表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
装甲少女  作者: 金椎響
4/6

キラークイーン

 わたしはイライザのミニガンや重機関銃などを強化外骨格パワードエクソスケルトンに装着する。重量過多になってしまったが、構うもんか。

 ついにミニガンまでも撃ち尽くしたミシェルは、それを投棄して身軽になると大鉈で“女王蜂(クイーン)”に襲い掛かる。しかし、“女王蜂(クイーン)”も負けてはいない。

 発達した顎で大鉈を受け止めると、左右に振ってミシェルを投げ飛ばそうとする。

 無防備の腹を、シアンとソフィアが擲弾発射器や対戦車兵器で攻撃する。固い外殻は確実に割れている。紫色の体液すら漏らしている。なのに、それでも“女王蜂(クイーン)”は止まる気配はない。凄まじい生命力に、わたしは感心すらしていた。


<あいつ、全然止まりませんね>

<どうしよう、こっちの攻撃、全然通らないよ>


 シアンとソフィアが遮蔽物となるスタジアムの構造体の陰に隠れる。


<だが、大鉈を食い破る威力はない。こいつには絶対、弱点があるはずだ>


 ミシェルが宙を舞い、スタジアムの屋根へと降り立つ。そのまま身を隠す。


「未だ撃っていない場所は?」

<命中弾ってことなら、頭部と背中だな>

「二カ所だけか。助かるね」


 スタジアムの出入り口からユニットBの面々が駆け出してくる。卵と幼虫の駆除のために最深部に突入していたユニットBの連中だ。

 すると、地面が盛り上がり、それから火の柱が上がる。


<“(ネスト)”の破壊は完了しました、ファントムペイン・ワン>

「了解。ユニットBはそのままユニットCのいる地点まで後退。そろそろ祭りは終わりだ」

<そちらの援護は?>

「構わない」


 わたしは推進器(スラスター)を吹かすと、そのまま宙を舞う。

 直線的な動きは控えて、“女王蜂(クイーン)”のもとへと飛ぶ。相手もこちらの意図に気付いたようで、高度を上げてくる。わたしは重機関銃の引きトリガーを引いた。

 すぐに火線が、火を噴いたようになる。まずは牽制射撃だ。“女王蜂(クイーン)”はフルオート射撃をものともせず、火線をまたいでくる。命知らずな相手だ。羽にも穴が開いているにも関わらず、そのスピードは衰えを知らない。

 弾丸を撃ち尽くした重機関銃を捨てる。このまま持っていたところで、死重(デッドウェイト)になるのがオチだ。後生大事に取っておく必要はない。

 どちらが先に高度を取るかの競争となる。

 と、そのとき、スタジアムの頭上の屋根に取りついていたミシェルがきっかり二秒後に爆発するようあらかじめタイミングを計っていた破片手榴弾(フラグメンテーション)を降らせてくる。硬質鉄線が爆轟と衝撃波とともに“女王蜂(クイーン)”の背中をずたずたに引き裂く。


「……弱点は、背中じゃないッ!?」


 わたしは平然と飛ぶ“女王蜂(クイーン)”を見た。


「やはり頭部か」


 わたしは屋根に取りつくと、ミニガンを構える。頭上を取ろうとしている“女王蜂(クイーン)”と目が合う一瞬が、攻撃のチャンスだ。わたしは推進器(スラスター)を吹かせて、屋根の上を全速力で走破する。

 コンバットグラスが相手の予想位置を教えてくれる。だから、わたしは躊躇うことなく両腕を掲げることができた。

 両腕のミニガンが火を噴く。生身の人間が被弾すれば痛みを感じる前に死んでいるという意味で“無痛砲(ペインレスガン)”とも呼ばれる。

 はたして“女王蜂(クイーン)”は痛みを感じないのだろうか。

 火線が“女王蜂クイーン”の頭に突き刺さる。“女王蜂クイーン”が初めて悲鳴を上げる。顎をガチガチ鳴らして、こちらを威嚇している。

 ミニガンが連続発射で、銃身(バレル)が赤く熱せられている。それでも銃撃を止めない。そう、こいつが死ぬまでは――。

 はたして、“女王蜂(クイーン)”は羽音を轟かせながら、突進してくる。凄まじい自重だ。ただの体当たりでも、こちらはタダでは済まされない。ミニガンの残弾がごっそりと削られていく。持ちこたえられるか。

 無理だ。

 咄嗟に判断し、炸裂ボルトを起爆させる。残弾がちょうどゼロになる。撃ち尽くしたミニガンを捨てて、かわりに腰にマウントしていた大鉈を構えた。

 そして、突っ込んでくる“女王蜂(クイーン)”の、ミニガンの弾痕で醜く歪んだこめかみに大鉈を振り下ろした。

 ガキンと、手応えがあった。“女王蜂(クイーン)”の口から体液が(ほとばし)る。

 こうして、“女王蜂(クイーン)”は息絶えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ