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記憶と現実
「先輩…、303号室のテシマ カイトさんなんですが、私怖いです。
片足のマネキンを車椅子に乗せてハルカって名前までつけて。」
「そうそう、それに、あの人言ってる事が脈絡がなくて、グレンとかいう外人の友達がいるとか、セシルには申し訳ないことをしたとか訳分からないこといいだすんですよね。」
「あと、姉と妹が心配とかもいってました。あの人って身寄りはないはずですよね?」
「シッ!」
彼女達のリーダーでもある主任看護士は皆をたしなめた。
「テシマ カイトさんは、ビルのメンテナンスの為に入った地下室で有毒ガスに巻き込まれてしまったの。発見された時にはあのマネキンを抱えていたそうよ。奇跡的に命は助かったけど、ガスの後遺症で記憶障害をおこしているわ。テシマさんの過去になにがあったのかは分からないけど、みんな、理解はしてあげてね。」