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第7話 旅の途中

時間が無くてかなり遅くなりました。


 心一side


「ハァハァ・・・」


 今日は、晴れ渡る青空の下風が吹き抜ける草原を移動中だが。


 俺は今、流れ出る汗を拭い剣を手に、強敵を前に気が抜けず睨み合いをしている。 奴も此方をじっと見ている。今にも襲い掛かって来ようとしている様だ。

 敵は、瞬発力の高い4本の足を持ち、武器は額の角そして、特長的な長い耳を立てて此方の様子を伺っている。


 状況は、膠着状態どちらも動かず風だけが吹き抜ける。


「ハァ~。 いつまで、そうして居るつもりだ?」


 リーナが、そんな雰囲気をブチ壊しながら少し呆れた声で急かす。

 それもそうだろう。

 今、睨み合いをしている敵は、道のすぐ脇で見つけたモンスター『ホーンラビット』なのだから。


 雑魚だ。 モブ以前の雑魚だ。


(やっぱり、見るのとやるのとは違うな。)

 相手の、攻撃を受け痛む場所が気になる。


「何処を見ている! 戦いの最中に、敵から目を離すな!周囲への警戒も怠るな!」


 そう言われ、慌てて前を見ると、すでに敵が目の前に迫っておりとっさに左腕で攻撃を受け、その衝撃が全身に痛みを伴って伝わる。


「ッて~!」

 相手が小さいからと、少し侮っていたけど間違いだった。幸いリーナが、角の先を切ってくれていたので刺さる事はなかった。


 直ぐに、体勢を立て直し剣を構える。 敵は直ぐこっちに跳びかかってくる。

 

「!!」

 とっさに、足を引きすれ違い様に斬りつける。 手に、肉を断ち斬る感触。生温かい液体が頬に貼り付き、辺りに血の匂いが広がり鼻をつく。

 後ろ足に当たり、出血が激しく動きが急速に悪くなる。


 遂に、動きが止まる。

 慎重に近づき押さえつけると、最後の力を振り絞り抵抗するのが手から伝わってくる。

 それを、押さえつけ急所を一突きにする。 手に敵の痙攣と生温かさを感じ、命を確実に奪った感触が残った。


「よくやった。」

 俺の傍らに来て、そう言い頭を撫でる。


「そんな事、無い。」

 レベル1の、ステータスは平均7~10と聞いた。それを、超えるのは非常に稀だと。


(心の、何処かで浮かれ慢心していた。レベル1なのに。)

 この世界は、強者と弱者の差が激しいと、改めて認識させられた。


「これでよく分かっただろ。高いステータスやスキルだけでは、どうにもならない事がある。だから、無茶はするな。」


(先に自分の力を自覚させる為に、急に戦えと言った訳から。)

 確かに、これで無茶かどうか判断する基準になる。


「革がズタズタだが、最初はこんな物か。次からは、もっと綺麗に仕留める様に意識しないとな。」


「それが、冒険者の報酬に直結するから、仕留めかたには注意しなければならない。せっかくの毛皮を、火の魔法で黒こにしたら意味が無いからな。」


(確かに、それでは意味が無いだろうし意識しなければ。)


「これから、皮の剥ぎ取りかたを教える。」


 この間の話しから、なぜ急にこんな所に居るのか?

 これには『色々』訳がある。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 昨日(ステータスを貰って2日目)


 朝から前の日に、買って貰った防具や剣を使って練習をする。

 まずは、武具の装備の仕方やメンテナンスのやり方などを教わる。

 特に、メンテナンスは感覚的な事も多くあり覚えるのが大変だ。


 午後には、剣の使い方を教えて貰い素振りをする。


「120、121、122、123・・・。」


「剣がブレてきていりぞ。」


「クッ!」

(いきなり本物の剣で、素振りをする事になるとは。)


 見本を見せられ、見よう見真似で剣を振る。その後、正しい剣の握り方、あしの運び方、などを受ける。

 素振りを終えて、筋トレを初めリーナに言われたメニューを行う。


(キツイ!)


 俺が、しっかり筋トレをしているかは余り見ていない。

 リーナは、隣で剣を振り続けている。


(やっぱり、比べるのが間違いだよな。)


 比べるのが、烏滸がましい程なのは分かっていたが。 圧倒的

な差があった。

 剣を振る速度、踏み込む速さに足の運び方。 違いを探せば幾らでもある。


(何をするにも、まずは筋トレか。)

 そう言われて、今こうして頑張っている訳だ。


 ピルルーー


 鳴き声と共に、鳥がリーナの腕に止まる。リーナは、しばらくその鳥を可愛いがると、腕を振り飛び立たせる。

 飛び立たった鳥から、目を戻しリーナを見ると手に手紙を持っていた。


(いつの間にあんな手紙を受け取ったんだ?)

 どう見ても普通サイズの手紙だ。伝書鳩に付ける様な物ではない。


「アイツらの返事か。」

 封を切り、手紙を読み初める。


「なるほど。」

 そう言うと、此方を見て。


「喜べ、シン。明日、ここを出てある村に向かう。」

 少し笑い。


「ついでに、お前の『初めての実戦』だ。」


「・・・。」

(えぇ~。今日、特訓を始めたばかりだろ。)


 いい笑顔で、とんでもない事を言い出すリーナを、唖然と見つめる事しか出来なかった。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 っと、冒頭に行く訳だ。

 剥ぎ取り方を、見せてもらいながら思い返す。


 なかなかグロいが、この世界ではそんな事は、言ってはいられない。


(これも、貴重な俺の収入源た。)

 そう思いながら、懸命に覚える。


 解体を、終えてアイテムボックスにしまい立ち上がる。


「そろそろ行くか。思った以上に、時間が掛かったしな。」


「うっ。」

(確かに。 時間が掛かり過ぎたしな。)


 少し責任を、感じて落ち込んで居ると、苦笑いしながら此方を見る。


「なに、始めはこんな物だ。 気にするな。」

 しばらく、頭を撫でてくれた。


「むしろ良い方だ、慎重で。」


「たまに、居るんだ。剣を持っただけで、自分が強くなったと勘違いして無茶をする奴がな。」


(痛い所を、突かれた。戦い最初の方は、確かにゴリ押しだったしな。)

 さっきの、戦いを振り返り反省する。

 

「少し待て。」

 そう言い、俺に手をかざすと淡い光に包まれ、体の痛みが引いていく。


 手を見ると、傷口に光が集まり温かくなり、2秒位で光が消えた。 見る傷は、綺麗に無くなり体全体も痛みがきえる。


「これが、回復魔法?」


「そうだ。これでもう、痛くは無いだろう。」


(これも不思議だ。どういう理屈で治るた?いや、理屈なんて無くってそう言うと物と、この世界は定義されているのか?)


「怪我への注意と、周囲への警戒を、忘れるな。」

 そう言うと、歩き出す。


 リーナの直ぐ後ろを、付いて歩きながら周囲を警戒する。

(確かに、怪我は直接戦いに影響が出る。攻撃するにも回避するにも、直ぐ回復出来るとは限らないし。)


 さっき、攻撃を受けた箇所を撫で。

(何より、痛いのはイヤだしな。)


「何をしている? もう痛く無いだろ?早く行くぞ。」


「あ、うん。」

 

「そう言えば。まだ、魔法について教えていなかたな。 魔法に必要なのは、一般的に『魔力』と『知識』だ。 この本を、貸してやろう。」


(? 『一般的に』と言うとは、他に何かあるのか?)

 そう疑問に思いながら本を受け取に、名前をを見る。


 『そこの無能でも分かる魔法 初級編』


 なんかこの本、題名に悪意を感じる。しかも、注意書きが。


(この本は、あなたの様な方でも、分かりやすく解説した物です。これで分からないなら・・・。フゥ、アンタには無理だ諦めな。)


 なんか、スゲームカつく。


「魔法は教えてやりたいが、私のやり方は今のシンには無理だろうから。それで、最初は十分だ。」


「・・・。」

(本に、対するコメント無しですか?)


「?」


 無言で、付いて来る俺を不思議そうにリーナが見ている。

 そして何かに気づいたのか、あわてて必死な表情で弁解する。


「別に、教え方が下手な訳じゃ無いからな!ただ、周りの奴が理解出来ないだけだ!! ・・・本当だゾ!!」


(・・・絶対嘘だ。)

 思い返すと、剣を教える時擬音が多かった気がする。人に、何かを教えるのは、苦手なのかも知れない。


(って、そこじゃ無い!本に対するコメントは!)


「その本は、魔法を初めて使う人は、ほとんどが読む本だぞ!しかも、原本なんだぞ!」


「・・・へー。」

(こんなのでも、よく出来た『教本』なんだな。そして、最後の情報は必要なのか?)


「ちッちなみに、著者は友人だぞ!」


(なんか、よく分からない人脈だな。凄いのだろうが。)


 そんな何気ない話をしながら歩く。 

 時々途中にある、村々を通り抜ける。そこには、のどかな風景が広がっていた。


 村の中では、大人は家の仕事をしたり、集まって話し合い笑い声が聞こえる。子供達が賑やかに走り回って、親に怒られていた。

 外に広がる畑では、村人が耕していたり、土手に座り一休みしたり。

 そんな風景を、見ながら歩く。


(のどかだな。何処でも、こんな風景があるんだな。)


 日も傾き、近くの村に泊まる事になった。

 リーナは、近くに来た村長と話をしてお金を払っている。後から聞いたら、薪や井戸の使用料などらしい。

 これも、村にとって貴重な外貨獲得手段らしい。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 翌日幸運にも、目的の村に向かう馬車を見つけて、乗せて貰える事になった。


「俺の名前はディーク。ディーク・ゴルト、鍛冶屋だ。よろしく頼む。」


「私は、リーナ。 見ての通り冒険者だ。」

 そう言いながら、俺を見る。


「僕の名前は、心一です。 シンと呼んで下さい。」


「おう!ちゃんと挨拶出来るんだな!しっかり者の良い子だ。」

 そう言い、ゴツゴツした大きな手で背中を叩かれた。


(!!・・・結構痛い!)

 少しヒリヒリ痛む背中を、気にしながら視線を戻すと。


「それじゃあ、そろそろ出発するから馬車の空いている所に乗ってくれ。」


 そう言い、馬車の方へ歩いて行く。


「荷物に忘れ物はないな?」


 そう言われ、荷物の確認作業をする。

 旅装の為、そこそこの量だ。リーナが居るから、嵩張るのはアイテムボックスに入れてくれているが。

 逆に必要なのは重くても持たされている。

 

 リュクの中身は、

 着替え、数日分の非常食、大きめの水筒、ナイフ、鍋、火をおこす為のマジックアイテム、松明、、ポーションなど、何処仕舞うかまで考えなければならない。

 そして、防具を付け武器の剣を下げて、落ちないか確認する。


 体がまだ、小さいから重く感じ中々大変だ。


(こうして居ると、前に居た世界がいかに良く恵まれて居たかがよく分かるな。)

 少なくとも、旅に武器や防具を付けた記憶はないからな。


 手早く確認を終え、リーナに手を引かれなから馬車へ向かう。


「ウウゥー!」

 そこには大きな壁が、いや『段差』が立ちはだかっていた。


 乗るのが荷馬車なので、車高が高く乗る為のも無い。しかも俺は、7歳位の体で身長は当然低く力も弱い、だがそこに荷物に防具、武器を付けて重量UPだ。


 ・・・答えは簡単。 馬車に上手く登れず淵で藻掻いて居る処だ。


(重いし、防具で少し動き辛い。)

 ゴソゴソと藻掻く。 藻掻く。 ・・・必死に藻掻く。


『 注意 』

  本人は、真面目に乗ろうと藻掻いています。


 リーナは、そんな俺の姿を見て苦笑いで近づき、


「少し、ジッとして。」


 そう言い、俺の脇に手を入れ軽々と持ち上げ乗せてくれた。

 この歳で、こんな風にされるとかなり恥ずかしい。


(仕方が無いが。やはり、恥ずかしいな。)


 中々締まらないまま、今日が始まる。

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