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成功者の空中遊泳

 社会、スポーツ、遊び

 この全てに共通しているものって、何かわかるか?

『ルール』があるってことだ。

 この世のあらゆる物事にはルールが付いて回る。

 管理するのは、立派な検察や警察だったり、審判だったり、友達だったりと多種多様だ。

 けどな。

 お粗末なことに、管理する側も、される側も、ほとんどの人間はルールの真髄に気付いちゃいない。

 ――全てのルールに置いて、付け足せるルールが一つだけある。



 バレなければ ルールを破っても良い



 裏で金の取引をしていても、警察の目に入らなければ、検挙されない……

 反則で勝っても審判に気付かれなければ負けにはならない……

 誰かをイジメても、教師や親に知られなければ悪者にはならない……

 もちろん、バレないのが大前提。

 容易に行えることではないし、難しいのは事実だ。

 いつかバレるかもしれない、いや、バレない。

 そんな心配や葛藤を抱えれる精神力、もしくは、気にしない、気にならない異常性。

 普通では考えない、考えられないことを考え付く能力、度胸。

 すべてが合わさらないと成り立ち得ない。

 だが、成り立つ!

 これが、確かに成り立ち、何にでも加えることができ、上手く使えば、確実に勝つことができる必勝の――裏ルールだ。













 20xx年 ○月 △日

 東京都上空を徘徊する巨大飛行船

 飛行船は、領空侵犯など気にせずに、飛行する。

 飛行船の中には、すべてのレジャー施設が揃っていた。

 カラオケ、ビリアード、ダーツ、プール、カジノ、バー、レストラン、そのすべてが一流の施設として揃っている。

 さらにおもてなしも、高級ホテルと同等か、それ以上であり、もちろんスタッフは、全員が美男美女の粒ぞろいだ。

 そんな、どこのビップが参加しているのかと思う飛行船には、そのすべてのどの施設よりも、飛行船を占領している空間があった。

 そして、ここに招待された全ての人がそこで開催されるイベントが目的だった。

 厳かな扉から、目的の大会場に入ると、空でのパーティに招待された世界各国からの億万長者が集っている。

 世間を騒がす歌手。

 危険思想で有名な政治家。

 カルト的人気を誇るバンド。

 表には出ない裏の重鎮。

 アメリカン・ドリームを成功さえた者達。

 莫大な富を受け継いだ未亡人。

 名家の一族。

 各国の有名どころから、その世界での著名な者まで、とりあえず、金という権力を持ちし者たちが集まっていた。

 そんな彼らは、これから始まる宴を待ちわびながら、各々にそれまでの暇を楽しんでいる。


「今回は、どのような者がでるんでしょうかね?」

「楽しみですわね」

「私は、実は、少し情報を持っているんですよ」

「あなたも、こちらに参加していたんですのね」

「いやあ、それにしても、酒が進みますな」


 その集いの中で、商売をしようや、パイプを作ろうなんて無粋な者は、この中にはいない。なぜなら、そんなことをする必要がないから、彼らは超一流なのだから。

 時刻が9時を回る合図の鐘が鳴る。

 低く、しかし響くそれが鳴り止むと同時に、アナウンスが流れ、彼らは「待っていました」と、それに耳を傾けた。



『皆様、空の旅はいかがでございましょうか?

 お待ちして申し訳ございません。

 ただいまより、イベントを開始させていただきます。

 本日のイベントも、もちろん、警察の目の届くことは一切ございません。

 存分に張ってご興奮して、宴に興じていただきたい次第でございます』



 会場に常設されているモニタが、天井から下ろされ、映像が流れる。そこには、髪をオールバックに整え、ヒゲを綺麗に蓄えた男が映っていた。

 会場中の全員が、そのモニタに映る男に視線を向ける。

 男は、深々と腰を折った後、微笑み、再度口を開く。


『さて、早速ルール説明といきたいところですが、まず、本日の主役である『駒』をご紹介いたしましょう』


 男がそう言うと、会場の雰囲気がガラリと変わる――と言っても、表面上は変化するわけではない。

 空気感、肌に感じるそれが、変わった。

 各々が目を輝かせる。

 それによって――それだけで、彼らは無音のままにそれを行う。これは、彼らが本物であることの証明だった。

 モニタには、『駒』と呼ばれたそれが、紹介される。


『A:36歳 無職 男

 B:27歳 無職 男

 C:30歳 無職 男

 D:24歳 無職 男

 E:32歳 無職 男

 F:22歳 無職 女

 G:26歳 無職 女

 H:35歳 無職 男

 I:31歳 無職 男

 J:20歳 無職 男』


 モニタに、10名の顔写真と、それに伴う少ない情報が並べられていた。


「女が2人も! しかも若いな!」

「今回は全体的に若いのが多いですねぇ」

「10人もいるのか! よく集めたな」

「今回も、良いものを期待できそうだ」

「ふふふ、滾ってきましたわね」


 『駒』を確認した彼らの目が一層輝く。

 大会場は、一瞬にして、権力者の熱気が充満し、覆いつくした。




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