表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/28

第18話 会いたくない

「うわぁ……。昨日乗った電車とちょっとだけデザインが違う……!」


 駅のホームにて。

 相変わらず電車に興味津々な咲茉えまは、止まっている車両の中を確認して呟くように言う。


「そろそろ乗る電車来るからあんまり動き回るなよ」

「わかってるってー」


 そう、彼女は全然わかっていなさそうな返事を返して、自動販売機の方へてくてくと歩いて行った。


「ジュース買うの?」

「間接キスのために……!」

「……あっそ」


 喉が渇いたからとかいう理由ではないよう。


「俺は飲まんぞ」

「つまんないの。付き合ってるんだからそれぐらいしてもいいじゃん」


 咲茉えまは不機嫌そうに頬を膨らませたまま、上目遣いでこちらを見てくる。

 必死に何かを訴えたそうな表情をして。


「……まぁ、別に飲むぐらいいいけど」


 何故か彼女が可哀想な子犬みたいに見えてきた俺は、仕方なく飲むことを許可する。

 すると、パァッと表情を明るくした咲茉えまがすぐにジュースを購入した。


 ガタンッ、と機械の下の方で何かがぶつかった音が聞こえたかと思うと、急いで中から缶を取り出した。


「はい」


 そう言いながら、冷たそうな缶をこちらに差し出してきた。


「え? あぁ、俺が先なのか……」


 それを受け取って蓋を開けると、俺はジュースを口に流し込んだ。


「……うーん、」


 正直なところ、微妙な味だった。


 ラベルにはアメーバミジンコ味とか意味が分からない名前が書かれているが、その名前からは全く予想が出来ないような味であった。


 とにかく、すごく水で薄めたレモン味、みたいな。そこに何かを加えたような感じがする。


「美味しい?」

「……あんまり」

「あー、やっぱり? 名前からして美味しそうではないしね」

「なんで買ったんだよ」

「実験台にするため、?」


 咲茉えまは、チロリといたずらっぽく舌を少し出して、笑いながら言った。


 なるほど。それが真の目的だったか。


 ちょっとだけ間接キスに期待していた俺は少し残念に思ったが、顔には出さずに勢いよくジュースを全部流し込んだ。


「あぁー! なんで全部飲むの!?」

「……え、ダメだった? ごめん」

「あ、いや! いいんだけど……、うーん……。まぁ、いっかぁ……?」


 見るからに納得はいってなさそうな顔で、彼女は何かを考えながら視線を泳がせ始めた。


 それと同じタイミングで、電車の到着を告げるアナウンスが流れた。


「そろそろ来るみたいだぞ。そこでボーッとしてたら置いてくからな」


 脅すように言うと、咲茉えまは慌てて俺の隣に並んだ。

 マジで小動物みたいな動きをする。


「置いてかないで……」


 今にも泣き出しそうな表情で言われたので、さすがに焦った。


「置いてかないから! 泣くなよ!?」


 すぐにそう取り繕うように言うと、顔を上げた彼女は嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見つめてきた。


「……えへへ」

「…………」


 なんとなく恥ずかしくなった俺は、扉が開いたのとほぼ同時に電車乗り込んだ。


 開いている席を探すためにぐるっと一周見渡して、今一番会いたくない人物を見つけてしまった。


「……玲奈れいな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ