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第4話 いじめの話

「……いいよ」


 俺はほんの数秒だけ迷ってから、ハッキリとそう答える。

 すると、咲茉えまは嬉しそうに表情を緩めて笑顔になった。


「えへへ。ありがとう」

「おう。……あ、一応言っとくけど俺も誰かと付き合うのは初めてだから」


 実は高校になっても、俺は一度も彼女どころか好きな人すら出来た事がなかったのだ。

 だから、正直な事を言うと、表情には出さないが結構緊張してる。


「その割には堂々としてるね」

咲茉えまもだろ」

「そうだけど」


 そう言って、お互いに見つめ合って笑い合った。


「……じゃ、ちょっと早いけどそろそろ晩ごはん食べようかな」


 キリの良いところで話を切り上げようと思い、咲茉えまにはちゃんと聞こえる程度の大きさの声で呟く。


「え、?」

「え?」


 晩ごはんと言うワードに反応して、彼女の体がピクリと動く。

 デカい地雷を踏んだのではないかと少し不安になって、慌てて咲茉えまに質問をする。


「えっと……、お腹空いてなかったりする?」

「そうじゃなくて、その……、もうちょっと話していたいなって」


 悲しそうな顔をして、彼女はうつむく。


「晩ごはん食べながらでも……」

「やだ」

「えぇ……」


 俺は昼ご飯を少な目しか食べていなくてめっちゃお腹が空いているのだが。


「……まぁ、いいか」


 今日だけは我慢してあげようと思い、しばらく言い争ってから結局彼女のわがままに付き合うことにした。







◇ ◇ ◇






 咲茉えまがいじめられ始めた時期は、確か中学の一年の時ぐらいだった。

 いじめられている事に《《気付いた》》だけでもそれぐらい最近だったので、もしかするともっと前から始まっていた可能性はある。


 彼女がいじめられている理由。

 それは、顔が良く性格も良かったから。

 ただそれだけの事で、カースト上位の女子軍が嫉妬して始まったのだ。


 アイツがいるせいで、好きな男に振り向いてもらえない、とか勝手に勘違いして。


 日が経つにつれて、いじめはエスカレートしていった。


 そして、高校に上がってからも。

 そのいじめが止まることは無かった。


 さらに、何故か面白がって、咲茉えまをいじめるのに参加するクラスメイトが増えたのが、一番彼女にとってショックだったのだという。


 中学の頃は割とメンタルも強い方だったので、高校に上がるまでは耐えられていたのだけれど。

 終わらなかったいじめで、メンタルが崩壊したのだそう。


 そして、本気で死にたいと思った日。

 屋上へ向かった。

 飛び降りる前に、蒼空そらに見つけられて、止められた。

 今まで生きていた中で、一番嬉しかった。

 涙が出るかと思った。


「…………咲茉えま


 隣で小さく寝息をたてている咲茉えまを見て、俺は声を漏らした。


 今日、彼女が寝る前に話してくれた事だった。

 私、別に顔とかそんなに良くないのにね、なんて言って笑いながら。


「…………」


 俺は咲茉えまの話を聞いて、あることを一つ、今更ながら気が付いた。


 いじめを、止めないといけない。

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