5-2 何気ない一言が、転機になったり閃きをもたらしたようです
組織内部でも問題も山積み、新たに生まれてすらいる<秘密帝国ザルダート>であるが。
外部においても問題は多い。
新たに始めた派遣業の事ではない。
それもそれで色々と問題があるが、それ以外にも問題が持ち込まれるのだ。
その一つに、総統閣下はつきあっていた。
「…………というわけでねえ」
説明というか愚痴というか。
そのどちらでもある事を言い終えた男は、「どうにかならんもんですかねえ」と総統閣下に尋ねた。
「いや、そうは言いましても」
そう言い返すしかない。
話は、男のやってる事業についての事だった。
今まで細々と続けていたが、最近は更に営業が厳しくなったという。
それをどうにか出来ないものかという話しだった。
どうにかしてあげたいという思いはあるが、すぐに答えが出るような問題ではない。
励まし、慰めたいとも思うが、だからと言って思いつきなどで答えるわけにもいかない。
男の生活がかかってるし、彼の抱えてる社員数人の人生もかかってる。
軽く考える事はできない。
「とはいえ、俺もあれこれ意見ができるようなわけでもありませんし」
「まあ、お門違いなのは俺も分かってるんだけどねえ」
総統閣下の男に、悩みをもちかけた男はそういって微笑んだ。
寂しい笑顔である。
「いや、愚痴を誰かに聞いてもらいたくてね。
自分だけで抱えてちゃやりきれなくなっちゃうよ」
「はあ、そうでしたか」
その気持ちが分かってしまうだけに、無碍に扱えない。
今や<秘密帝国ザルダート>の総統閣下として多くの人間を率いる立場である。
立場も規模も違うとはいえ、上に立つ者としての苦悩は他人事ではなかった。
「すまないねえ、つまらない話を聞かせちゃって」
そういって男は立ち上がり、アジトをあとにする。
その後ろ姿を総統閣下は、黙って見つめるしかなかった。
「どうにかしてあげられないんですかね」
お茶を片付けながら女子中学生が声をかけてくる。
休日の今日、いつものように手伝いにきていた彼女は、来客にお茶をだしたりしていた。
話には加わってなかったが、聞くとはなしに聞こえてきたのだろう。
狭い家だ、ちょっと声が大きければある声は筒抜けになる。
まして家の中の整理整頓をしていた彼女の事、時折離してる傍を通る事もあったのだろう。
「難しいなあ」
彼女の気持ちもわかるが、どうにかできるというものでもない。
ようは、受注できる仕事があるかどうかといった事にいきつく。
それがどうにもならないから行き詰まってるのだ。
他にも、後継者問題とか人手を増やせないとかいうものもある。
逆に人手が余ってしまい、どうにもならないというのもある。
今回に限らず、様々な人が聞かせてくれる悩みは人それぞれ違う。
それらを一つ一つ解決するのは簡単ではない。
個別の状況を考えてそれぞれに対策や対応を施していく必要がある。
「みんな、それぞれ悩みは違うからねえ」
それは女子中学生にも分かっているようで、だからこそ何も言えなくなっている。
「みんなで協力できればいいんでしょうけど」
「そうだなあ、でも…………」
ふと、その言葉に何かが引っ張られてくる。
(まてよ……?)
おそらく、何気なくいっただけなのだう。
特別な意図があっての言葉ではあるまい。
だが、女子中学生の言葉は総統閣下に一つの考えをもたらした。
「ふむ…………」
頭の中で色々整理する。
やってきた者達が口にしていた悩みと、それぞれの現状。
それらに対して、思いついた何かをあてはめてみる。
(うん、これなら…………)
全てが解決するわけではないにしても、それで問題は結構改善されそうな気がした。
考えをまとめないと何とも言えないが、あながち悪い事でもなさそうに思える。
「それ、いけるかもな」
「え?」
唐突に言われて女子中学生が驚く。
だが、それにかまわず総統閣下は、幹部にメールをとばし始めた。
「────と思うんだ」
その日の緊急会議で、総統閣下は昼に思いついた事を示した。
悪魔参謀長、地獄将軍、奈落長官の三人は、感心したり考え込んだりしていく。
反応はそれぞれだが、出されたアイデアについて何かしら思うところはあるようだった。
「まあ、確かにそれも良い案だとは思いますが」
「上手くいきますかね」
「良い線行ってると思いますが」
簡単にできる事ではないのは全員分かってるので、すぐに実行しようとはならない。
だが、いくつかの問題もあるにせよ、悪い考えではないとは思っているようだ。
「まあ、さすがにすぐには無理だろう。
うちが今そんな状態だし」
「ですよね」
地獄将軍はここ最近の組織における騒ぎを思い出してしまう。
何かが変わるというのはそれだけで大混乱を発生させてしまう。
乗り越えれば新しい世界も開けるのだろうが、そこに行き着くまでが大変だ。
「今までのまま、というわけにもいかないのでしょうが」
奈落長官もやらねばならない事だと分かってるだけに反対とはいわない。
ただ、賛成するにしてもその先に待ち受ける苦労があるから、迂闊に賛成もできない。
「でも、やるというんですか?」
「ああ」
悪魔参謀長の問いに、総統閣下は頷く。
「でなければこのまま終わる。
そうなれば、俺たちも終わりだ」
表向きの派遣業も、働く場所があって成り立ってる。
その働き口は様々な会社が提供してくれている。
失うわけにはいかなかった。
「しかし、やるとなると一つ二つに手をつけるだけ、というわけにはいきません。
関わる全てを相手にしないと────」
「分かってる」
だとしても、やらねばならなかった。
「どこまで出来るか、どれほど意味があるかわからない。
それでも、やるしかない」
先々の事を考えれば考えるほど、後回しには出来なかった。
まずは準備だけでも済ませておく必要がある。
「分かりました」
総統閣下の決意をよみとり、悪魔参謀長も頷いた。
「必要な筋道の探索と策定に入ります」
「中の事は、こちらで受け持ちましょう」
奈落長官も続く。
「じゃあ、話は俺らで伝えてきます」
地獄将軍も従った。
意志が一つにまとまったのをみて、総統閣下は宣言する」
「では、業界再編だ」




