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2-2 ようやくではありますが、行動方針が決まったようです

 そして再び作戦会議が行われる。

 前回から今回に至るまでに、小さな会議(というか話し合い)は何度も行われてきた。

 それらを踏まえて、意見をまとめるための会議となっている。

 基本となるのは世界征服計画<極秘戦略ε(いぷしろん)>についてになる。

「では、あらためて<ε>について話を進めていこう」

 総統閣下の声によって会議が開始される。



 <ε>の骨子については、基本的に様々な事業計画などとそう変わらないものとなった。

 最終目的と、そのために必要になる時間・費用・人員・資材などなど。

 それらの大雑把な算出である。

 それらを元に、これから何をしていくか、どうやってそれらを確保していくかについての試案の提示。

 これらの発表が会議の中心となっていった。

「大雑把な説明は以上になります」

 悪魔参謀長の言葉で説明が終わった。

「思った以上に大変な事になりそうだな」

「はい」

 総統閣下の声に、悪魔参謀長は率直に答えた。

「やはり、現在の人数や備品などでは世界征服は到底かないません。

 分かってはいた事ですが、あらためてまとめると絶望的になるくらいです」

「うむ。だが、それでも方策はあるのだろう?」

「はい。

 先ほど申しましたが、足りないなら手に入れれば良いのです。

 何から始めるかというのが難しいところですが」

 やるべき事も必要な物も数限り無くある。

 何から手をつければいいのか分からなくなるほどに。

 数多くの資料を目に通し、<ε>をまとめた悪魔参謀長だけに、その難しさをこの中の誰よりも認識してる。

 総統閣下もなすべき事の難しさは理解していた。

 何せ世界征服である。簡単にできるわけがない。

 だからと言ってへこたれるわけにもいかなかった。

 悪の秘密結社としての存在意義に関わるのだから。

「まあ、出来る事からやっていこう。

 それで、今我々に何ができるのか。

 それが問題だ」

 何をやるにしても、自分たちの持ってるものを使うしかない。

 金にしても、道具にしても、人員にしても、時間にしても。

 それを越える事はできないし、越えれば必要以上の無理を背負うことになる。

 特に資金も人員も全然足りてない弱小組織である。

 選択を誤ればすぐさま潰える。

 総統閣下にとってそれは避けたいところだった。

 ようやく出来あがった彼と仲間の夢の結晶だ。

 無理をして壊したいと思わない。

 悪魔参謀長の回答はそんな総統閣下の思いにこたえるようなものだった。

「まずは資金、正確には収入源の確保です」

 単純明快、簡潔明瞭な言葉だった。



 何をするにも金はかかる。

 その金を稼ぐ手段が必要になる。

「なるほど、確かに」

 総統閣下もそれは分かる。

 日々の生活にしろ、秘密結社としての活動にしろ、何かしら金がかかる。

 現在、手弁当で行ってる組織運営だが、このままで続けられるわけがない。

 <秘密帝国ザルダート>にはそれを支える収入が必要だった。

 定期的に入ってくる資金が。

「その為に何を?」

 問いかけに悪魔参謀長は考えを示していった。



 そして。

 夜の町に<秘密帝国ザルダート>の戦闘員達が展開していく。

 彼らは手にした地図とポストイットを使い、町の中のあらゆる商業施設を書き込んでいく。

 地味ではあるがこれも歴とした作戦である。

 まず、どこに何があるのか。

 それを可能な限り細かく網羅する。

 実際に何かをする前に必要な作業だった。

 今回の作戦の場合、商業施設が目標となる。

 個人経営の八百屋や魚屋、肉屋にはじまり、床屋に美容室、パン屋にクリーニング屋。

 コンビニやスーパーも当然おさえていく。

 その他外食産業として蕎麦屋やラーメン屋、定食屋も。

 町にある細かな店を次々に確認していく。

 さほど規模の大きな町ではないが、一つも漏らすことなく調べるとなると相当な手間がかかった。

 だが、やらねばならい。



「成功させたいものだな、悪魔参謀長」

「はい」

 総統閣下は作戦室(中古住宅の居間)で悪魔参謀長に声をかける。

「前回が前回でしたし」

「うん。

 まあ、あれはあれで成功したからいいんだけど」

「でも、成り行き任せでなし崩しでしたからね」

「…………」

「…………」

「次は、ちゃんとした作戦で成功したいね」

「はい。

 そのために、今回は皆にがんばってもらってますし」

 その努力が実るかどうかは別の話である。

 だが、怖いので二人ともそれを口にする事はできなかった。

「まあ、なんとかなるだろう」

「何か勝算でも?」

「まさか。

 でも、信じてない事には、どんなに成功する可能性があっても上手くいかないから」

「なるほど。

 病は気からの逆ですね」

「ああ。

 始まったばかりの今、上手くいくよう願わないで何が成功するか」

 それでも失敗する時はするだろう。

 しかし、成功しようと思わなければ決して成功に至るまでの努力も継続もない。

 総統閣下は自分のこれまでの人生経験からそれを多少なりとも学んでいた。

 悪魔参謀長もそんな総統閣下に頷いて応じる。

「成功させたいですな」

「ああ、この作戦。

 <ご町内制圧作戦>をな」

 実際にはもっと格好いい作戦名がつけられているが、面倒なのでそれを用いる機会は少ない。

 だが総統閣下は、ようやく作戦らしい作戦が出来た事を喜んでいた。

 そして、この作戦が成功するよう心の底から祈っていた。



 何より、悪の秘密結社らしくなってきた事に、少しばかり心ときめかせていた。


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