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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第6章:龍族の王女

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第295話:対処方法

「こりゃまた、デッカいな」


目の前に置かれた大きな魔石を見て、ドランドが嬉しそうな声を上げる。大方、この魔石を使って何を作ろうか考えているのだろう。・・・・・・私も同じだ。


「大きいよね。体積でフォレストタイガーの魔石の3倍くらいかな。騎士が2人がかりで運んでたよ」

「そりゃあこの大きさだとなぁ」


そう言いながら、軽々と魔石を持ち上げるので、言葉と行動が一致していない。


「持ち上げてるし・・・。それはさておき、ドランドは『マッディーモニター』って魔獣、知ってる?」

「いいや、知らんな。最後に『モニター』と付く魔獣に心当たりはあるが、小物だ」

「そうなの?」

「ああ。確か、『ブルーモニター』とか『ブラウンモニター』とかいったな」

「・・・青と茶色?」

「ああ。青いトカゲと茶色いトカゲだ」


・・・・・・そのまま。この世界の言葉は、不思議な原理(不明)により、私が理解できる内容に変換されて聞こえている。これまでの経験から、意味は通じているらしいので、実際にこの世界での『ブルーモニター』とか『ブラウンモニター』は、青いトカゲ・茶色いトカゲという意味で名付けられたのだろう。

『火炎竜族』の下に『赤竜』がいる。この世界では、見た目で名付けられる色に基づく名前の種と、その上位種で何らかの特徴から名付けられた種がいるのだろうか。そうすると、『ブラウンモニター』の上位種が『マッディーモニター』で、『ブルーモニター』の上位種に『ウォーターモニター』とかいう水を操るのが得意なトカゲがいるのかもしれない。・・・でも、『マッディーモニター』って『水魔法』と『土魔法』が得意なんだよね? そうすると、2つの上位種が『マッディーモニター』なのかもしれないか。


まあ、今重要なのは、『マッディーモニター』が知られていない魔獣だったということ。ドランドだけでなく、とりあえず帰ってから見かけた人に聞いてみたが、誰も知らなかった。


「『マッディーモニター』はこの森にしかいないとか?」

「可能性はあるんじゃねえか? 強い魔獣・魔物がわんさかいるこの森になら、見たことも聞いたこともねぇのがいても、不思議じゃないだろうし」

「そうだね・・・。問題は、私たちが開拓しようとしている場所にいたことなんだけどね・・・」

「らしいな。マーカスが騎士団の上の連中集めて、何だか深刻そうにしてたから少し聞いたが、嬢ちゃんがいなけりゃ全滅だったと」

「全滅、かは分かんないけど・・・。倒すのは無理だったと思う」

「そりゃあ、落ち込むさ。新人共の訓練用にって持ってた武具が、あまりにもボロボロになってやがったから文句の1つでも言ってやろうと思ったが、今度にするかってなるくらいには、暗い顔してやがった」

「はは・・・。あんまり気にしないでほしいんだけどね」

「そりゃあ、無理だろうな。守るべき相手である嬢ちゃんに、困難な魔獣の相手を任せなきゃならん状況。騎士団を率いる者としては、いろいろ考えるさ。まあ、嬢ちゃんが気にすることはないさ。マーカスや騎士団が考えることだし、その結果が不甲斐なければ、反省して改善していくのも奴らの仕事だ。嬢ちゃんは、自分の判断で、手を貸すときは貸せばいい。そこに、騎士団やマーカスの面子を気にすることはない。奴らが勝手に落ち込めばいいのさ」

「言ってることは分かるけど・・・」

「それにな。嬢ちゃんは一度の失敗で、マーカスをクビにはせんだろう?」

「もちろん。というか、今回のが失敗だとも思ってないし」

「ああ。それ自体が恵まれてるんだ。ダーバルド帝国を引き合いに出すのは違うが、世のお偉方にはな、一度の些細な失敗、あるいは失敗ともいえないような些末なことで、部下に責任を取らせる者がいる。そういう上司じゃなく、自分らのことまで考えてくれる嬢ちゃんだからこそ、マーカスたちは真剣に考えるんだ。嬢ちゃんは、ドシッと構えとれ。暇なら、儂を手伝え」

「・・・・・・最後のが、本音?」

「はははっ! 全部本音よ。まあ、最後のが、儂の一番の願いではある」

「ふふっ。ありがと。いいよ、何すればいい?」

「おうよっ! そこに山になってるのはもう使いモンにならんから、一度溶かす。鍋に放り込んで熱してくれ。金属以外の部品は外してある」

「はーい」


悩んでいたことを指摘され、最後は誤魔化されたけど・・・

確かに、私が気にしすぎても進まない。騎士団のことはマーカスたちに任せたのだし、彼らがどうするのかを見守ろう。



 ♢ ♢ ♢



『マッディーモニター』のお肉は、食べられなくはないものの、積極的に食べたいとは思えない、そんな微妙な味だった。泥抜きのような下処理をしていないせいなのか、どうにも臭みを感じて美味しくはなかった。


一方の皮や爪などの素材は、かなり期待が持てそうだった。

皮は時間が経っても硬さを維持しており、鎧の金属と金属とを繋ぐ部分に利用できたり、皮自体をメインにしたそれなりの防御力を持った衣服が作れたりしそうとのこと。しかも、等間隔で小さな穴が空いていたため、加工の難易度も高くないらしい。

爪や牙は、ファングラビットやフォレストタイガーと比べても、魔素が豊富に含まれていると思われ、魔法武具を作る際に混ぜることで利用ができそうだった。牙は、反り具合や切れ味が包丁にピッタリだったらしく、奥様方が喜んで確保していった。また爪は、かなり大きいので、それ自体を加工すれば立派な武器になるとのこと。


そして魔石。今回手に入れた素材類の中で、最も価値があるのがこの魔石だろう。何よりその大きさ。通常の騎士ゴーレムに用いている魔石は、ファングラビットの魔石で握り拳ほどの大きさ。それよりも遥かに大きいのだ。

これだけ魔石が大きいということは、込められる魔力の量も桁違いなわけで、書き込める命令式の量も増える。つまり、ゴーレムにより複雑で難易度の高い動きを教えることができる。もちろん、魔力を溜めておく方の魔石としての価値も高い。森の中は魔素が濃い関係で、ほとんど自動的に充填されており、騎士ゴーレムはエネルギーの観点からは半永久的に活動できる・・・・・・と、思っていた。しかし、『マッディーモニター』との戦闘では、力勝負の際に魔力を大量に消費しており、最後はエネルギー切れで力尽きたといってもいいだろう。この前みたいに、森の外へ出る機会も定期的にあるのだし、考えものだ。


とはいえ、手元にある魔石は1つだけ。

・・・・・・勝手に『マッディーモニター』を探して狩るのは・・・、ダメ、か。

そもそも、私1人で勝てるのだろうか。マーカスに対しては偉そうにしていたけど、果たして私1人でアレは倒せるのか?

足を縫い付けるのは、できる。問題はラスト。『火魔法』で乾かすとして、再び濡れる前に、一撃で仕留める必要がある。・・・問題は、『火魔法』から続く魔法、『石弾』では心許ないので、『龍魔法』を発動するまでの速さと精度かな? 後で、訓練場の一角で試してみるか。


この世界での私の最も誇れる点はその強さだ。一般的な日本の教育は受けてきたが、特に賢いわけでもないし、何か特別な能力があるわけでもない。そもそも、ただの高校生がいきなり貴族らしいことなんかできない。私が私であり、これからも幸せに生きていくためには、強さへの追求を疎かにしてはいけないと思っている。


閑話休題。

後は、『マッディーモニター』の特別な?能力。あのヌメヌメだ。

『マッディーモニター』の体内から、ヌメヌメの原液と思しき液体が詰まった袋を取り出し、騎士団を中心に調べていた。本当は、専門の研究施設でもあればいいのだろうが、そこまでの余裕はない。魔獣・魔物との戦闘経験が豊富な騎士を中心に、この液体の正体、使い道、何よりも対処方法を調べていた。


その結果、1つ有用な手段が浮上した。「酸」だ。

原液を水で薄め、『マッディーモニター』の体表を覆っていたヌメヌメに近いものを造り、魔法や薬草、用意できる液体などと混ぜてみた。その結果、リンが出してくれた「酸」を混ぜてみたところ、ヌメヌメがあっという間に乾き固まった。手の取ってみたところ、ポロポロと欠片が崩れ落ちたのだ。その後、水を追加してみたが回復する様子はなかった。

・・・つまり、『マッディーモニター』にリンが出した「酸」をかければ、攻撃が通るようになるかもしれないのだ。この結果を受けて、現在はどうやって『マッディーモニター』に「酸」をかけるか検討中だ。

有用な使い道や、そもそもの成分については分からなかったが、攻撃を通すのに有効な手段の目処が立っただけでも、大きな一歩だろう。



「失礼します。ここに・・・、コトハ様!」


素材の分析を行い、ドランドと一緒に、素材類を見ながらあーだこーだ考えていたら、1人の騎士が工房にやってきた。


「ん?」

「殿下。至急、屋敷へお願いいたします」



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