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第14話 家で

 俺と咲茉えまは時々寄り道しながら、行きの二倍ぐらいの時間を掛けて家に帰ってきた。

 楽しくてはしゃいでいたからだろうが、家に着いたと同時に結構な疲労を感じた。


「はぁー、久しぶりにこんなに歩いたな……」


 なんて呟きながら、リビングに向かってソファーに寝転んだ。

 それと同時に、目を閉じてこのまま寝たいという衝動に駆られる。


 咲茉えまがいるから我慢するけども。


「疲れたの? 体力無いねぇ〜」


 なんて彼女はからかうように笑いながら言う。

 

 何度も見ているおかげで慣れてきたが、可愛い顔をした女の子が笑うのは普通に破壊力が高いので目のやり場に困る。


「……インドア派陰キャに外出は向いてない」

「誘ったのそっちだけどね」

「そうだけども」


 俺も軽く笑いながら、本当に寝てしまわないように体を起こす。


「……そろそろ晩ごはん食べないとだな」

「彼氏の手料理楽しみにしてます」

「ダークマターでよければ作りますが」


 実は、俺は料理が下手だったりする。

 卵焼きを作ろうとすれば100%焦げたスクランブルエッグになるし、一度チャーハンに挑戦してみた事があったのだが、それはもう訳がわからないことになった。


 お母さんは何をどうすればこうなるのかがわからない、と一人で悲しんでた。

 それぐらいやばいレベル。


「まじかぁ……。さすがにクソ焦げたゲロマズ料理はいらないや」

「おい言い過ぎだろ。俺の料理見たことも無くせに」


 料理すること自体は好きなので、冗談とはわかっていてもちょっと傷ついたりする。


「……まあ、とにかく今日はカップ麺で我慢して」

「今日《《も》》でしょ? ……あれ、ちょっと気になったんだけどさ、もしかして蒼空そら毎日カップ麺食べてる……?」


 目を細めて、こちらを威圧するように彼女は訊いてくる。

 嘘吐かずに答えたら怒られそうで怖いんだけど。


「……カップ麺は一日一個です」

「ふぅん……」


 正直に答えたのに、咲茉えまは相変わらずこちらを睨んだまま静止している。

 今気付いたが、何も言われないこの時間が一番怖いかもしれない。


「え、何?」

「……太ってないの羨ましいなって」

「え、?」


 思ってたより全然重たくない事だったので、入っていた力が少し抜ける。


「私小学校の時カップ麺食べすぎてめっちゃ太ったもん。そこからあんまり食べてなかったの」

「あぁー……」


 地雷踏む予感しかしないから、あまり女子の体重の話はしたくなかったんだけども。

 なんか勝手に始まっちゃったよ。


「最近はあんまり体重とか気にする余裕なかったけどね」


 貼り付けただけのような笑顔を見せて、彼女はため息をついた。


「……そっか」

「でも多分最近太ってきてるから嫌なんだよね……」


 咲茉えまは頭に手を添えて、難しそうな表情をする。


 こんな時、どう声をかけたら正解なのかわからい。


「どうしたら良いと思う?」

「……さぁ?」


 それから約三十分ほど、彼女の言葉にただひたすら相槌を打ち続けるだけの時間が流れた。

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