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装甲少女  作者: 金椎響
2/6

なんだか退屈ね

 三つのユニット、ひとつの二人一組(ツーマンセル)、プラスイライザの一五人は、警戒しながら敵の“(ネスト)”のなかを慎重に、だけれども確実に進んでいく。

 他のユニットが粘着テープ型爆弾や炸裂ジェルを“(ネスト)”の構造体に貼ったり吹きつけたりしながらの行軍となる。


<……なんだか、退屈ね>


 イライザは無邪気な子どものようなことを言う。


「縁起でもないこと言わないで。退屈で全然構わないじゃないの」


 わたしは釘を差す。すると、シアンが苦笑しながら言ってきた。


<大丈夫ですよ。これから先には無数の“虫達(バグズ)”たちがたくさんいますから>

<そっか。ならよかった>

<何がいいんだよ、何が>ミシェルが突っ込みを入れるのを忘れない。

「ここから先は閉所での戦いになる。みんな、気をつけて」

<了解です、ファントムペイン・ワン>


 シアンとソフィアが壁にテープ型混合(コンポジット)爆薬を貼りつけていく。

 戦術リンクから信管を作動させると、“虫達バグズ”が掘削して作った壁がきれいに切り取られていく。ミシェルが怒鳴り声を上げながら、壁を蹴り倒して内部に突入する。

 内部にいたのは、全長二メートルを超えるアリ型“虫達バグズ”の群れだ。

 恐ろしく発達した下顎が脅威となる。ミシェルは重機関銃を掃射して、蠢く黒い塊たちを制するも、多勢に無勢でじりじりと後退を余儀なくされる。


「退くな。前へ進んで」

<……そりゃ難題だッ!!>


 他の壁から別のユニットが突入して、ミニガンや重機関銃を放つ。確かに、敵は面白いように撃ち倒されていく。

 だが、肝心の数が減らない。奥から次から次へと沸いて出てくる。これではキリがない。


<擲弾で穴を塞ぎますか?>

「そうしたいのはやまやまだけれども、そうすると壁に穴を開けたときに厄介なことになる」


 そのとき、奥からカブトムシ型“(バグ)”が姿を現す。

 生きている仲間ごと蹴散らしながら、ユニットCの面々へ向けて突進していく。ユニットCの四名の隊員たちがミニガンや重機関銃で必死に応戦する。


「ユニットC、全速後退」

<了解です、ファントムペイン・ワン>


 ユニットCの隊員たちが散開する。

 わたしは戦術リンクを呼び出して状況を確認する。強化外骨格パワードエクソスケルトンや兵装に多少の損傷を受けているだけで、致命傷を負った隊員はいない。不幸中の幸い、といったところだ。わたしは少しだけ安堵した。


<あの“(バグ)”をどうにかせにゃ>

<じゃあ、わたしに任せて!>


 イライザはわたしの許可をもらうよりも前に、携帯式対戦車無反動砲をぶっ放す。

 凄まじい後方噴射(バックブラスト)だ。光と粉塵で視界が奪われるのを、コンバットグラスが防ぐ。

 しかし、それでカブトムシ型“バグ”の動きが鈍る。

 成型炸薬を二段構えにしたタンデム弾頭を、イライザは撃つ。

 装甲戦車のようなカブトムシ型“(バグ)”の動きが一瞬だけ止まった。

 その間に接敵したイライザは今し方外殻を砕いた箇所に、大鉈を振り下ろす。

 その切っ先が脆弱な内部を食い破り、紫色の体液がどっと傷口から噴出する。

 そのまま動かなくなったカブトムシ型“(バグ)”の上で、イライザが両手を振って歓喜の声を上げた。

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