冒険者とは
――まず「冒険者」って?
「冒険者」ってなんだろう?
あらためて考えてみると、これという定義をつけるのは難しいものです。
ある世界では、冒険者は「猟師(ハンター)」のように描かれます。
別の世界では「私立探偵」のように描かれますし、また別の世界では「賞金稼ぎ」のようだったります。
はたまた「学生」のように描かれる世界、「商人」のように、「騎士」のように、「神様」のように描かれる世界……と、いろいろあって定まりません。
逆に言えば「冒険者」は世界にあわせて、どうとでも意味を変えて構わない、書き手にとっては使い勝手の良い職業ともいえるでしょう。
ただ本来、もっとも王道な冒険者のイメージは「傭兵」でした。
少人数で(ときには1人で)旅をする傭兵、それがファンタジー世界に生きる冒険者の、基本となるイメージなのです。
傭兵。これまたファンタジー世界にはよく登場する職業ですが、私たちの世界にも実在する職業です。
では、傭兵とはどんな職業か?
それは「武装したアウトロー(ならずもの)」です。
ファンタジーの世界に登場するアウトローといえば、その代表的なものが「山賊」ですね。山賊も武装しています。
では傭兵と山賊は同じものなのでしょうか?
およそ、その通りです。たいていの傭兵は、同時に、山賊でもあります。
彼らは、仕事があるとき(戦争)は傭兵をやり、仕事がないとき(平和)は山賊をやる、という生活をしていることが多いからです。
(あらゆる意味で乱暴な生き方ですから、当然、その寿命は短くなります)
冒険者が「傭兵みたいなもの」で、その傭兵は「山賊みたいなもの」だとすると、冒険者は「山賊みたいなもの」になってしまう・・・。
でも、それが正しいように思います。ある程度リアルに「冒険者」という職業を想像していくと、そんな感じになってしまいます。
しかし、あくまで世界はファンタジー。冒険者イコール山賊、では夢がありません。
そこで前述したように冒険者は、ときに「猟師」のように、「私立探偵」のように、「賞金稼ぎ」のように描かれ、それらの職業のイメージを重ねることで、
「ちゃんと社会生活のできるだけの良識がある人々」
「特殊な技能(剣術とか魔法とか)を持つ、ある種のエリート的な職業」
という形にしていることが多いです。
もちろん、これはリアリティという意味では、やや難があります。けれども、ファンタジー世界に登場する人物としては、そっちの方が素敵だと思います。
さて、リアルに想像する冒険者が、傭兵や山賊のイメージであるのに対し、前述のような素敵な職業である冒険者は、どんなイメージになるでしょう?
良識があり、専門的な技術を持ち、困った人を助けたりする職業……というわけで、たとえばですが「医者」をイメージすると良いでしょう。他にも「消防士」や「弁護士」などのイメージも良いと思います。
というわけでここから先、冒険者は「医者」のようなイメージを持った職業である、と考えて話を進めます。