿を見ることが出来たとあって大喜び。またそれ以外の領民も、極めて危険な場所という世間の一般認識の中で、この森で生活できているのは、騎士団が命がけで狩りをしているからだと知っており、普段の感謝を表す場所があったと喜んでいた。

私にとっては緊張するハードな行事だったけど、やはりこういう場も必要なのだと実感した。後は、いつも通り私が貴族っぽい振る舞いをしたのを、カイトとポーラが喜び、「お母さん凄い」とインディゴが喜んでいた。可愛かった。



そんな騎士団は、これまで以上に効率的な活動が可能となった。

上下関係が一層明確になり、細かくアーロンたちの指示を仰ぐ必要が無くなったことから、処理できる仕事量が増えた。


その恩恵として、洞窟の調査が着々と進められていた。今回の再編で、領都に配属された、つまり第2中隊所属になった騎士は大きく分けて2種類。新人と対魔獣・魔物が得意な者だ。


前者はバッシュやマーカスのしごきに耐えつつ、領都内の警邏や領都の各門の警備、領都とクライス砦の定期往復といった、比較的簡単な業務から始めていく。7級騎士に到達した辺りから、得手不得手を見極め、将来的な配属を考えていくそうだ。

領都に詰める騎士に新人が多いことは、いざとなったときの心配はあるが、うちの屋敷の地下には、世代交代が進められた結果、現在は役目の無い騎士ゴーレムが大量に、本当に大量に収納してあり、最悪、それを使えばなんとかなる。普段は私やカイト、ホムラもいるしね。



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