4-2 対立勢力とみなして彼らは全力を出します
催しの準備の途中で起こった騒動。
それによって捕まえたロクデナシ達を連れ去ってから数時間。
様々な手段を用いた尋問により、色々な情報が集まった。
「また面倒な連中ですなあ」
悪魔参謀長はぼやくしかなかった。
「町の中心あたりを根城にしてるらしいんですが。
いや、前の連中よりよっぽど面倒ですよ」
「そうだな。
恐喝による金銭強奪に、薬の売買と。
学校を根城にしてるようでもあるし。
こりゃ、下手な悪党よりよっぽど組織だってる」
「やってる事はともかく、制度化・組織化されてる所は見習うべきものがありますな」
それ以外には何一つ価値が無い、と言外に言っている。
「で、対策や対応は?」
「前回と基本的には同じです。
まあ、情報を更に集めて、より効果的にやらなければならないでしょうが」
「そうだな。
これだけやってるとなると、裏に何かがついてるかもしれんし」
「ですね。慎重に事を運ばないととんでもない事になりそうです」
そのあたり彼らも慎重だった。
逃げ出したり後ろに引っ込むつもりもなかったが。
「まあ、遠慮する事無くどんどんやっていこう」
総統閣下の言葉に、<秘密帝国ザルダート>は「ヒー!」という応答と敬礼でかえした。
情報については、まずは協力的な者達から集める事になった。
八百屋さんをはじめとした、町内会ご一同からの話。
彼らの伝手をたどっての協力者の確保。
今回、催しの準備中での事だったので、事の次第を知ってる者達にも声をかけた。
その結果、思った以上に多くの情報が集まり、敵の概要がかなり把握できた。
「これまた予想外ですな」
地獄参謀長は日に日に集まる情報に驚きを隠せない。
前回もそうであったが、今回もここまで多くの情報が集まるとは思ってもいなかった。
しかも短時間での事である。
今少し時間がかかると思ってたのだが、そこは良い方向に予想が外れた。
それだけ多くの者達が協力してくれてるという事だった。
聞き込み当初は「ちょっと分からないなあ」と言っていた者達も、後日彼ら自身が調べた事を伝えてくれたりもする。
地元に密着してるだけに情報が集まるのは早いのかもしれない。
どこに何時に姿を目撃しただの、あそこの家に住んでるだの、通ってる学校はどこだのといった話しが集まってくる。
また、かつてロクデナシ達に嫌な思いをさせられた者達が、「それだったら」と昔の事を教えてくれることもある。
直接今回の事に関係はないが、騒動を起こしたロクデナシ達の先輩などの存在がそれで発覚したりもした。
それらがまた、彼らの今も続いてる関係などを浮き彫りにする。
「こりゃ、色々と準備が必要ですな」
悪魔参謀長はさてどうしたものかと考えながら呟いた。
まず、悪魔参謀長は集めた情報を頼りに証拠を集めていった。
やった事を確実におさえるために、カメラやレコーダーを用意もした。
それらを<秘密帝国ザルダート>の者達だけでなく、協力者達に配りもした。
とにかく、何をやったかの記録がなくてはどうにもならない。
今現在、進行形で被害を受けてる者達とも連絡をとり、彼らにもお願いした。
学生、社会人を問わず、彼の大半は仕返しをおそれてか及び腰だったが。
それでも、<秘密帝国ザルダート>が行った不良撃滅の話と周囲の者達の言葉に動かされて、「それなら」と協力を約束してくれた。
今までの記録があるならば、それの写しをとらせてもらえるよう願った。
学校で、職場で問題を起こしてる連中の行動はすぐに集まってくる。
もともとロクでもない事をやってきた連中である。
今までの証拠はなくとも、問題行動の記録はすぐに集まってきた。
それらが必要な分だけたまったところで、悪魔参謀長は行動に出た。
その日、工場で働いていたロクデナシの先輩は、仕事に入る前に呼び出しを受けた。
何事だと思って出向いた応接室に入って、顔に驚愕が浮かぶ。
(なんで工場長が?)
彼の働く場所である工場のトップ。
そして、現場の直接の上司。
更には背広を着た偉そうな人が座っている。
その彼らに促されて席に座ったロクデナシ先輩の前に、封筒がおかれた。
「こういうものが届いてるのだが」
言って中身を見せてもらう。
ロクデナシ先輩はそれを見て顔を青ざめさせていく。
そのほとんどが過去にやってきた事である。
カツアゲ、暴力、薬に強姦。
やらかした数々が記載され、中には証拠としての写真までとられたものもあった。
しかも。
「ここにあるのは、君の今までやってきたことのようだが。
中にはこんなのもあってね」
差し出してきた別の封筒。
そこには、ここ最近やってきた事がおさめられていた。
ロクデナシ後輩達を使ってやってきた事などが。
「直接関与を…………君が何かしてなくてもだ。
指示を出したというなら教唆の問題がある。
そこは分かってるね?」
キョウサというのがなんなのか分からなかったが、まずい事になってるのは理解できた。
「ある程度だったら過去のことは大目に見たい。
だが、こういう事をやっていたとなると話しは別だ。
それに、昔だけでなく今も関わってるとなると、会社としてもそれなりの対応をとらねばならない」
この工場は、それなりに大きな会社の下請けで、社会的に色々と求められるものもある。
そうでなくてもロクデナシ先輩は普段の素行に問題があった。
本人は気にしてなかったが、社内の同僚達から煙たがられていた。
ただ、目立った問題がなければ解雇もできないし、組合もうるさい。
問題のある人間でもかばう組合の姿勢もどうかという所だったが、こればかりはどうしようもなかったのだ。
今までは。
「悪いが君については相応の処分を下す事にする。
組合長もかまいませんな」
これまた臨席していた組合長も頷かざるえない。
送りつけられた証拠の数々は、覆せないほど大きな問題を示している。
「致し方ありません」
そう言うしかなかった。
ロクデナシ先輩は、自分がとんでもない事になったのを悟るしかなかった。
余談であるが。
しばらくしてこの会社に勤める他の者の素行調査が届くようになる。
おかげで会社は人員整理で大忙しとなっていった。
そこには、組合長の姿もあった。
同じような事は学校でも起こっていた。
元々問題を起こしていた者達である。
そこに証拠が突きつけられたとあって、学校も動かざるえなかった。
なにせ、同様の資料が教育委員会やらマスコミやら様々な所に届いてるのだから。
偏差値30前後と言われる学校であり、問題児の巣窟ではあったが、さすがにこれではかばい立て出来なかった。
そうそうに学校を放逐されていき、彼らの学歴はそこで終わった。
まだ中学校に通っていた者達は、さすがに退学とはならなかったが、卒業後の進路は確実につぶれた。
これらの悪党とつるんでいた教師達も、同じように放逐となった。
職場・学校からの追放。
それはロクデナシ達の足下を崩す事となる。
また、やってきた事も加わり彼らの評判も完全におちた。
隣近所との付き合いもなくなり、店に行っても物は売ってもらえない。
全国展開などをしてるチェーン店などはそうでもないが、地元で昔からやってきた店はもう駄目だった。
おまけにチェーン店でも近隣の者達が集まってくる。
そういった者達が彼らや家族を白い目で見つめてくる。
特に、ロクデナシ達からそれなりに嫌な思いをさせられて来た者達は、ここぞとばかりに今までの出来事を吹聴した。
そのおかげもあって、ロクデナシ達と接点のない者達にも情報は拡散する。
井戸端会議とご近所ネットワークはこれらの拡散・共有に威力を発揮し、彼らがどこで何をしてるかを常に監視するようになった。
面白おかしい旬のネタとして扱われてる側面もあったが、その本質は問題を起こしてる連中への危機意識である。
今までやってきてたし、今もやっている。
これからもやり続けるだろうという予測に基づく警戒が、近隣の様々な地域にひろまっていった。
「上手くいったな」
総統閣下はここまでの経緯に満足していた。
全ては悪魔参謀長がたてた作戦である。
ご近所の皆さんの協力をもとに、職場や学校などへ働きかけ、情報の拡散につとめてもらった。
おかげでロクデナシ達は立つ瀬を失い、路頭に迷う事になった。
今しばらくは手元にある金でどうにかしのげるだろうが、それもいつまで続くか。
宵越しの銭は持たない、という格好いい物ではないが、あればすぐに全部使うような連中である。
おそらく、それほど長くは今の生活を続けられまい、と思われた。
仮に金を借りるにせよ、わざわざ貸すような酔狂は滅多にいない。
仕事を持たない故に、街金と呼ばれる所も躊躇するだろう。
違法な高金利で貸し出す違法な業者であれば違うだろうが。
そうなったら最後だろう。
取り立てがはじまれば、ロクデナシ達も相応の処分をされるだろう。
それはそれで好都合だった。
時間がかかるのが面倒だったが。
「まあ、これで問題を起こせばそれはそれで。
次がやりやすくなります」
悪魔参謀長はそう言ってほほえむ。
「ま、今後も情報の拡散につとめていこうと思います。
今の段階でも、この町に居座るのは難しくなってますが」
「ああ、頼む」
止める理由はない。
「敵対勢力が減るのは好都合だからな」
不良にせよロクデナシにせよ、悪の秘密結社<秘密帝国ザルダート>からすれば対立する勢力である。
削って排除する事に何の問題もない。
そうでなくても人手が足りない。
戦わずして勝てるなら、その労力を惜しむ必要はなかった。
社会的基盤をなくしたところで、ロクデナシ達はかなり瓦解していった。
まだ表だった成果は見えてこないが、今後の活動に大きな制限がつく。
生きていくためには金が必要であり、それが無くなれば生命の維持が困難になる。
働き口が見つかればいいが、様々な経路をたどって拡散された問題行動は市内全域と言ってよいほど拡がっている。
好んでそんな連中を用いようとする者はいないだろう。
少なくとも表向きの仕事をしてる者達ならば。
もちろん、市内だけの話である。
別の町にいけばそこまで悪評は拡がってないだろうし、勤め先は見つかるかもしれない。
ただ、市内における一番大きな職場であった工場と、その系列会社を通じたところはかなり厳しいだろう。
その工場が存在する付近の会社や、会社を通じた付き合いでの情報伝達などもある。
それがどこまで拡がるのか、どれほどの効果を持つのかは分からない。
ただ、市内だけに物事が留まるわけではないのは確かだった。
何かしら技術があればまだ見込みはあったかもしれない。
そんな物のないロクデナシ達の行く末は、何一つ明るくはないだろう。
「あとは、何かしでかしたら警察に突き出してやりましょう」
悪魔参謀長はそう言って笑う。
「何かあったら事ですが」
その後。
金に困った連中がそれこそロクでもない事をやらかしはじめていく。
予想された行動であったが、実際に行われると驚くしかない。
「まさか、本当にやるとはなあ」
総統閣下は呆れるしかなかった。
だからと言って哀れんで何もしないという事はない。
今回の件で様々な場所に監視のためのカメラが設置されている。
そのほとんどは個人が軒先に設置したものだったりする。
事件があればそれらが警察に証拠としてさしだされ、犯人逮捕に効果をしめした。
とはいえ、初犯だったり未成年だった場合、警察はなぜか甘い。
届け出がなかったから今までの犯罪がばれてなかっただけの者や、未成年でも何度も悪さをしでかした者であっても。
その話を聞いてほぞをかむ者も数多い。
ただ、警察関連のそういった情報は、どういったわけか外部に漏れていった。
「……ってわけなんですよ」
警察関係の者の言葉に、総統閣下は頭をかかえる。
「いや、あいつは今まで恐喝や強盗、万引きに暴行と色々やってたでしょう」
「そうなんですけどね。なんでかしらないけどウチの内部で見送りになってしまいまして」
そう言う関係者の言葉に、総統閣下は唖然とする。
「こりゃ、駄目だな」
見過ごすことが出来ない重大犯罪についてはしっかり起訴されたようだが。
見逃された者の方が圧倒的に多く、問題の解決にはほど遠かった。
「地獄将軍、申し訳ないが、がんばってくれ」
やむなく総統閣下はとりこぼされた問題の回収に動く事にした。
「あそこだな」
町の外れにある廃墟となった工場跡。
それを目にして将軍は情報提供者達の方を向いた。
「確かなのか?」
「ああ、昼間にあそこに入ってくのを何度か見た」
「その後、出てくる様子もなかったし」
「なるほど。分かった、あとはこっちに任せてくれ」
その言葉を聞いて、情報提供者達は頷く。
「お願いします」
「あいつらに一泡吹かせてやってください」
彼らは中にいるロクデナシに酷い目にあわされた者達だという。
その復讐なのか、今回様々な場面で協力をしてくれていた。
行き場を無くしたロクデナシが住み着いてる場所を発見できたのも、彼らの努力によるものだった。
その気持ちにこたえるべく、地獄将軍は工場跡へと向かっていく。
「では行くぞ」
ゴリラ男に戦闘員を率いながら、彼らは工場跡へと向かっていった。
中にいる連中を取り押さえ、相応の処分をくだすために。




