軽蔑と再認識
私は人間が嫌いだ。
魔法も使えないし、同属で憎しみ合うし、何より意思が弱く、言い訳する。
そして、目標だの、あーだこーだ偉そうなことをほざく癖に、何かあれは挫折だのと逃げて諦める。
そんな人間が嫌いだった。
「お母さん? 今なんと?」
二噛りしかしてないりんごを地面に落とした。大きな魔法の木のしたで、可愛らしさを残しつつも何処か儚げで、妖艶さを滲みだしている、魔法使い。
名前はラルク=セリナ
「だから、人間界で修行しておいでといっているのよ」
その魔法使いの母である、ラルク=クルセリカはニコニコとした顔で、もう一度告げた。
「嫌ですよ! あんな下世話で碌でもない生物と同じ空気を吸うだけでも嫌です!!」
「あらあら、人間のことそんな風に思ってるの?」
「えぇ、まぁ、だって実際、魔法人類学の教科書には....」
話の途中、クルセリカはセリナの頭を撫でた。
「勉学に真面目でとてもいい子よ、セリナは」
「あ、ありがとう..」
急に褒められたので、何ともむず痒い。嬉しいと恥ずかしいが同時に襲ってきた。
「ただね、人間と触れ合ってみて欲しいの、その上で、人間がどう言う生き物か、本当に忌嫌うべき汚いものなのか、感じできて欲しい」
セリナは少し疑問に思った。クルセリカは人間をなぜ庇うのだろうか。
「お母さん....?」
「あなたの言いたいことはわかるわ、その答えは行ったら自然とわかるわよ」
セリナは少しだけ、ほんの少しだけ興味が湧いた。
「私、行くよ、人間たちに対する偏見が全くないとは言い切れないし、この目でこの魔力で感じてくる」
「行ってらしゃい、何かあったら何時でも帰ってきなさい」
セリナは落ちた。
空を切り裂き、雲を突っ切り、青紫の光を放ちながら、地面に脚を付いた。
と、同時に、肩に優しく何かが触れた。
目の前にはいつの間にか、男性がいて、そいつの手が触れたらしい。
「俺の妹になってくれ!!」
一瞬、空気が凍るように冷たく感じた。
お母さん、人間に対して、誤解してました。
人間は下世話で碌でもない
なんて
そんな
生温いものではないようです。
もっともっと、危なく、知能レベルが予想を遥かに下回るようですよ。