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魔女の妹にデレデレですけど何か?  作者: 牡蠣乃 タネ
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出会いと軽蔑

少年の父は公務員で、収入は正直、驚くほど良い。公務員に成りたいって言う人もいるけど、本当におすすめだと少年は考えている。もっと言うなら、少年自身、公務員に成りたいぐらい、安定感、抜群だ。

少年の母は、とても厳格な人で、父の給料だけでも十分に生きて、生活ができるというのに、自らを高めんとする。その母の職業はダイエットアドバイザー。少年はこの職業に就いている人は絶対阿呆だと思っている。鍛えては肉だけ、鍛えては野菜だけ、この繰り返し、何か食べるときは美味しいものを美味しく頂いてこそ、意味があるような気がしていた。

そんな、大した不自由さも感じたことのない少年が今、欲しいものを見つけた。

ただ、こればかしはお金では買えない。

想像すると反吐がでるのだが、母と父のイチャコラランデブーの産物を期待する他方法がない。

一人っ子にとって不可能に等しい、しかし、憧れる存在。


少年が今、欲しいものは、それは。


【妹】である。


「ってな訳で、俺は妹が欲しい」

少年こと、朝鶴日向あさつるひなたは昼休み、教室で自分の性癖を暴露していた。

「あのさ、ヒナタ〜、それって私以外の女子に相談した?」

彼女の名前は有下月ゆうがつき。幼馴染で腐れ縁。幼稚園、小学校、中学校、そして、現在の高校までクラスがバラバラになったことはない。

「え、いや、まだこれからだけど??」

日向は不思議そうに幼馴染を見上げた。

「その発言、案外、気持ち悪いからさ、多分、私じゃなきゃ耐えることすらままならないわよ?」

頭を手で抑え、ため息一つ零した。

「ちょ、まって、まって! 変な意味じゃないんだって。上に性癖を暴露とか書いちゃってるけど、本当に、純粋に、一人っ子が嫌で、妹が欲しいって思ってるだけなんだよ!」

全力投球の弁解。

「上って? 何の話し??」

「それは、こっちの話しだからいいの!」

良く分からないことを小煩く、ぺちゃくちゃ、きゃんきゃん吠えてる少年こと、おっと、ロリコン変態野郎の異名を持つ日向の目線が痛いのでこれ以上は辞めておこう。

「そんな異名ねぇーよ!」

「急になに?? 変なのー、ヒナタってそういうとこあるよね、何というか良いやつなのは私が保証するけど、それが上手く伝わらないというか、変なやつというか、誤解されがちなんだよねー」

「そんなことないだろ? こんなんだからこそ、ツキとも仲良くなれたし、それだけで十分だろ?」

「あ、えっとー、そうなんだ....」

日向は幼馴染の顔が真っ赤になっていることに決して、気が付かないのだろう。

そして、有下月の恋は実ることは....。


これはまだ、先の話し。


「あ、そだ、ツキにお願いしたいことがあったんだよ」

「へぇ? なになに?」

ドキドキが止まらない月は、へぇ? などといつも絶対出さないような気の抜けた声を出しつつも、日向の話を聞くことにした。

「ツキんちってさ、確か、下に妹居たよね?」

「う、うん、いるよ、今年で小四かな? それで、もしかして、ヒナタ....」

ふぅー

深呼吸。

月は幼馴染で大切な人。信頼もしてる。ただこれを受け入れて貰うにはかなり難しいだろう。

でも、それでも、叶えたい!

俺は。朝鶴日向は!

「「妹を下さい!!!」」

「「通報しました!!!」」


日向は全力で頭下げた、そして、同時に月は電話を掛けた。警察に、今すぐ目の前の犯罪予備軍を駆逐するために。


「ごべんばざい、ずるしてくだざい」

日向は地面に這いつくばって謝罪した。

「あのさ、ヒナタ、やっぱ、病院行ったほうがいいわよ?」

やっぱって、一度でも、病院の話しましたっけ?

と日向は考えていると、

「おい!なんか降ってくるぞ?!」

同じクラスのお調子者、木村拓が窓の外の何かを指した。

日向も顔を上げて、膝は付いたまま、窓の方を覗くように見た。


それは空を切り裂いて、青紫色の光を撒き散らしながら、校庭に舞い降りた。

小説には例えが、ある。俗に言う比喩表現というやつだ。

でも、今回は違う。

本当にそう、表現する他ないほどに、美しく、儚く、青紫の光から垣間見える、女の子はそれはそれは可愛い幼女だ。

間違いなく全員、固まっていた。

一人は覗いて


「ツキ」

「え、なに、ヒナタ、てか、え、誰なのあの女の子」

「分からない、ただ、分かったことが一つだけあるんだ」

日向は、二階の窓から勢いよくジャンプし、地面に両足で着地、と同時に女の子の方に思いっきり走った。

「ヒナタ! 何してるのよ、危ないって」

窓から体を投げ出し、月は日向に注意した。

が、意味は無かった。

「ツキ、見つけたんだよ」


日向の目はキラキラと輝いていて、希望に満ちた表情で月に訴えた。


「俺の妹だ!!」


日向は踵を返し、幼女との間合いを一瞬で詰めて、優しく触れた。

「俺の妹になってくれ!!」


その言葉に固まっていた生徒たちは、少しづつ現状に対応した。その結果、多半数の生徒は日向を蔑んだ目で見ることになり、学校中に日向はロリコンという情報は光の速度で広まった。



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