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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第1章:異世界の森で生活開始
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第1話:現状を把握しよう1

彼氏に売られ、襲われたので逃げようとしたが逃げ切れず、展望台から飛び降りたら、異世界に来ていた私。

目の前に広がる、広大な自然に感動し、その中にいた謎の動物を見て仰天し尽くしたところで、一旦冷静さを取り戻した。



いろいろ確認したいことはある。

そもそもここはどこなのか、異世界だとして、どうやってやってきたのか、地球での私の扱いはどうなるのか等々・・・


だが、早急に解決しなければならない問題がある。

目の前に広がる光景の一方向、洞窟を背に左側に太陽が沈みつつある。

地球的常識で行けば、あっちが西なんだろうか。そもそも異世界で地球の常識が通用するとは限らないし、方角がわかってもどうしようもない。

ただ、日が沈み、夜になるということは、当然暗くなる。それに今が何時か分からないが、眠くなってくるかもしれない。そうすると、寝床を用意する必要がある。

それに、目が覚めてからかれこれ数時間、何も食べていなければ、水も飲んでいない。どうやら私は生きているようで、生きているのなら当然、喉も渇くしお腹もすく。どうにかしなければいけない。

目の前に森が広がっているし、森に入れば食料や水を確保できるかも!と思ったが、すぐにその考えは捨てる。

これから夜になる。異世界の夜の森。さっきでかい動物や不思議な鳥を見たばかりだ。森に入るのはどう考えても危険すぎる。



一晩くらいであれば、飲まず食わずでも生きていける。寝床が土の上でもなんとかなる。お風呂に入れないのは辛いが、そんな贅沢が言えないことくらい、さすがに理解している。ひとまず、背後の洞窟に戻ることにした。



 ♢ ♢ ♢



この洞窟は、入り口から奥へ一本道で続いており、奥行きは30メートルほど。

私の他に生き物はいないようで、植物も見当たらない。

もし獣の住処だったら、夜になりその獣が帰ってきたところで異世界生活は早くも終了となるが、洞窟内に何かが生活している様な形跡はない。



洞窟の奥に戻り、これからのことを考える。分かっていることから、ここが異世界なのは間違いない。

そうすると、選択肢は2つ。なんとかして地球に戻る術を探るか、ここで頑張って生きていくかだ。

といっても帰る手段が見つかるまでは、どのみちここで生きていくしかない。




・・・それに、正直、地球にというか、元の生活に未練はない。


父親は酒・ギャンブル・タバコにしか興味のない典型的なダメ男で、気にくわないことがあると私や母に暴力を振るうようなやつだった。2年前に出て行ったきり、帰ってこず、連絡もなかった。

どこかで死んでいるのか、新しい女の人でも見つけたのか分からないが、全く興味がない。


母親は素晴らしい人だった。とても綺麗で優しく、優秀な女性だった。

だが、半年前に事故で死んでしまった。信号無視の車から小学生をかばったらしい。

親戚は他に母のいとこにあたる人がいて、母の葬式や役所の手続をしてくれたが、遠方に住んでいるし、ほとんど面識はない。

そういう理由で、母の保険金とバイトで生活費を工面しつつ、半年ほど一人暮らしをしていた。

これまでの学校生活でもこれといって仲のいい人はいなかったし、今の高校にもいない。

特に最近は、空いている時間は、あのクソ彼氏に捧げていたから、友達付き合いもなかった。

そして、結局その彼氏にも裏切られた。





というわけで、私は元の生活に戻りたいと全く思わない。

だから、あのとき躊躇わずに展望台から飛び降りることができたのかもしれない。

母が死んだ後、何度も死ぬことを考えた。母を失い、生きる意味も希望も見いだせなかったからだ。あいつと付き合うまで、何度も何度も死のうとしていた。

そんな状況の私を騙したのかと思うとますます憎いが、今更どうしようもない。母と同じく男を見る目がなかったと諦めることにする。



というわけで、元の生活に未練がなく、そもそも帰ることができるのかすら不明なのだから、帰る方法を探すよりも、この世界で楽しく暮らしてく道を探る方が有益だろう。


そんなことを考えつつ、地面をみる。少し固めの土である。

ここで寝ると確実に肩や腰が痛くなるなぁと思い、ふと、


「せめて、軟らかい土ならなぁー」


っと、学校の花壇を想像しつつ呟いた。




すると目の前の土の地面がボコボコっと、波打った様に見えた。

驚いて、そこを踏んでみると、


「軟らかい。ここだけすっごい軟らかくなってるんだけど・・・」


他の場所は踏んでも足跡など付かないのに、ここだけは足が沈み、足跡が残る。

そこを触って、土を手で掬ってみると、地表から深さ10センチほど、1メートル四方にわたり土がまるで耕かされたように柔らかくなっていた。


「・・・・・・どういうこと? ここはさっきまで座ってた場所で、そのときは他と同じく固かったし・・・・・・」



自分の行動を思い出してみると、すぐに答えにたどり着いた。

あれだ。さっき、何か呟いたよね。そうだ、「土が軟らかければいいのに」って呟いた。

そう呟いたから、いきなり土が軟らかくなったってこと?

まるで魔法みたいな・・・




「・・・魔法! そうだよね、異世界なら魔法があっても不思議じゃないよね!」

嬉しくなってつい、叫んでしまった。

私も異世界もののラノベなんかは好きだったし、魔法が使えればなんて願ったこともある。

そんな憧れの魔法を自分が意図せず使ったかも知れないことに、感動していた。



本当に魔法なのか、まずはそれを確かめる必要がある。とりあえず、先程と同じことをしてみることにした。

そう思って、


「軟らかくなれ!」





っと叫んだが、何も起こらない。

確か先程は、すぐに土がボコボコした。先程と何が違うのか。

少し考え、先程は学校の花壇、花を植える前の花壇をイメージしていたことを思い出す。

まさかと思いつつ、学校の花壇をイメージしながら、再度叫んだ。



 ♢ ♢ ♢



ボコボコっと目の前の土が軟らかくなった。かれこれ数十回、地面の土を軟らかくし続けている。自分が魔法を使えたと思われることが嬉しくて、はしゃいでしまった。

辺り一面の土が軟らかく、まるで畑のようになっていた。


ここで、他にできることがないか試してみることにした。

ライターをイメージしつつ


「火!」


と叫ぶと、目の前に火の玉が現れた。

蛇口から水が出ている様子をイメージしつつ


「水!」


と叫ぶと、前に突き出した手から水が、水鉄砲のように放たれた。

懐中電灯をイメージしつつ


「光!」


と叫ぶと、光の球が現れた。


そしてこれらは消えるようにイメージすると、いずれもすぐに消えてなくなった。

どうでもいいけど、もう少しなかったものか、魔法発動のためにいう言葉は。

そんなことを思いながら、先程の火の玉を思い浮かべると、再び火の玉が現れた。

・・・びっくりした


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