第2話 ステータスバーより大事なこと(前編)
今世での家族とのファーストコンタクトから早1日。ゲオルグは暗闇の中で目が覚めた。
「ピギャー ピギャー(知らなくはない天井だ)」
どうもエカテリーナの寝室の隣の子供部屋の子供籠に入れられているみたいだ。
うん、家族とのファーストコンタクトの前から気になってた事がある。視界の右上にある薄緑色のバーだ。周りに誰もいない事を確認してバーをクリックしてみた。
ピコン☆ と音がして、薄緑色のバーが拡大された。
日本語、英語、簡体字、繁体字、ルーン文字でもない見慣れない文字がそこには羅列されていた。
読めないじゃん。まず文字を読めるようになるところからか、遠い道程だな。なんて思ってたら。
ピンポン☆ また音がした。
ギギギギ …
『異世界言語パック現代語版をインストール開始します。インストール完了まで約2時間です。バックグラウンドでのインストール作業を推奨します。インストール完了後にはステータスバーの再起動が必要です。インストール完了後に自動で再起動するように設定しますか?』
『はい』 『いいえ』 のポップアップが浮かび上がった。
えらくシステマチックなんだなと感心しながら、すごいスピードが文字がステータスバーを流れて行くのを見ていたら気持ち悪くなってきたので、『はい』をクリックし、バーを閉じた。
うん、昨日の内にやっておけばよかったか。やることないし、一眠りしよ。まだ暗いしね。
目が覚めた。
なんか気持ち悪い。
さっきの文字列に酔ったか?
うん、それになんか冷たい。冷たい、冷たい、つめたい、つめ…。
まさか、そんな、精神年齢オーバー40かつアンダー100の俺様がそんな筈は…。
ゆうに30秒ほど葛藤したが、現実は受け入れねばならない。
そう、OMORASHIだ。
現実はなんて残酷なのだ。
嘆いても事態は変わらない。
ここは赤ん坊限定スキルを使うしかない。
いざ、華麗なるピギャーコール〈赤子の大泣き〉発動!
ピギャーコールが発動すること3分、昨日のメイドより年若いメイドが駆けつけてきた。
「ゲオルグ坊っちゃま。どうされましたか?」
そう言ってメイドは俺の様子を観察し、俺が緊急事態に陥っている事を把握した。
「安心してください、ゲオルグ坊っちゃま。ミリアにお任せください!」
ミリアというらしいメイドは有能みたいだ。俺を抱き抱えて適切に”処理”してくれた。
うん、貴族たるもの信賞必罰だ。ここは感謝を伝えるべきだ。というか、リップサービスしかミリアに報いるものがない。
「ミリ〜 ミリ〜 ありあと♪」
俺からのお礼の言葉に驚愕した表情を浮かべたミリア。
「勿体無いお言葉です。これからもお世話に励みますので何卒、ゲオルグ坊っちゃま」
「ミリ〜 ミリ〜 よろちく」
「はい、では失礼します」
顔を真っ赤にしてミリアは部屋を出て行った。
たどたどしくお礼を述べる俺に対し、ミリアの好感度がアップしたようだ。うん、ミリア可愛かった。昨日のマリアさんが30代前半から半ばだと思うが、ミリアは多分15、6才で俺が大人になる頃には…なんてゲスな事を考えていたらまた睡魔が襲ってきた。そう言えばミリアの耳が少し長くてトンガっていた様な。よし、これからは”ミリアたん”と心の中では呼ぶとしよう。
他にも何かやることがあった様な。
まぁいいか、寝る子は育つ。
ビバ 赤ちゃんライフ。おやすみzzz