プロローグ
「ぼくはおおきくなったら、『偉大な人』になるんだ!」
近所の公園で遊んでいた少年はブランコに立ち漕ぎしている状態でそう打ち明けた。
「ねぇ、せいやくん。 『いだい』ってなーに?」
隣でブランコに座っていた少女が初めて聞いた言葉に興味を持ったのか、頭に『?』を浮かべていた。
「『偉大な人』ってのはね、選ばれた人しかなれないめちゃくちゃスゴいことなんだよ!」
少年は喋りながら興奮したのか立ち漕ぎの速度を少し上げた。
「それになると楽しいの?」
「もちろん! それに『しょうらいおかねにこまらない』ってお父さんが言ってたよ!」
「……よくわかんないけど、せいやくんがなるならわたしも『いだいなひと』になりたいな」
少しはにかんだ笑顔を向けてくる少女。
その言葉を聞いた少年は立ち漕ぎしていたブランコから勢い良く飛び降りると少女の方に向き直り、満面の笑顔を向けた。
「じゃあ、かほちゃんもいっしょに『偉大な人』になろうよ」
「……いいの?」
「もちろん。 じゃあこれから『偉大な人』をめざしてがんばろう」
少年はブランコに座っていた少女に手を差し伸べる。
その手を見た少女は少し照れたように少年の手を握った。
「せいやくん、その『いだいなひと』ってどうすればなれるようになるの?」
「さあ、ぼくもまだよくわかんないや」
その後、少年少女は夕日に照らされながら帰路に向かうのだった。
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