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「はい、皆さんどうもこんにちは、ヒロキンちゃんです。今日はコンビニで珍しいお菓子を見つけたので紹介したいと思います。」
録画を始めたビデオカメラの前で、一人の男が商品紹介をしている。男は動画投稿サイトに動画を投稿し、それで生計を立てていた。男からすれば、いわばこれが仕事なのである。
男が利用している動画投稿サイトは、閲覧数に応じて収入が変わる。閲覧数がそのまま収入に繋がるので、男のように動画を投稿する者にとって、「いかに人に見てもらうか」という事は非常に重要な問題なのであった。
事実、全盛期には何十万人と閲覧数を稼いでいた男の動画も、最近では数千人と下降の一途を辿っている。
ブームの下火。
玩具、お笑い、音楽…。流行り物にはいずれ終わりが来る事を男も分かっていた。
しかし、今さら別の人生を歩めるほど器用でもない。あのビデオカメラの向こう側の人達を、もう一度振り向かせる。俺はそれをやってきた。俺にはそれが出来るのだ。
「こんな動画じゃダメだ!!」
男は再度、動画を撮り始めた。
「はい、皆さんどうもこんにちは。ヒロキンちゃんです。今日は皆さんに、とっても面白い動画を見せたいと思います。いいですか? 絶対見逃さないでくださいよ…。」
そう言うと、男はおもむろに高濃度の硫酸を頭から被った。