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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第1章:異世界の森で生活開始
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第17話:成果と問題を把握しよう

カイトとポーラ、それにリンと一緒に暮らし始めて、2週間ほどが経過した。


私たちは、洞窟のある岩山を中心に、円状に周囲を散策していった。

今では、岩山を中心に、直線距離で歩いて15分ほどの範囲が、行動範囲となっている。


散策した結果、『アマジュの実』や『セルの実』以外にも、いくつか食べることのできる木の実を発見できた。

その中でも特に嬉しかったのが、『シェンの実』という、木の実だ。

木の実ではあるが、スイカほどの大きさの実で、色は黄色。

川岸の近くに生えている、私の腰ほどの背丈である、『シェン』という木の根元に生っていた。

最初は、木の実との認識もなく、特に気にしていなかったのだが、ファングラヴィットに向けて放った『ストーンバレット』が逸れてあたり、固い殻に包まれた『シェンの実』を粉砕した。

すると、『シェンの実』の残骸から、なんとも食欲をそそる、唐辛子のような、辛い匂いが漂ってきたのだ。

速やかにファングラヴィットを始末して、『シェンの実』のもとへ向かい、中身を少し舐めてみると、とっても辛かった。


いくつか収穫し、持ち帰ってからいろいろ試してみた。ちなみにカイトは、『シェンの実』については知らなかった。


実験の結果、殻を割り、実の部分をほじくり出してから、水を入れて、実をすり潰していくと、粘り気を帯びて、ペースト状になった。

舐めてみると、やはり、かなり辛いが、おいしかった。前世でいう、唐辛子ペーストだろうか。

辛いのは比較的得意な私にとっては、『シェンの実』から作った、このペースト状のものは、まさに望んでいたものだった。

というのも、相変わらずファングラヴィットを狩り、それを主食としているが、毎回毎回塩味で、正直少し飽きていた。

・・・最初は、味付けが無かったことを思えば贅沢だとは思うが、そもそも日本で暮らしていた私にとって、ここでの食生活は、お世辞にも満足するものとはいえなかった。


そんな中で、辛みを付けられる調味料の獲得である。

その日の夜から、私の主食は、塩味のファングラヴィットではなく、ピリ辛味のファングラヴィットになったのだった。

・・・ちなみに、カイトやポーラも味見をしたがったので、2人にも舐めさせたが、カイトには辛すぎたようで、すぐに水を飲み干していた。

一方のポーラは、おいしそうにしており、それ以後、ポーラの主食も、ピリ辛味のファングラヴィットになっていた。



♢ ♢ ♢



カイトとポーラは、それぞれ魔法の練習を重ねている。

やはりポーラの方が魔力量もあり、魔法を使うのも得意なようで、既にステータスに表れていた魔法のうち、『火魔法』、『水魔法』、『光魔法』の3つの魔法はいずれもレベルが3になっている。

一方で『闇魔法』は、依然としてレベルは0のままだ。使えたこともない。

・・・そもそも『闇魔法』については、相変わらず不明だ。


今では、食事の際の火や水の準備、洞窟内の明かりの確保は、ポーラの仕事だ。

更にポーラは、私たちの水浴びの準備も担当している。

水浴びといっても、『土魔法』で作った大きな入れ物に、『水魔法』で水をいれ、『火魔法』で熱したあと、小さな湯桶で水を掬って体にかける程度だ。

一度、川にいって水浴びをしようと思ったが、魔獣がひっきりなしにやってくるため、危険だということで断念した。

・・・・・・・・・本当はお風呂に入りたいが、排水の準備や、設置場所の問題で実現できていない。



カイトは、魔法の練習もそこそこに、『身体強化』のスキルを使う練習をしている。

というのも、カイトから、「僕も戦えるようになりたい」と、言われてしまったのだ。

どうやら、ポーラはもちろん、私のことも守りたいと思ってくれているらしい。

まだ幼いのに、立派なものだ。


私が森に行き、カイトとポーラが留守番していることは多いため、カイトが戦えるようになることはいいことだ。

・・・・・・だが、正直、カイトやポーラが戦う姿は見たくない。

最近は、自分が戦うのは慣れてきたが、2人が戦う姿を想像すると、身震いしてしまう。

私は勝手ながらも、2人の保護者のつもりだ。保護者である以上、2人を全力で守るつもりである。

そんな2人が戦わざるを得ない状況に遭遇したくはないが、備えは必要である。慣れてきたが、この森は、やはり危険な森なのだ。


そんなこんなで、カイトには、以前ステータスで見た、『身体強化』について伝えた。

『身体強化』のスキルは、発動させると、魔力が身体の表面を流れて、身体を硬くする。それと同時に、筋肉に刺激を与えて、瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる。

『身体強化』を発動させたカイトは、両足をそろえたジャンプ —立ち幅跳びで、10メートルほど飛んでいた。

しかし、継続時間はそれほど長くない。体感だと、5分ほどで効果が切れてしまう。それと同時に、魔力切れになる。

それに、スキルを使えるようになっても、すぐに魔獣と戦闘ができるわけでもない。

魔獣と戦う際には、魔獣に向かっていく恐怖を克服し、魔獣の動きを見定め、攻撃を躱し、または受け止め、こちらの攻撃を当てる必要がある。

こればっかりは、慣れていくしかないとは思うが、なかなか難しい。

そもそも、私の狩りも、魔獣を見つけて安全な距離をとってからの、『ストーンバレット』による高火力狙撃が基本だ。命中すれば一撃で頭部を吹き飛ばすため、戦闘はすぐに終了する。そのため、カイトに戦い方なんて教えることはできない。



問題もいくつかある。

まず、カイトやポーラの服についてだ。

最初2人は、村で与えられたという麻のボロ着を身につけていたが、既に穴だらけでボロボロだった。

森にも入ることを考えると、早急に新しい服を見繕う必要があるが、ここには服屋など、当然無い。

今は、洞窟内ではボロ着で生活し、森に行くときは、ファングラヴィットの毛皮を切って、穴の空いている部分や、足回りを守るように縛り付けているが、早いところなんとかしなくてはいけない。

私の『身体装甲』のスキルで、2人に服を着せてあげることはできないかと試したが、これはうまくいかなかった。


次に獲物の減少だ。

私たちの行動範囲から魔獣がほとんどいなくなっているのだ。


狩り尽くしてしまったとういうわけではないと思う。

実は、リンが狩りに付いてくるようになってから、狩ったファングラヴィットなんかは、リンの『マジックボックス』のスキルで丸ごと持ち帰るようになっている。洞窟に帰ってから、カイトに解体してもらうのだ。

そのため持ち帰れる肉の量が増え、蓄えも十分にできているため、狩る量はそれほど多くない。ちなみに、解体し、余った部分はリンが全て食べてくれる。燃やす必要も無いし、リンの食事の分、お肉が余るので一石二鳥である。


それに、一度、普段の行動範囲から出てみたら、ファングラヴィットやフォレストタイガーが普通にうろついていた。どうやら、私たちの生活している周辺からのみいなくなってしまったようだった。


そんな風に、暮らしの快適性が上がりつつ、問題も生じているのだった。


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