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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第5章:建国式典

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第261話:捜索の結果

ホムラとライゼルさんは別の建物を調べに向かった。

それを見送った私は、小さな手で私の右手を握っている『半竜人』の男の子に話しかける。


「えーっとさ、聞いてもいいかな?」

「うん!」


私のオーラを感じ、私のことを母親だと信じてからは、最初に檻に入れられていたときとは打って変わって、年相応な感じで話すようになっている。

とりあえず、そこには触れずに、情報収集しておく。


「そうだね・・・。まずは、名前聞いてもいい?」

「名前?」

「うん。あなたの名前。教えてくれる?」

「名前って何?」

「・・・・・・え? えーっと、あなたは何て呼ばれてるの?」

「うーん、出来損ない?」

「出来損ない? ・・・そう呼ばれてたの?」

「うん。お前は出来損ないだって」

「・・・・・・・・・そう。これからは、そうは呼ばれないからね」

「そうなの?」

「うん。あなたの呼び方、名前を考えてあげるから」

「名前!」

「そう。・・・・・・うーん、インディゴとかはどう?」

「インディゴ?」

「そう。あなたの角や翼、尻尾の色。後は目の下のラインもそうだし、瞳の色も。綺麗な濃い青色、藍色っていうんだけどさ。そんな意味の言葉」

「うん! インディゴ! インディゴ!」


喜んでくれたようで何より。

我ながら、相変わらず安直というか、センスがないというか・・・。いや、本人が喜んでくれたのだから、私が気にしたら失礼か。

・・・にしても、この子が受けてきた扱いは・・・。間違っても「出来損ない」が名前なわけないし、蔑称のようなものだったんだろうな。ダーバルド帝国の連中が望んでいたことができなかった? いやいや、こんな子どもに何をさせるつもりだった?



それからいくつか聞いてみたが、どれも曖昧。

年齢は分からないとのことだったが、『鑑定』によれば4歳。種族は『半竜人』で、『水流魔法』がレベル0。普通に考えれば『水魔法』の上位互換。もっとも、素質はあるが、まだ使えない状態らしい。『身体強化』は使えるみたい。ただ、本人の自覚はない様子。


親を含め、外の世界について知っていることはほとんど無かった。檻の中での生活、時たま檻から出されて、痛いことをされた記憶。聞いているだけで気分が悪くなりそうだった。

そんなインディゴが、私を母親と認識したのは、唯一の温かい記憶。思い出すときに感じる温かいものを、私に感じたらしい。おそらく、母親の魔力だろう。母親が『半竜人』なのか『水竜族』や『古代水竜族』なのかは分からないが、記憶の奥底に、昔感じた魔力の記憶が残っているのだろう。


親元に帰してあげるのが一番だろうが、名前が分からなかったことからして、生後1年かそれ以前に、引き離された可能性が高い。その時に親や一緒に住んでいた人たちがどうなったかは不明だが、前向きな想像はし難い。



どうしようかと思いながらインディゴの頭を撫でていると、マーカスたちが戻ってきた。同行している騎士が、2人の男を拘束している。


「お帰り。みんな無事?」

「はっ。残っていた敵兵は僅かでしたし、どれも練度が低かったので」

「そっか。それで、後ろのは?」

「右側がこの砦の司令官だそうです。左にいるのは彼の秘書的な役割をしている男です」

「そう・・・・・・」


冷静に冷静に。

インディゴの話を聞いた直後なだけあって、怒りを抑えるのが難しいが、彼のためにもこいつらの話を聞かないと・・・


「とりあえず、外へ。間違っても逃がしたり、自害されたりしないようにね。聞きたいことが山ほどあるから」

「はっ」


マーカスの指示で、2人が外へ連れ出されるのを見送る。途中、司令官だという男がインディゴを見て嫌そうな顔をしたのも見逃してはいない。



マーカスに、インディゴを保護した経緯を説明していると、ホムラたちも戻ってきた。同行者はいない。


「お帰り。無事?」

「はい、コトハ様。敵兵とは遭遇いたしませんでしたので」

「そっか。誰も見つからなかった?」

「・・・いえ。おそらく亡くなった奴隷が放置されている部屋を見つけました。腐敗している遺体もありましたので正確な数は不明ですが、10名ほど」

「・・・そう」


小声でホムラに問いかける。


「『半竜人』は?」

「いませんでしたわ。全部、一般的な『魔族』かと」

「そっか」


インディゴの親や家族もここに連れて来られている可能性を考えたが、空振りだったか。


「それから、その部屋の横の部屋に、魔道具が」

「魔道具?」

「はい。詳細は分かりかねますが、魔力の集積装置のようでしたわ」

「集積装置? 魔力を集めるってこと?」

「といいますか、他者の魔力を吸い上げ、別の者に渡すような感じでしょうか?」

「・・・遺体って」

「おそらくは。魔力を吸い取られ、衰弱したのではないかと」



 ♢ ♢ ♢



これ以上の捜索は無意味だと判断した。

敵兵が多く詰めている東側には、まだ捜索していない建物があるが、敵兵の数からいって、バレずに捜索するのは難しい。


ホムラたちが見つけた魔道具は、しっかり調べておきたいし、できれば奴隷の遺体も埋葬してあげたい。

そのためには、早いところ敵兵を追い出すか。

・・・その前に。


「ホムラ。あなたもインディゴに魔力を見せてあげて」

「インディゴ?」

「そう。この子の名前」

「畏まりました」


そう言って、先ほどの私よりも制御された、精密で綺麗な魔力をインディゴに向けて放つホムラ。


ホムラの魔力を受けたインディゴは、目を見開きホムラを見つめている。


「お母さん、この人は? お母さんとは違うけど、でもお母さんみたい」

「ふふっ。この人はホムラ。私の仲間・・・、姉妹みたいな人だよ」


私の「姉妹」という言葉にホムラが嬉しそうにしている。


「・・・ホムラお姉ちゃん!」

「よろしくお願いしますね、インディゴ」

「うん!」


上手く打ち解けてくれたようで何よりだ。


「ねえ、インディゴ。私はこれから、少しお仕事があるの。その間、ホムラお姉ちゃんと一緒に待っていてくれる?」

「・・・・・・お母さん、行っちゃうの?」

「絶対に帰ってくるよ。少しだけ」

「・・・分かった」


ホムラと一緒にいることを了承してくれたようで一安心。

ホムラたちと一度砦を後にする。



待っていた騎士団長や魔法師団長は、インディゴを見て驚いているが、何も言わずにホムラを案内している。インディゴは、騎士や魔法士の姿を見て、ホムラの手を強く握っていた。


それを見送り、私はマーカスと両団長と共に、拘束した2人のもとへとやって来た。

2人はそれぞれ話せないように隔離され、両手両足を縛られ、猿ぐつわを噛まされている。


この砦の司令官だという男に話を聞こうかと思ったところ、マーカスが、


「コトハ様。あっちの秘書の方が口を割るかと。知っている内容も、大差無さそうです」

「そう? 分かった」


そう言われ、秘書の方へと向かう。


「今から口のを外すけど、大声出したりしないでよ? 痛い思いはしたくないでしょ?」


目の前の男は、ゆっくり首を縦に振る。

真横で騎士が、いつでも口を塞げるようにしている。それにここは、砦から少し離れているし。砦の方では、絶賛投石機を使って攻撃中。問題ないか・・・


騎士に指示を出し、猿ぐつわを外させる。


「さて。質問にだけ答えて。いい?」

「・・・ああ」

「よし。この砦に、奴隷や『異世界人』はいる?」

「・・・『異世界人』・・・は元々いない。奴隷は・・・、さっき連れていた子ども以外は・・・、死んだ」

「そう。あの男は?」

「この砦の司令官。といっても、金で地位を買った貴族の馬鹿息子だ。司令官の能力なんてありゃしない。事務は俺が。軍の指揮は、今も壁の上で指揮をとっているプヘル将軍が担っている」

「・・・そう。にしても、ペラペラ喋るのね」

「ふんっ。タイミング的に、あそこのドラゴンはグルだろ? 戦闘を前提にしていないこの砦には持て余すわ! それに、この国にはとことん愛想が尽きた。許せないこともあるしな。素直に話して、マシな扱いを期待する方がいいね」

「・・・話し終わったら、殺されるとは考えないの?」

「今んとこの扱いを見れば、その可能性は低いと思っただけだ。というか、あのドラゴンが攻撃を始めれば、どの道死んでいたしな」

「・・・潔いってことでいいか。まあ、分かった。あなたが協力的に話している間は、丁重な扱いを。聞くことが無くなれば、あなたの希望を最大限に考慮する。けれど、協力的でなくなったら・・・」

「協力するさ。知っていることは全て話す」

「・・・そんな気がするよね。マーカス、2人も。いい?」

「「「はっ」」」

「よし。それじゃあ、ひとまずそれで」



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― 新着の感想 ―
[一言] まあ貴族以外の兵士なら色々と思うところが出てくるのも当然の国っぽいなぁ…
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