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第24話 約束

 こんなにも学校に来たくなかったと思ったのは初めてかも知れない。

 教室の扉の前までは来たのに、ピタリと足が止まってしまった。


「……はぁ」


 もし揉め事になったりしたら面倒だからな……。


 だからと言ってここでずっと止まっているのは良くないので、ため息を吐きながら覚悟を決めて扉に手をかけた。


「……おはよ」


 扉を開けると、目の前には頬を少し赤らめた玲奈れいなの姿が。俺が来るのを待ち伏せしていたようだ。

 良いことがあった日みたいな、嬉しそうな表情をしている。


 が、その表情はすぐに崩れた。


「……ん?」


 急に怖い表情をしだした玲奈れいなを不思議に思って、彼女が見ている方に視線を移す。


 そこにはちょっと怯えたように体を震わせている咲茉えまがいた。


「あー、これは……」

「……ッチ」


 玲奈れいなは俺の話なんて聞こうとせずに舌打ちすると、あとは特に何も言わずに自分の席に帰って行った。

 めっちゃ怒ってるようだ。


「まじか……。怒らせちゃったかな、?」

「……そりゃ誰だってアイツの立場なら怒るでしょ」

「全然そんな事考えてなかったわ……」


 そんな会話を交わしながら、俺は教室の窓際にある自分の席に座った。


 あまり気にしないようにしているが、周りからの冷たい視線が痛い。みんな、ゴミまみれになった人を見ているかのような目をしている。


 でも、咲茉えまが今までいじめられていたのが嘘みたいに思えるほど、彼女に攻撃的な人はいなかった。


「……はぁ」


 いつもは感じたことのない、不思議な苦しさに襲われる。


 その気持ちを紛らわすために、俺は咲茉えまに声を掛けた。


「なんで立ってるの?」


 咲茉えまは何故かカバンを持ったまま付いてきていたのだ。

 今も窓にもたれかかるようにして立っている。


「いや、自分の席に行きづらいから……」


 そう言って彼女はある方向を指差した。


「あー、なるほど……」


 咲茉えま玲奈れいなと席が近いので、今日は特に気まずくて行きにくいのだろう。


「じゃあ、俺も付いて行くからカバンぐらい置いてきなよ」

「……そうする」

「おっけー」


 俺が返事をして立ち上がると、それに反応するように玲奈れいなも立ち上がってこちらに向かって歩いてきた。

 彼女は俺の眼の前に立つと足を止めて、じっとこちらを睨んできた。


「どういうこと? 説明してよね」

「あー……、あのー、ですね」


 まさか本気で怒ってる女子に睨まれる日が来るなんて思ってもいなかった。

 しかも普通に怖くて心拍数が上がる。


「え……っと、別に《《咲茉とは付き合ってないですよ?》》」


 焦った俺がとっさに口にしたのはそんな言葉だった。

 思いっきり嘘吐いてしまった。


「ふぅーん。それじゃあ、本当に付き合ってくれるんだね?」

「…………あぁ。まぁ、な」

「そっか」


 ふと隣を見ると、付き合う約束をして上機嫌になった玲奈れいなを、咲茉えまは目を細めて睨んでいた。


 これ、嘘がバレた時どうなるんだろう。


 この先不安でしかなかった。

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