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第20話 玲奈の好きな人

「アイツ、最後泣きそうな目、してた」


 次の電車を待っている間。ベンチに肩を並べて座っていると、しばらく続いていた沈黙を破るように咲茉えまはそう言った。


「……そうだな。まさかあんなに刺さるとは……」

「いい気味だったよ」

「うーん、でもやっぱり罪悪感みたいなのは感じちゃうよね……」


 いくらしつこかったからとはいえ、今更ながらそこまで言わなくても良かったんじゃないかと思えてくる。

 あの最後の顔を見たら特に。


 でもまぁ、咲茉えまをイジメている人物でもあるのだから、そんなに気にしなくてもいいはずなんだけど。


「……いいよ、あんなの。ほっといてあげて」

「でもなぁー」


 過ぎたことだからあまり気にしても意味がないけど、こういうのって一度気にし始めたら止まらない。


「ダメだって……」

「え?」

「あ、いや、その……」

「…………?」


 すごく何かを言いたそうな彼女は、我慢して言葉を飲み込んだようにも見えた。


「俺がなんかしたならごめん」

「いやぁ……、そうじゃなくてぇ……」


 全然ハッキリと言おうとしない咲茉えまは、どうすれば良いのかわからなくなったようで、目を泳がせながらあたふたとしている。


 マジで何が言いたいんだ。


「まぁ、落ち着いたら話せよ。俺ならいつでも話聞くし」

「……うん、ありがとぅ……」

「ちょうど電車来たから乗るぞー」


 そう言って俺は彼女の腕を引っ張って電車に乗った。






◇ ◇ ◇






「……ねぇ、」


 咲茉えまが突然、映画を見ているときにそう声を掛けてきた。


「……なに?」


 彼女は暗くても分かるぐらい顔を赤くして、恥ずかしそうな表情をしている。

 真面目な話が始まるのかなと思い、俺は咲茉えまの話に耳を傾ける。


「……あのさ、私のこと、好き?」

「……え?」


 どんな事を聞いてくるのかとドキドキしていたが、予想の斜め上をいくような質問だった。

 俺は脱力して、彼女の顔を見ながら答える。


「好きだけど」

「異性として?」

「じゃないと付き合ってない」


 思っていることを率直に告げると、咲茉えまは嬉しそうに表情を緩ませた。


「……そっか。よかったぁ……」

「なんかあったの?」

「……いや、だってさ、」


 と、そこまで言って止まり、少し時間を開けてから言葉を続けた。


「れいな、蒼空そらの事好きでしょ……?」

「……はい??」


 いや、もしそうなら、俺の事が好きな玲奈れいな咲茉えまに嫉妬してイジメを始めたということになる可能性があるのではないのだろうか。

 というかまず、俺が好かれる要素なんて一つも持ち合わせていない。


 これはもう少し深く話を聞く必要があるのかもしれない。

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