第21話 イジメを止める
家に帰ってすぐ、咲茉との話し合いが始まった。
俺と咲茉はリビングで、テーブルを間に挟むような形で向かい合って座っている。
「まず聞きたいことがあるんだけどさ、」
「……うん」
「イジメを一番最初にしてきた相手、誰かわかる? あとそれの中心人物」
俺は咲茉から視線を離さず、じっと見つめて尋ねる。
彼女は少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりと答えた。
「……どっちも、れい、な」
マジか。
本当にイジメを始める原因に俺が入っているかもしれないじゃん。
確か、彼女の話では咲茉がいるせいで好きな人に振り向いてもらえないからとかいう理由でイジメが始まったんだよな。
「映画館での話に戻るけどさ、玲奈って俺の事好きなんだろ?」
「……多分、ね」
どうやら確信しているわけではないようだ。
まぁ、俺が好かれるわけなんて無いしな。多分。
でも、イジメを止められるかもしれないという希望は見えたのは確かだ。
「……咲茉」
「ん?」
「もしかしたらイジメが収まる方法を見つけたかもしれない」
「…………え?」
そう言うと俺はすぐにスマホの電源を付けて、玲奈に宛ててメッセージを送信した。
今から通話できる? と。
ほんの数秒で既読が付き、返事も来た。
それからさらに数秒経って、玲奈から電話がかけられてきた。
「……咲茉、ちょっと静かにしといて」
「え、えぇ……?」
まだ何をするのか全くわかっていない様子の咲茉がいるが、気にせずに通話を許可する。
『ごめん! ほんとに! 許して!』
繋がった瞬間、そんな本気で反省しているような声での謝罪の言葉が飛んできた。
さすがに俺も混乱したが、すぐに何のことを言っているのか理解した。
「あぁ、全然いいよ」
『ありがと……』
「……それでさ、話があるんだけど」
『なぁに? 蒼空くん。告白かな?』
「…………」
さっきのが演技だったのではないかと思わせるほど態度の差が激しいが、そこは目をつぶって話を切り出す。
「お前、咲茉の事イジメてるだろ」
『…………え、』
突然、彼女の声が暗くなった。
『い、いや! イジメてなんかないよ! ほんとに!』
「……そっか」
『そうそう!』
まぁ、実際に玲奈が咲茉をイジメているのは見たことないが、本人が暴力を振るわれたりしたと言っているのだから嘘なのだろう。
「今すぐにイジメるのをやめろ」
『だっ、だから! イジメてないって!』
「あぁ~、俺実は玲奈の事が好きだったんだけどなぁ。人をイジメるような人なら好きになれないなぁ」
わざとらしく、煽るように俺は言う。
自分でもクソ痛い事を言っているのはわかってるし、玲奈が俺の事を好きでないなら自爆しただけになる。
だけど、そのリスクを負うのに抵抗を感じないほど、今はイジメを止めたいと思えるようになっていた。
しばらく空白の時間が出来てから、ようやく玲奈は口を開いた。
『……ごめん、なさい』
「けど、ちゃんと謝れる人なら俺は好きでいられるかも。嫉妬なんか誰だってする事だしね」
『……ごめんなさい。本当に!』
「それ咲茉に言えよ。それと、他にイジメてるやつらにも、もうイジメたりするなって言っといて。そうしてくれたら……」
俺は少し言うのをためらったが、すぐにそれを言葉にする。
「そうしてくれたら、大好き。付き合ってほしいです」
『……わかった』
玲奈はそう一言だけ返して、電話を切った。
「……え、マジ??」
「……蒼空、?」
なにが起こったのか理解していない咲茉は、きょとんとした表情を浮かべている。
「まじかよ……! おもろっ!」
チョロすぎる女の行動に、俺は腹を抱えて爆笑した。
こんな女子が身近にいるとか怖すぎる。
おそらくだが、玲奈はメンヘラ的なやつなのだろう。
それか愛が凄すぎるか。
どちらにせよ、結果オーライ。
これで全く無くなるとまでは行かなくても、イジメが減ってくれたら嬉しいな。




