第13話 感想
「うーん、正直微妙だったなー……」
俺は映画館から出て、真っ先にそう呟いた。
まず、話の内容はよく分からなかった。
とにかく伝わってきたのはファンタジーな世界なんだなということだけ。
咲茉はどう思ったのか感想を聞きたいと思ったので、余韻に浸ってぼーっとしている彼女に声をかける。
「咲茉はどうだった?」
「感動した……」
「え、」
完全に予想外の回答が返ってきて驚きを隠せずにいると、追い打ちを掛けるように感想を語り始めた。
「主人公のカイが、地球侵略しにきた巨大ミドリムシと戦う決断をしたときはグッときちゃったよ! カイがピンチの時にミドリムシに加勢した幼馴染みの子も可愛いし、アニメなのに違和感なく綺麗なのも見やすくて良かったよね!」
「……そうだな」
映画の主人公の幼馴染みは、主人公を裏切ったはずなのに咲茉はお気に入りのキャラクターになったよう。
まぁ、あんなカオスな映画を見るのもたまには良いのかもしれない。
彼女のはしゃいでる様子を見ているうちに、そう思うようになってきた。
「……はぁ」
ほんの数秒前まで元気だった咲茉が、突然暗い顔をしてため息を吐いた。
「え、? どうしたの?」
テンションの差が激しすぎて、いきなり耐えられないほどの吐き気とかめまいがしたのではないかという不安が出てきた。
それぐらい差がすごい。
「……いや、もう今日終わっちゃうんだな……って」
そう、彼女は残念そうにうつむきながら言う。
「あぁ……」
それだけ残念がるということは、恐らくだが思っていたよりも楽しんでくれていたということでいいのだろう。
それなら良かった。
「いや、でも明日があるじゃん」
「……明日も私と遊ぶの?」
「あ、嫌なら別にいいんだけどね?」
もしかすると俺が勝手に楽しんでもらえてると思ってるだけなんじゃないかと思い、判断を咲茉に委ねることにした。
すると、しばらく時間を開けてから、彼女は口を開いた。
「……別に、嫌じゃないし。出来るなら明日も、遊んでほしぃ……」
視線を俺から逸しながら、耳を真っ赤にして咲茉は言う。
だんだん声が小さくなっていったので、最後の方はあまり聞き取れなかった。
でも、嫌がっていないということだけはわかった。
「じゃあ、今日も泊まっていく?」
「泊まりたい!」
朱色に染めた顔をこっちに向けて、彼女は即答する。
「おっけー。じゃ、帰ろうか」
「うん」
そうして、今日も俺たちは二人きりで過ごすことになった。
あまり表面上には出さないが、案外俺も喜んでいたりする。