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危険な森で目指せ快適異世界生活!  作者: ハラーマル
第4章:新たな日々
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第150話:案内

扉を担っているゴーレム —仮称、扉ゴーレム— について大まかに説明してあげた。カイトとポーラは「へー」と軽く話を聞いていたが、他の3人はそうはいかなかった。


「い、いやいやいや! 待ってください、コトハさん!」

「ん? どうしたの?」

「こ、この扉がゴーレムなことにもとても驚いたのですが、このゴーレムを、コトハさんが作ったんですか!?」


代表して驚いてくれたのはフォブスだ。ノリスとキアラも同じように驚き、フォブスの質問への回答を待っている。


これに関しては隠すつもりはない。今後のことを考えると、こちらの戦力をある程度は正確にアーマスさんたちに伝える必要がある。細かい話や戦略面はともかく、どれくらいの兵力で、どのくらいの相手なら対処できるかを知らせておくことは、その後の防衛において重要な話だ。

うちの領に限らず、貴族がそれぞれ抱えている騎士団は、有事の際には国軍の一翼を担うことになる。なので、大まかにどの程度の兵力を有しているかは、報告する義務があるし、国の方でも調査されているのだ。


そこでうちの領は少しややこしい話になる。私やカイト、ポーラにレーベルたち『悪魔族』を除いた領の戦力は、ゴーレムがその7割程度を占めている。そのため、ゴーレムを抜きにして戦力を示すことなど不可能なのだ。まあゴーレムを隠して、実際の戦力を示すことはできるけど、それでは移住したはずの人数に比べてあまりにも不自然な数になる。一方で『人間』の騎士のみで伝えれば、うちの領には大した戦力がないことになって、国の防衛計画策定に影響が出てしまう。


そして今では、稀に野生のゴーレムが出現する以外に、ゴーレムは存在しない。遺跡から出土したと言っても数が不自然すぎるため、私が作れることを伝えることにしたのだ。まあ、「売ってくれ」とか言われても面倒くさいので、詳細を説明するのは国王のハールさんと宰相のアーマスさんのみにする予定だし、「作るのに時間がかかる」とか「材料が大変」とか言って誤魔化す予定だ。実際は騎士ゴーレム1体作るのに身体含めて30分で余裕だし、材料もファングラヴィットを狩ってくれば足りるんだけどね・・・


「私が作ったよ。ここで暮らし始めてからコツコツとね」


そうして3人の質問攻めに遭いながら、事情を説明しておいた。



質問も終わって、ようやく中に入れると思ったら、ポーラが手を挙げた。


「ん? どうしたの、ポーラ」

「このゴーレムさ。さっき騎士さんが叩いてた所を叩いたら、立つんだよね?」

「うん、そうだよ」

「じゃあさ、悪い人がそれを見てて、後で自分でやっても中に入れちゃうの?」


ポーラの質問は、まさに私が苦労したところに関してだった。カイト含めて残りの4人は、「確かに」という顔でこちらを見ている。


私は、自分が努力したところを説明したいとの思いで少し興奮しながら、


「そう! それが大変だったんだよね。いろいろ複雑だから詳細は省くけど、このゴーレムが立ち上がって門を開けるのには二段階の指示が必要なの。1つはさっきの手で叩く合図ね。もう1つは、特定の人にしかできない合図を出すことなの。普段は、特定の人の合図を出した状態になってて、人が通るときにさっきの合図を出すから、それだけで動くんだけど、夜とかは開かないようになってるんだよ。だから、悪い人が隠れて見てても、自分で開けることはできないの」

「・・・・・・」


難しかったか。というか、私の説明が下手だな。・・・・・・私の勢いに押されたのかも?まあ、いいや。


自動ドアを筆頭に前世にあったセキュリティシステムなんかを参考にしたので、ポーラたちに分かるように説明するのが難しい。

要するに個々の合図は、開閉を司るスイッチで、特定の人にしかできない合図ってのは主電源だ。主電源を操作できるのは権限を与えられた者のみ。これは役職的な意味ではなくて、ゴーレムに魔力を記憶させた者をさす。各門を担当する騎士やそのまとめ役である上官、騎士団の管理者である騎士団長マーカス、第1中隊長ジョナスと第2中隊長アーロンら騎士団のトップ、そして領の管理者としてレーノやレーベルたちが該当する。もちろん私もだ。


登録されている者が主電源を入れることで、10分間は誰でも正しい場所・回数、ゴーレムを叩けば、ゴーレムは立ち上がる仕組みになっている。10分経てば、再度主電源を入れる必要があるが、それ自体は手間ではないので、門番を担当している騎士であれば誰でもできるわけだ。ならば10分間の猶予は不要な気もするが、想定として多くの人が出入りするようになれば、常に登録された門番がゴーレムを動かせるとは限らないので、念のためだ。10分待たずに主電源を切ることもできるので、敵が現れたら主電源を切れば問題ない。


そんな感じの説明をなんとか実演しながらすることで、おそらくみんな理解してくれたと思う。少なくとも年長組3人は大丈夫だろう。



実はこのゴーレムの一番のポイントは、このゴーレムが3体で1つ、三位一体であるという点だ。先ほどの構造に加えて、防衛機構も装備するとなると、さすがに1個の魔石に命令式を書き込むことが難しかった。個別の機能自体は、動きではないがどんな反応をするかを私がきちんとイメージできていたので書き込めたが、書き込む情報量が多く、込める魔力の量を調整しても、間に合わなかったのだ。


そこで、先ほどの主電源システムや開閉の指示を受ける担当のゴーレムと、扉本体のゴーレム、そして足で扉を閉める指示を受けるゴーレムとを分けたのだ。

指示を受ける担当のゴーレム —仮称、センサーゴーレム— は、主電源についてや開閉の指示を受けた場合の反応を司っており、主電源が入っており、適切な開閉指示が出た場合にのみ、立ち上がるように本体のゴーレムに指示を出す。逆に足に取り付けてあるゴーレムに指示を出すと、座るように指示を出す。それ以外の場合は、防衛体制に移行するように指示を出すことになる。


先ほど「特定の場所を叩くと」と説明したのは、「センサーゴーレムが設置されている場所を叩くと」という意味である。それ以外の場所を叩くと、魔獣が突進した場合と同じく、棘が飛び出るのだ。これも初見では、どこを叩いても同じに見えるので、侵入者を引っかける罠に使える。飛び出した棘は、扉ゴーレムの正面にいれば『人間』を軽く貫くだろうし。


まとめると、扉ゴーレムは、センサーゴーレムに主電源を入れて正しい開門の指示を出すと、センサーゴーレムが本体のゴーレムに立ち上がるように指示を送る。そして足に取り付けたゴーレムを叩くと、再び本体へ座るように指示が出るわけだ。

こうすることで、防衛機構の出し入れという作業も書き込む必要がある本体部分の魔石には、複雑な主電源システムの命令式を書き込まずに済むし、魔獣以外にも防衛機構を転用できるわけだ。


本当はここまで、いやもっと詳しく説明したかったけど、さすがに飽きると思うし、止めておいた。やっぱ自分が試行錯誤して頑張ったものは、詳しく説明したくなってしまう。その道のプロに質問したときに、饒舌に聞いた以上のことを話してくれるのは、こんな気持ちなんだろう。私がこの世界で最も研究しているのは、ゴーレムだしね。



それから、領都内を巡回している騎士ゴーレムや、レーベル管理の農園で農業に勤しむ農業ゴーレムを紹介して驚かせながら、領都を案内した。『アマジュ』の群生地には連れて行かなかったけど、どうせ夕食で出るし、紹介するつもりだ。


秘密も大切だが、それを打ち明けて信頼関係を築くことも大切だと思う。私はともかく、カイトとポーラは、フォブスとノリスと親友のような関係になっている。普通に行けば、フォブスが領主を継いで、ノリスがその手伝いをするのだろう。お隣さん同士なのは変わらないし、これから長い付き合いになる。不慮の事故や病気になることもあるだろう。そのときに、『アマジュの実』の存在と効用を知っているカイトやポーラに、「秘密だから、使ってあげられない」と言えるほど私は割り切れていない。


こればかりは、アーマスさんたち以外に漏らす気は無いが、逆にバイズ公爵領の人になら教えてもいいと思うのだ。

この決断がどのような結果を招くかは分からない。けれど、私にはそれに対処できる力があるし、権力もある。だから、気にし過ぎずに、良いと思うことをしようと決めたのだ。



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