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団欒風景

登場人物を更新しました。

 

 夏樹が今話した内容をゆっくりと咀嚼していく。

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「五月蝿いわよ、夏樹。」

 

 ヒュッ パチッ

 

「痛っ!?」

 

 春華が左手の手首につけていたヘアゴムを夏樹の額に当てる。

 ・・・何故にヘアゴムを?

 

「まァそう言うことだ。」

 

「よろしくね、なつきおにいちゃん♪」

 

「よろしくお願いします。夏樹さん。」

 

「え…あ、うん。よろしく…魅姫ちゃん、由紀くん。」

 

 †

 

 テーブルの上には寿司、オムライス、ハンバーグ、北京ダック、麻婆豆腐、、キムチチゲ、刺身の舟盛り、スパゲティ、ピザ、カレー、鶏の唐揚げ、ポテトサラダ、フライドポテト、ボルシチ…

 なんて統一性の欠片も無い料理の数々…むしろ食の万博博覧会ってところか…

 

「これはどれがおかずでどれがご飯なのかしらね…」

 

 全くだ…俺と春華は良くもまあ…と呆れた雰囲気を出すが、由紀と魅姫は目を輝かせている。

 

「あ、白米が運ばれてきたぞ。」

 

「あら、ほんと。」

 

「さぁみんな! 張り切って作ったからじゃんじゃん食べてね♪ 」

 

 張り切り過ぎです…

 

「いっただっきま〜す♪」

 

「いただきま〜す!」

 

「いただきます。」

 

「フゥ…いただきます。」

 

「召し上がれ。」

 

「さて、私もいただきます。あ、深冬。ビールくれないか。」

 

「ハイハイ。」

 

 何だかんだで大量の料理を片付けるための食事は進んで行き、由紀も魅姫も笑顔をたくさん浮かべている。

 今まであまり美味しいモノなんか食べてきてないだろうから、美味しいモノをたくさん食べさせてあげたいって深冬さんの気持ちの現れと思うか…

 実際は浮かれ過ぎからだろうけど…

 

「魅姫ちゃんはなんのお料理が好きかな〜?」

 

「んっとね、カレー!」

 

「あら、カレーが好きなの?」

 

「うん、パパがつくってくれたカレーがとっともおいしかったの♪」

 

 と、魅姫がふにゃっと最高の笑顔を浮かべて俺に笑いかけてくる。

 ヤバいぐらいに可愛い…

 

「あ〜ん、可愛い〜」

 

「えへへへ…」

 

「由紀くんは何が好きかな?」

 

「僕は焼きそばが好きです。学校の給食で一番美味しいし。それに…」

 

 それに…の後にお父さんが作ってくれた思い出の料理だから…と、小さな声で喋った気がした。

 他にもいろいろな話題で盛り上がりながら夕食は進んでいった。

 

 

 

 『ごちそうさまでした。   みんな』

 

 †

 

 ピンポーン

 

夕食を終え、みんなでお茶をしていると、来訪者を告げるインターホンのベルがリビングに響き渡る。

 

「あら、誰かしら?」

 

「父さん、かな? さっき連絡しといたんで、多分そうだと思います。」

 

 深冬さんがパタパタとスリッパを鳴らしながら、玄関へと向かう。

 

「でも、一樹はよく抜けられて来れたね…」

 

「まァ…無理して抜けてもらったんで、あんまり時間は取れないって言ってましたけど。」

 

「だろうね。」

 

 千秋さんがそう言って紅茶を口元に運ぶと、リビングへと歩いてくる二人分の足音が聞こえてきた。

 

「よぉ、千秋。久しぶりだな。」

 

「相変わらず忙しいみたいだな。風樹くんと顔合わせるのはいつぶりだ? ちゃんと親としての役割果たしておけよ。」

 

 千秋さんが父さんに軽く毒を吐くが…

 

「残念。今朝ぶりだよ。」

 

 お互いが軽く笑いあっていると深冬さんがパンパンと手を叩きながらリビングに戻ってきて注目を集める。

 

「さぁて、一樹君も来たことだし…夏樹。由紀くんと魅姫ちゃんを二階に連れて行ったくれない? 風樹くんと春華にちょ〜っと大切な話があるの。」

 

 と、深冬さんは有無を言わせない物言いで夏樹に二人の面倒を見させるのを頼む。

 

「うっ…ハイ。由紀くんと魅姫ちゃん。二階のお兄ちゃんの部屋で遊ぼうね〜。」

 

「は〜い♪」

 

「…はい。」

 

 由紀は大体の事情を察したようで、こちらを見つめながら夏樹について行く。

 

「ユキは賢いわね。」

 

「人の顔色伺うのが上手くなったり、敬語を使うとかまだ良いのにな…」

 

 春華と並んでソファーに座ると大人たちも対面に座る。

 

「さて、二人を引き取るのには賛成だけど、詳しい説明はしてもらいたいわね。」

 

「分かりました。最初に…」

 

 簡単にしか話してなかった朝の出来事を改めて説明する。

 

「ふむ…手続きとかはこちらでするとして、俺は基本的に仕事が忙しくて何も出来ないぞ?」

 

「大丈夫、とは言えないけど頑張ってやってくよ。由紀は賢いし魅姫も利口だ。」

 

「そうね…私は大体家にいるから多少はどうにかなるだろうけど…簡単に大金を渡すなんて感心しないわね。あれはアナタたちが頑張って貯めたお金じゃない。それにお金で解決ってのもね。」

 

 深冬さんが言うことも痛いほど分かる…アイツ等をお金で買ったと言われても仕方ない。

 

「確かに頭にきてたのはあるわ…でも後悔はしてない。風樹も反対はしなかった。あれであの子たちが幸せになれるならむしろ誇らしいことだわ。」

 

「確かにな…で、二人は仕事はどうするんだ? 今までだって学業の合間を縫ってやり取りしてたけど、これからは家を長く空けられないし、食事の準備なんかもちゃんとしないといけないぞ。」

 

 一応俺たちは『Mode』という雑誌でモデルをしている。

 

「それは受験生ってことで元々少なめになる予定だったんで、社長ともちゃんと話し合うつもりです。」

 

「ん? 風香には連絡はしたのか?」

 

「あぁ、母さんに連絡したら“良いんじゃない? 私はアンタたちを信用してるし、信頼してるわ。それに若い頃は苦労を買ってでもしろって言うじゃない。頑張りなさい。後、今度顔見せに来なさいね。”だと…」

 

「風香ちゃんらしいわね…」

 

「そうだな、風香ちゃんの言葉が私たちの総意で良いんじゃないか?」

 

「ユキとヒメ連れてゴールデンウィークにでも会いに行きましょうか?」

 

「だな、アイツ等の様子も見たいしな。」

 

 中学校に上がった双子の妹と弟の生活も一段落する頃だろうしな。

 

「話もまとまったみたいだし、俺は仕事に戻るよ。早く戻らないと部下にどやされるからな。」

 

「あ、一樹くん。料理が余ってるから持ってきなさいよ。」

 

「悪いですよ…」

 

「いいんですよ、小父さん。お母さんが調子に乗って作り過ぎちゃったんです。」

 

「深冬さんも相変わらずだね。うん、ありがたく頂戴しようかな。」

 

「助かるわ〜。今用意するわね。」

 

 深冬さんがキッチンへと走って行く。

 

「さて、俺らも帰るか。」

 

「そうね。」

 

「ちょっと待て!」

 

「何かしら? お父さん。」

 

「お前のことを忘れてた。」

 

「おぉ…そういえば春華ちゃんのことがあったな。」

 

「今までと大して変わらないわよ。基本的には国崎家で厄介になるわ。」

 

「確かにそうだが…」

 

「良いんじゃない〜。ただ一週間に一度はみんなで顔見せに来ることが条件だけどね。」 

 キッチンにも会話は聞こえてたのか、深冬さんが大きな声を出す。

 

「それもそうだな…」

 

 話が終わったところで深冬さんが包みを持って戻ってきた。

 

「お待たせ〜。」

 

「ありがとうございます。」

 

「さて、今度こそ帰るか。」

 

 夏樹たちを呼んで、由紀たちも父さんと挨拶をしら四月一日家を後にする。

 

 

 

『おやすみなさい。   みんな』

 

 †

 

「「「「ただいま」」」」

 

 四月一日家での夕食を終え、俺たちは国崎家へ帰ってきた。

 

「とりあえず風呂沸かすか…」

 

「そうね。沸かしてくるから風樹は寝床を準備してきてちょうだい。」

 

「ん、了解。」

 

 春華が風呂場へ歩いて行くのを横目に俺は二階へと向かう。

 二階の物置と化している部屋から枕を二つ持ち出して俺の部屋へと運ぶ。

 部屋へ入ると一番目につくのがダブルサイズのベッド…実際二人で使うワケだから問題は無いけど、人を呼びにくい部屋だよなァ…なんでダブル? ってツッコミをいれられるし。

 まァいいや…大は小を兼ねるって言うし、どうせこの部屋に来る奴らは春華とのこと知ってるしな。

 

「うし、終わり。」

 

 右から俺、魅姫、春華、由紀の順で枕を並べる。

 

 「明日には由紀の家具も届くから今日だけの処置だけど…」

 

 たまには四人で寝るのもいいかもな…由紀を一人きりにさせるのも寂しそうなだしな。

 

 †

 

「今日はみんなでお風呂に入ります。」

 

 リビングに戻ったら春華が開口一番にそう言った。

 

「…理由は?」

 

「裸の付き合いって大切よね。」

 

 まァ、反対したいワケじゃないから別に良いんだけど…

 

「あの、春華さん。それは恥ずかしいんですけど…」

 

 と、由紀が小学校三年生らしい主張をするが…多分意味は無いだろうな…

 

「ヒメはみんなとお風呂入りたくない?」

 

「はいりた〜い♪」

 

 諸手を挙げて喜びを表すマイドーター…うん、悪くない響きだ。

 

「魅姫を出すなんてズルいですよ。」

 

 隣りにいる魅姫の笑顔を見て、春華を上目使いでジーっと可愛く睨む。

 妹には弱い由紀にとって魅姫は切り札のようだ。

 将来良いシスコンになりそうだな…好きな人が出来たとか言われたら、まだ早いとか叫びそうな感じだ。

 

「あら? 何がズルいか私にはサッパリだわ。」

 

 春華は相変わらず春華だった。

 

「由紀。」

 

 俺が由紀の名前を呼ぶと最後の頼みの綱とばかりに助けを求めてくる。

 

「風樹さんもなんか言って下さいよ!」

 

 そんな由紀に俺は全国のみなさんも知るアフォリズムを教える。

 

「人間、諦めが肝心だぞ。」

 

「そんな〜」

 

 と、巫山戯るはここまでにして、春華の言葉は意訳し過ぎで由紀に全く通じてないから俺が補完しないとな…

 

「ふぅ…春華はまだ由紀も魅姫(は微妙だけど)も俺らと距離感があるから、たくさんスキンシップを取ろうとしてんだろ…それに魅姫もお前もまだ子どもだ。親のぬくもりを感じないで育つなんて寂しいからさ…俺らもまだ子どもで親代わりなんか無理かもしれないけど、努力はさせてくれ。」

 

「・・・」

 

「嫌か?」

 

「嫌じゃないです…嬉しいです。」

 

 由紀は俯いたかと思ったら静かに泣き出していた。

 

「ユキ。私たちはアナタたちの親にもなれないかもしれない…でもなれる可能性も0じゃないなら私たちは最大限の努力もするわ。家族は努力してなれるものじゃないかもしれないけど、ダラダラしてなれるものでもないと思うの。私はお互いが想い合って、支え合う家族になりたい。私は今日アナタたちと出逢ったばかりだけど、ユキとヒメのことが大好きよ。」

 

 春華は由紀を強く、そして優しく抱きしめる。

 

「俺も大好きだよ。」

 

「僕も風樹さんと春華さんが好きです。僕たちをあの部屋から助けてくれて、こんなにもたくさん優しくしてくれて、すごく嬉しかったです。」

 

「良いんだよ。愛は見返りを求めないんもんだ。特に親が子どもに注ぐ愛はな。」

 

 由紀…お兄ちゃんが泣いているのを見て不安げな表情を見せる魅姫を抱き上げる。

 

「わ…パパ?」

 

「魅姫も大好きだよ。」

 

「ミキもだいすき!」

 

ピピピッ、ピピピッ

 

「風呂沸いたみたいだな。みんなで風呂入ろうぜ。」

 

「えぇ。」

 

「はい。」

 

「うん!」

 

 見事に返事がバラバラだった。

 

 †

 

「ぷはぁ〜、やっぱり風呂上がりは“銀色の缶の麦茶”だよな。」

 

「あの風樹さん。それってビー「麦茶がどうかしたか?」」

 

「何でもないです…」

 

 ※お酒は二十歳になってから!

 

「おいしそ〜、ミキものみたい!」

 

「お!? 魅姫も飲むか?」

 

「ダメです!」

 

 こうして夜は更けていく・・・

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