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第4話 チョロいぜ 、…様

「ピギャー ピギャー 」


「ああっ ゲオルグ、私のゲオルグ。やっと目を覚ましたのね」


目覚めがてらにピギャーコールを発動してみれば、泣き腫らしたエカテリーナの顔がすぐ側にあった。


「3日も眠ったまま起きないから、そのまま目覚めないまま死んでしまうのかと思ったわ」


(何だって、3日も眠ってたのか。そりゃあ腹も減るよな。まずは飯をおねだりだ。)


「マッマ〜 マッマ〜 」


『そうね。マリア急いで、ゲオルグのご飯を持ってきて。それとアドルフに報せるのと軟禁中のミリアを此処へ連れてきなさい!』


(はい、ご飯ゲット!チョロインだぜ。って ええええっ〜。ミリアたん、軟禁されてたの⁇ それがミリアたんの危機って事か。)



しばらくして、アドルフが息を切らせながら走りこんできた。


「おぉおぉぅ〜 ワシのゲオルグ、ゲオルグ、よかったよかった。よくぞ目を覚ました」


アドルフは走りこんだ勢いのまま、ゲオルグを抱くエカテリーナに近寄る。エカテリーナも涙ぐんだまま、アドルフにゲオルグを良く見えるように抱き直す。


「パッパ パッパ〜」

(俺の呼びかけにアドルフ父さまはご機嫌最高潮になったみたいだ。チョロイン2号だぜ!)

〈実の御両親なのにチョロイン扱いするなんて、親の愛が報われてないですぜ、ゲオルグのダンナ〉

俺の脳内コメントにデルたんの突っ込みが入る。



その後、バタバタとミリアを拘束したアドルフの側仕え達が入って来た。


入って来たミリアに気が付いたアドルフは激昂して、ミリアに掴み掛かった。


「エルフとの血が混じる半端者の小娘が!ワシのゲオルグに何の薬を盛っておったのだ⁉︎誰の指示だ!ゲオルグが無事目が覚めた今なら素直に吐けば、屋敷からの追放だけで済ませてやる!さぁ 吐け ‼︎ 」


「御領主様。私は何もゲオルグ様に危害は加えていません。信じて下さい」


「ええい。まだ言うか? ふじこふじこ」


(うん、ゲオルグ父さま、貴族の当主がそんなに感情を曝け出すのはどうかと思うぜい。って、どんなに怒り狂ってもミリアたんを殴ろとするのは、大人気ないぜ。)


「貴方‼︎」

「パッパ。ミリ〜 わるくない」


エカテリーナ母さまと俺の声が重なる。

俺の声が届いたのか、周囲が静まり返る。


(さて、此処からどう巻き返したもんかな。

うん、デルたんに丸投げしてみよ。)


「ちれん。 デルたんのちれんだったの」


「試練? デルたん? 何を言ってるの?」

いち早く、エカテリーナが立ち直る。


「いでよ。わがしもべ デルたん‼︎」

〈無茶振りでっせ。ゲオルグのダンナ〉



「マスターの呼び声により参上しました。”小精霊”の”デルタン”で御座いやす。以後、よしなに。」

俺の影からさっきの夢で見た黒猫が現れた。

(ってデルたんめ、”たん”のゆるふわ感を”タン”ってスタイリッシュな感で言い切りやがって。なんか俺が舌足らずな感出しちゃってるじゃん。)

〈モノは言いようです☆ダンナ〉


「”小精霊”っておとぎ話の精霊の一種かしら?」

「お前のせいか⁉︎せいなのか⁉︎ふじこふじこ」

(エカテリーナ母さまはやっぱり落ち着いてるな。そして、アドルフ父さまは未だ感情ブレブレか。)

〈ゲオルグのダンナがそれを言うんすか⁉︎ ふじこ、ふじこって親子で同じリアクションじゃないですか〉


「まずは家族の方々に置かれましては、只ならぬご心労を掛けたました事をお詫び致す次第。事の次第は10日程前、屋敷の上空を通りがかった時、運命の波動ってヤツを仄かに感じたんで御座いやす。そこで波動の大元を探っていくと、ゲオルグのダンナがいやしてね。こんなにちんまい御身なのに絡み付いてる”運命線”は英雄クラス。興味深かったんで試させてもらいやした。その結果、3日間ほどダンナが寝込むことになっちまいました。」

謝罪の体を取りながらも悪びれた感が一切ないデルたん。

(おい、”運命線”っなんぞい。盛り過ぎてんじゃねえぞ、デルたん⁉︎)


「”運命線”ですと。〈小精霊〉殿」

(ほれみろ、デルたん、すぐ突っ込まれてるぞ)

デルたんが話してるうちにアドルフも少し落ち着きを取り戻したようだが、まだ興奮気味だ。


「まぁ。此処からはもう少し落ち着いてからでしましょう。ゲオルグのダンナは3日間ぶりの食事を御所望だし、疑いの晴れたミリアちゃんを解放してもいいんじゃないかな」


「そうね。ゲオルグの食事と合わせて、お茶にしましょう。いいわね貴方」


「あと、先に言っておきやすが、す〜ご〜く重要なことが含まれやすので口の硬い人限定で。でもミリアちゃんは事情の一端を知ってるから絶対に含めてね」


という訳で食事休憩。


(飯食ったし、眠くなってきたな)

〈ゲオルグのダンナ、”自由”すぎじゃね?〉

(だって、肉体年齢1歳の俺に働かせすぎ。労基へ訴えるぜ☆)

〈ダンナは「マッマ、パッパ」くらいしか、喋ってないっすよ、あっ、そろそろ休憩終わりみたいですぜ〉

(消化試合よろしく、デルたん)



「”運命線”って言うのは、この世界の歴史的な転換点で何かしらの役割を持った人物に絡み付いてる糸みたいなもんでやす。

誰しもが持ってるんですが、ダンナに絡み付いてる”運命線”は言葉じゃ表現仕切れないレベル。とてつもないモノが待ち受けていると感じやした。もっとも、それ相応の潜在的な才能もですがね☆」

(グッジョブ♪デルたん♪ チョロイン2人は親バカだからな。俺をさりげなく将来の大物っぽく褒め上げておけば、なんとかなる。作戦通り、ビシっ)

〈イヤイヤ、ダンナ さっき、あっしに丸投げしやしたよね?なら、あっしの成果を横取りですか〉

(バカめ、上司が有能すぎると部下が成長しない。部下の成長を願ってのことだ。)


「まさか。いや、やはり、あの予言はホンモノか⁉︎」

(んっ。アドルフ父さま、感情がまた隠し切れなくなってきた。と言うか、予言って何さ⁈)


「貴方、予言って何ですの⁉︎私、聞いてませんよ‼︎」

(あれっ。エカテリーナ母さまも知らないの。あっ⁉︎ ヤベ、エカテリーナ母さまがキレかけてらっしゃる?)


「いや、エカテリーナ。其れはだな。出産直後のお前を気遣ってだなぁ〜」


「貴方、政務の事なら兎も角、子供の将来のことは秘密にはしないで下さるかしら‼︎」


「ああ、分かった。だが、予言の内容はゲオルグには聞かせることが出来ないモノだ。後で2人きりの時に話そう。さて、話を戻してゲオルグの昏睡の原因が〈小精霊〉殿の試練だった今、ミリアの処遇を如何致すかだが…」

(うんうん、予言なんぞに翻弄されるアドルフ父さま、まじかわいいかも(笑)。でミリアたんのこと、どうする気なんだよ、これでミリアたんを屋敷から追い出したら、激おこぷんだぜ‼︎)

〈性格の歪みがパナいっす、ゲオルグのダンナ〉


「貴方の早とちり何だから、このまま継続雇用1択よ‼︎ゲオルグも気に入ってますし」


「しかし、それではワシの威厳が…」


「”夢魔〈ナイトメア〉”のせいにすれば問題は丸ッと解決しますぜ」


「と、言いますと?」


「ゲオルグのダンナに”夢魔〈ナイトメア〉”が取り憑いて、ダンナは昏睡状態。それに気付いたミリアちゃんが”エルフ族の秘中の儀式”を執り行ないたいと願い出る。秘中の儀式は数日掛かりの大掛かりなモノだが、使用人の1人でしかないミリアちゃんには通常業務もある。そこで余計な”邪魔”が入らぬように”軟禁”という体で儀式を秘密裏に遂行させた。結果、”無事に成功したので褒美を与えた”、ということにすればよろしいかと」


「ううむ、”敵を欺く為には味方から”という(てい)を取り繕えば、小賢しくて疑い深い連中ほど勝手に信憑性があると判断するか。しかし万が一、他の貴族家に”ホンモノの”夢魔憑き”が出現し、ミリアを貸し出せなどと言われた場合は、どうするのじゃ?」

〈えっ どうしやしょう、ダンナ〉

(考え無しか、リスクマネジメントできてねえな。秘中の儀式はエルフの一生の内に一度限り、そして一族以外に秘儀の深奥を漏らすと強力な反動の呪いがかかるってところか)

〈その設定いただきやす、ダンナ〉


「”秘中の儀式はエルフの一生の内に一度限りしか使えず、一族外に秘密を漏らすと強力な反動の呪いが秘密を探ろうとしとモノにかかる”とすれば、まず問題ないかと」

(おまっ まんまパクりやがって)

〈部下のフォローは上司のつとめですって〉


「うむ。それでいこう。となると、ミリアは正式にゲオルグ付きの侍女とし、給金も上げよう」


「あっしにもお小遣いが欲しいですね、年に金貨6枚ほど」


「〈小精霊〉殿、その額をお渡しするのは問題ないが、如何されるおつもりか?」


「あっしはこう見えて100年は生きているでありんす。ゲオルグのダンナとミリアちゃんの魔力関係の教育に色々と入り用に」


「ゲオルグの教育に〈小精霊〉殿がご助力頂けるのは歓迎ですが、何故ミリアまで?」


「魔導の深淵へ1人で進むのは厳しく道を外しやすい、一緒に歩むモノがいた方が互いに支え合えるというもの。幸いミリアちゃんにも素養は十分ありんす」


「そうだな。ミリアよ、其方を疑いこのような事になったが、これからも我が家に、ゲオルグに仕えてくれ」


「勿体無いお言葉です。ご領主様。このミリア、全身全霊でゾルゲン伯爵家、ゲオルグ様にお仕え致します‼︎」

これまで成り行きを沈黙して見守っていたミリアは涙を浮かべながら答えた。


「まぁ それじゃあ 一件落着ね、貴方。ゲオルグが眠そうにしてるし、この辺にしましょう」


(良し!ミリアたんが俺専属メイドになったぜ、ハッハッハ♪ この世の春が来た〜)


「うむ。安心したのだろうか、いい笑顔で寝ておる。では、ミリアよ、後を頼んだぞ」


こうしてミリアの危機は去った。

だが、この事が運命の女神達が弄ぶゲーム盤の駒配置をわずかに狂わせた事に気づいたモノは未だ居なかった。



(んっ? ステータスの詳細? スキルの詳細? 後で良くなくない?ミリアたんの危機は去ったことだし)

〈チョロいのは親子譲りでは?ゲオルグのダンナ〉


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