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1-3 彼らは幼稚園バスに乗り込むようです

「こちら突入班、準備が整いました」

「偵察班より入電、ただいま、目標が前方を通過しました」

 トランシーバーから流れてくる声に、全体司令部となってる秘密結社基地(都市部からはなれた中古一戸建て・全員で共同購入・総額100万円あまり)に緊張が走る。

「了解。突入班、作戦通りに行動せよ」

「了解。目標発見、これより突入します。

 ザルダート万歳!」

 間に中継機をいくつか挟んでるので、声にノイズが幾分混じっている。

 それでも声を妨げるほどではなく、当事者たちの声は総統閣下や悪魔参謀長をはじめとする首脳部にも伝わってきた。

「いよいよ始まりますね」

 地獄参謀長の声が緊張している。

 この作戦を作り上げるまで知恵を絞り、仲間をまとめあげていた彼も、いざ実行となるとやはり不安は隠せないようだった。

 それは司令部(住居の一階居間部分)に詰めてる者たちも同じで、固唾をのんで成り行きを見守っている。

 現地からは、リアルタイムで映像が流れてきている。

 公表はしてないが、インターネット放送によって何が行われてるかははっきりと分かる。

 現場には、前線指揮を担当する地獄将軍(秘密結社内の役職)と、戦闘の中心となる怪人ゴリラ男(ゴリラのマスクに、防弾チョッキ仕込みの分厚い着ぐるみ装着)がうつっている。

 画面というかカメラにとらえきれてはいないが、その端には数で周囲を制圧するための戦闘員たちの姿も時折うつる。

 統一感を出すために、全員がホッケーマスクをかぶっているはずだった。

 また、防具として防弾・防刃チョッキを着込んでいる。

 その他、移動のために軽ワゴンが二台現場にいるはずだった。

 そんな前線部隊総勢十人は、カメラに映ってるバスを見るや、画面越しでも分かるほど緊張していく。

 昼下がり、のどかな町の中を走るマイクロバス。

「来ましたね」

 悪魔参謀長がつぶやく。

 それを聞いて総統閣下は、なぜか気分が落ち着くのを感じた。

 緊張しすぎで逆に弛緩してしまったのか。

 はたまた、別の誰かの緊張を見て自分が落ち着いてしまったのか。

 それはわからない。

 しかし総統閣下は画面とトランシーバーに向けて、淀みなく指示を出すことができた。

「作戦開始、幼稚園バスジャックを遂行せよ」

 悪の秘密結社の定番的な作戦の一つがここに開始されていった。



「動くな!」

 突然の急停車、それからこじ開けられた扉。

 入ってきたゴリラ男とホッケーマスク。

 そして最後に入ってきた、軍服にマントと言ったほうがよい格好の男。

 一気に騒然となる幼稚園の通園バスに響き渡る怒鳴り声。

 エプロン姿の先生も、スモックを来た園児も、初老の運転手も全てが凍り付いた。

「よーし、静かになったな。

 そうやってこちらの言うことを聞いていれば、痛い目にあうことはないぞ」

 悪役そのもの台詞を吐きながら、軍服姿の男────地獄将軍────がバスの中を見渡す。

 その様子は、カメラを通して司令部にも伝わっていた。



「なかなか堂に入ってるな」

「ええ、彼は演劇部だったとの事ですから」



 一体何事かと驚く幼稚園関係者達を見ながら、地獄将軍とゴリラ男と戦闘員達は、バスの中の狭い通路を占拠する。

 さして大きくもないマイクロバスなので、彼ら全員が乗り込んでしまうと身動きがとれないほど窮屈になる。

 それでも運転手や先生などの大人達は、奇抜な格好をした者達にどう対処していいのか分からず青ざめている。

 園児のほうはというと、これはこれで動きを止めている。ただ、怯えてるのかというとそういう感じではない。

 やはり子供という事で、不振人物の怖さというのがまだ分かってないのだろう。

 どちらかというと興味深く乗り込んできた一団を眺めていた。

 と、その時。

「すごーい!」

 園児の一人が歓声をあげた。

「レッドマンだ!」

 予想だにしてなかった反応であり声である。

 その言葉に地獄将軍以下怪人・戦闘員達は固まってしまった。

 しかし次の瞬間、男子を中心とした子供達から歓声が飛び出してくる。

「これ、次の怪人?」

「ヒー! って言ってるやれる人たち、格好が変わっちゃったの?」

「ねえねえ、レッドマンはいつ来てくれるの?」

 口々に地獄将軍達に聞いてくる。

 それだけに留まらず、掴みかかってきておねだりするように彼らを揺する。

 本来なら、ここで園児達を怖がらせるはずだったのだが。

「…………ええい!」

 地獄将軍はそんな子供達を振り切るように大声を上げる。

「よく分かったな!

 その通り、我々はこの世界を征服するため、にくきレッドマンと戦っているのだ!」



「レッドマンというと、最近やってる戦隊ヒーローか?」

「ええ、確かそうでしたね」

 送られてくる映像を眺めながら、総統閣下と悪魔参謀長はそんな事を確認した。



「お前達が先生のいう事を聞いているかどうか。

 お父さんお母さんの言いつけを守らなかってるかどうか。

 それを確かめに来たのだ。

 もしそれが出来ない子がいたら…………このまま我々の基地に連れて帰るぞ!」

「ええー!」

 子供達はどこか楽しそうに悲鳴をあげた。

 その声にあわせるように、ゴリラ男が「うおおおおおおお!」と低いうなり声をあげた。

 戦闘員達も「ヒー!」とかけ声をそろえていく。

 子供達はそれを聞いて、更に気分を盛り上げていったようだった。

 そんなマイクロバスの後ろの方をバックミラーなどでちらちら確かめていた運転手も、

「なあ、あんた」

と小声で近くにいた戦闘員に声をかける。

 気づいた戦闘員が、運転手によっていく。

「これ、何かの出し物なのか?」

「え、ええまあ。そういうもんだと思ってもらえれば」

「はあ…………いきなりで驚いたけど、じゃあ、それも驚かそうと俺たちに黙ってたのかなあ」

「あ、すいません。臨場感を出すために、どうしても本番まで黙っておけって言われてたんで」

「なるほどなあ。んじゃあしょうがないか」

「色々迷惑おかけします。あ、バスのルートはいつもと違う方向で」

「ええ? いいの?」

「それも予定のうちなんで」

「はあ、色々あるんだなあ…………」

 疑うこともなく運転手はその声に従い、バスを動かしていく。

 通常の移動ルートを外れたバスは、町の外れの方へと向かっていった。



「どうもおかしな事になってるな」

「いやはや。作戦通りにはいきませんなあ」

 司令部にいる者達も呆然としている。

 前線に何か指示を出したいところだったが、いったい何をどうすればいいのかさっぱり分からなかった。



 そうこうするうちにバスの中は盛り上がり、突発的なヒーローショーのような状況になっていく。

 子供達は男女関係なく楽しんでおり、同乗していた先生も今では表情を和ませている。

 運転手も、後ろから聞こえてくる歓声に相好を崩していた。

 地獄将軍以下、秘密帝国ザルダートの面々も、子供達を盛り上げようとあの手この手でがんばっている。

 そのほとんどがシナリオのないアドリブであったが、演劇部だったという地獄将軍のおかげで、それほど悲惨なボロを出さずに済んでいた。

 最後には一緒になって歌をうたいだす始末である。

 そんな調子でバスは進む。

 方向は運転手近くにいた戦闘員が、「そこは右で」「ここはまっすぐでお願いします」とその都度指示を出していた。

 進行方向については事前の計画があったので、手間取る事はない。

 そのまま行けば、町を外れて郊外に出て、彼らが見つけた廃墟へと進んでいくはずだった。



「なあ、参謀長」

「なんでしょうか、総統閣下」

「これ、もう当初の計画変更でいいんじゃないかな」

「ええ、私もそう思っていたところです」

「…………」

「…………」

「計画や作戦にこだわらず、予想外の展開には柔軟に対処しないとな」

「まったくです」



 かくてトランシーバーを通して地獄将軍に連絡が入り、廃墟へと向かう予定は変更となった。

 その事を運転手に伝え、道を案内していく。

 だが、地獄将軍には子供達の相手をするという新たな任務が与えられていた。

 なので、その役目は運転手横の戦闘員に引き栂れた。

 当初の計画と違いバスは、大きく迂回する形になるが元の町に戻る事になる。

 その道は、司令部から伝えられる事となった。

 地獄将軍達は、その途中でバスを降りる予定になった。



「それではお前達!

 ちゃんと先生の言うことを聞かないと駄目だぞ!」

「はーい」

「勉強もがんばるんだぞ!」

「はーい」

「ご飯を食べたら、ちゃんと歯を磨くんだぞ!」

「はーい」

「外から帰ったら手を洗うんだぞ、石けんをつけてな!」

「はーい」

「もし守れなかったら、お前達をさらいに来るからな!」

「「「「「わーい!!」」」」」

 子供達の歓声があがり、マイクロバスの中の盛り上がりは最高潮に達した。

 最後にバスを降りた地獄将軍とゴリラ男、そして戦闘員達は、並んで手を振って見送った。

 子供達も、窓を開けて身を乗り出したり、後ろの窓から手を振ってくれた。

 双方の間に、暖かな心のやりとりが生まれていた。

 そんな彼らを、バスの前後を固めていた軽ワゴンが回収していく。



「…………これは、成功といってよいのかな」

「…………誘拐して、親を通して要求をする、という作戦目標は失敗でしょうな」

「だよなあ」

「そうなんですよ」

「でもまあ」

「はい?」

「子供達をたぶらかして手なずける事に成功はしたって事で」

「そうですな、それでよろしいかと」

「作戦目標とは違った形だが、戦略目標はかなえられたという事で」

「支持者は確実に増えましたな」

 総統閣下と悪魔参謀長は、そういって今回の一件を締めくくることにした。



 そして後日。

「お前達!

 良い子にしてたか?!」

「あ、地獄将軍だー」

「ゴリラ男もいるー」

「ヒー、の人たちもいるよー」

 マイクロバスに乗り込んできた地獄将軍一同を、子供達が迎える。

 その後の調査で幼稚園にて結構な人気となったようなので、その後もゲリラライブ的にマイクロバスにお邪魔するようになった。

 子供達が楽しんでくれるという事で幼稚園側も黙認状態である。

 ただ、親が心配するので、乗り込む前後に連絡は欲しいと言われた。

 その親も、彼らが乗り込んだ日からは、たいてい子供達がよい子にしてくれてるので、襲撃を歓迎するようになっていた。

 なので約束事を守って彼らは、幼稚園バスへの襲撃を繰り返している。

 さすがに頻繁に襲うのもどうかという事なので、二週間から三週間に一回くらいの割合にしていたが。

 子供達はそれを楽しみにしていたし、地獄将軍達もそれは同じだった。

 悪の秘密結社としていかがなものだろうと思う事はあったが、占領する対象の支持を得てるという事でおおむね問題なし、となっていた。

「では、今日もいくぞ!」

 ノリノリな地獄将軍の声に、園児達の声が返る。

「はーい!」

 幼稚園の帰りは今日も賑やかになりそうだった。



「時に悪魔参謀長」

「はい、総統閣下」

「我々、秘密帝国ザルダートはこんな事で良いのかな?」

「うーむ。正直に申し上げますと、いささか違うのではないかと」

「だよなあ」

「はい」

「…………」

「…………」

「よし、次の作戦にうつろう。今度こそ悪の秘密結社らしい事をするのだ」

「かしこまりました」

「すぐに作戦会議を開く。主な幹部を集めろ」

「は!」

 秘密帝国ザルダートの暗躍はまだまだ続く。

 といったところで一端区切りです。

 まあ、内容については何も言わないでください。


 今回は、連載形式の機能確認もかねて投稿してみました。

 今まで短編をやっていたから、こっちの機能はどうなってるのか分からなかったので。

 そちらの方は、これを投稿してる時点ではまだ投稿した後の確認がとれてません。

 予約投稿機能もあわせて使っています。


 それで、お話の方ですが。

 何も聞かないでください。

 何も言わないでください。

 一応ここからもまだ続けるつもりではありますが。

 続けていいのかな?

 色々と悩んだり心配してしまいます。


 でも、楽しんでくれる人がいたなら、それで良いのかなとも思います。

 それでは、また次回。

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